血と聖水\「神々の指さす未来」







「おい、ネイ。俺がなんでルシエルドって名乗ってるのか、お前は知ってるだろ?」
「あー。 (>'A`)>ア゙-ッッ!!・・・・・創造神ルシエードの名前をもじったんだろ?」
「その通りだ・・・・別名、絶対神ルシエード。お前なら、会ったことくらいあるんじゃないのか。血の神のお前なら」
「会ったことは何度かある・・・虹色に耀く六枚の羽耳をもった、黒い髪の・・・緑と紫のオッドアイをした美しい男だったな。男に興味はないが・・・あのルシエードと、その子というアクラシエルという神には、ぞくりときた。正直、どんな女より美しい。アクラシエルは特に美しかったな。ルシエード譲りの長い黒髪に、ルシエードと同じ緑と紫のオッドアイをしていた。紫の瞳は青みがかって・・・・。背中には12枚の黒い翼を持っていた。創造神ルシエードが、虚無の精霊神ゼロエリダに産ませようとした絶対者。ゼロエリダは三柱の神の一人、ルシエードと交わったことにより神格を剥奪されて追放され、人間となって死んだ。その腹にアクラシエルを宿したまま」
三柱の神とは、創造神ルシエード、創造の女神アルテナ、創造の母ウシャス。
人々は、この三人の神を主に信仰し、そして太陽神であるライフエルも信仰している。
神は複数いる。他にも神は存在する。
「そう、そして創造神ルシエードは狂った。世界を創造する神が、全てをかけて作り上げた子、アクラシエル。アクラシエルは中性の神だ。あろうことか、ルシエードは、アクラシエルを抱いた。アクラシエルは絶対者に選ばれた」
絶対者。この世界の理を支配する者。種族のバランスを調整する神。

「知ってるか。人間が多すぎて、アクラシエルは他の種族を増やしている。ヴァンパイアの数も」
「・・・・・・・・血の神は俺だ。ヴァンパイアの数を勝手に増やされてもな・・・」
「そうなるように、働きかけているだけだ。実際に手を出していないから厄介なんだ。ハイプリーストの俺が言うものなんだが・・・・神は間違っている」
「神が、間違っている、か」
「ああ・・・・お前のように自然体の神であるのが普通なのに・・・創造神は世界を創造したそれだけで十分なんだ。この世界には、それ以上必要はない。神は、見守っているのが普通。なのに、ルシエードはアクラシエルを絶対者にして使い、この世界をいつか変革する気だ」
「どんな風に」
「選ばれた者だけが生きる世界に」

ロックオンは、煙草をくわえた。リエットがジッポを取り出して、火をつけてやる。
ウエマは、ソファーに座って二人の話を聞いている。

「アクラシエルの使徒。それがジブリエル・・・・ティエリエル、ティエリアであることは、お前も気づいているだろう?」
「・・・・・・・・・・」
「中性の神子は、アクラシエル、中性の神の使徒だ。絶対者の使徒・・・・種族のバランスに直接手を下す者」
「ティエリアは、そんなんじゃねーよ」
「転生しても、同じことだ・・・・お前、教皇のアルテイジアに予言されたそうだな。ティエリアを血族にした報いが、いずれくると。教皇の予言は巫女よりも上」
「あんな教皇のたわごと信じるかよ」

「でもね、実際そうなるんだよね」
「アレルヤ。帰ってきたんなら、ちゃんと挨拶しろ」
ネイの武器でもある神父アレルヤは、いつの間にかソファーに座っていた。
「ネイ。もう様づけは止めるよ。僕も、僕の立場というのがあるからね。君の武器として命を受けたけど、僕もまたアクラシエルの使徒であるということを忘れないで欲しいな。種族を調整する者・・・それが、僕たちアクラシエルの使徒の定め。いずれ、君の愛しいティエリアも目覚めるよ。アクラシエルの使徒として。君が、ヴァンパイアを食べる使徒であるように。僕は気づけば、北の国の人間の数を減らしていた。ダムを決壊させ、豪雪を降らせた。何万人になったかな、死者は。逆らえないんだよ。使徒は、神に」
神父アレルヤは、神に向かって祈る。
「ああ、この祈りが神に通じるなら。どうか、神よ、僕にこれ以上罪をおかさせないでくだい。なんて祈っても無駄だね。意識を支配されて、気づけば人間をたくさん死なせるように天変地異を起こしたり・・・無自覚なんだよ。使徒は。僕のように、覚醒している者のほうが少ない。だから、聖都は使徒となる中性を神子として束縛する。でも、別に中性でなくても使徒は生まれる。僕のように」
「アレルヤ・・・・てめぇ、俺に殺されたいのか?」
ロックオンが、怒りの波動をぶつける。
「殺しても、殺しても・・・使徒はいずれ転生し、蘇りまた使徒となる。君がティエリアを転生させなくても、ティエリアはいずれ使徒としてこの世界に生まれただろう」
「ティエリアに、そんな人殺しはさせねーよ!あいつは人間が大好きだ。だから、ヴァンパイアハンターをして、人間を守っている!」

その頃、ティエリアは、健康ランドを後にしていた。
「あー、いいお湯だった」
同じ時間に、その健康ランドにいた者は未知のウィルスに侵され、そしてそれは人々の間に伝染し、死者は何千人にものぼった。
ティエリアは、そのことで心を痛めたが、まさかその未知のウィルスを放ったのが、自分だと気づいていない。

アクラシエル、絶対者の使徒として、ティエリアは無自覚のまま、人々を殺めはじめていた。使徒としての覚醒の序曲が聞こえる。

ブラッド帝国で、教皇アルテイジアが予言した、ネイがティエリアを血族に迎えたことに報いがくる日が、本当にくるのかもしれない。
神々の指差す未来は、どこに向かっているのだろうか。
神は何を考え、人間の数を減らすのか。選ばれた者だけが生きる世界なんて、成り立つはずはないのに。

「神よ・・・何を考えている?
ロックオンは、ホームでかつて誕生した頃、何度か出会ったことのある創造神ルシエードとそして・・・・運命の
絶対者アクラシエルを思った。





NEXT