世界が終わってもY「甘えん坊?」







「にゃー。ニール好きー」
いつの間に。
さっき寝室に連れていったはずのティエリアが、またニールの仕事部屋にやってきて、ドアの向こう側から甘えた声を出している。
「ティエリア?大丈夫か?」
「大丈夫にゃー」
「ちゃんと寝てないとダメだろ」
「だっこ!」
毛布を頭から被って、ジャボテンダーを抱きしめて、熱に朦朧としているティエリアは自分が何を口走っているのかよく分かっていないようだった。
「だっこしてー」
「はいはい」
ニールはティエリアを抱き上げて、また寝室にまで連れて行って、ベッドに寝かすと毛布と布団を被せる。
「いい子だから、大人しくしといてくれな?病人なんだから」
「うん。ニールがそういうなら、大人しくするー」
ニールの手をとって、ティエリアはすりすりと頬を摺り寄せる。
「かー。かわいすぎ」
思わず食べたい衝動にかられるが、相手は病人だ。
大人しく、養生させなくては。
「ほら、ここにいるから。大人しく眠りなさい」
「分かったにゃー」
ティエリアは目を瞑って、大人しくなった。
ニールは仕事部屋に戻った。

その30分後には、ニールの部屋に毛布を頭から被ったティエリアが訪れていた。
「ニール。だっこ。だっこしてー。肩車してー」
「だっこはできるけど、肩車は熱が下がってからな」
「やーなの。今がいいのー」
ティエリアは、ジャボテンダーでニールを殴った。力が篭っていないので痛くない。
「ふにゃああああ」
まるで、子猫のようだ。
人肌を恋しがる子猫。
すると、ニールは親猫か?
ニールは、ティエリアを抱き上げると、無論お姫様だっこだが、また寝室にきて、ベッドに寝かせて言い聞かせる。そんなことを20回も
繰り返しただろうか。
ティエリアは毛布を被って、ジャボテンダーを抱きしめて必ずといっていいほどニールの部屋にやってくる。
「またか」
「ニールいないのいやにゃー。寂しいの。だっこー」
インフルエンザは、無論うつる。ニールは季節インフルエンザにかかっていないし、ワクチン接種も受けていないので、感染する危険性は高いだろう。
だが、流石のニールも疲れた。20回以上はティエリアを寝室のベッドに寝かせ、そして自分は仕事部屋に戻ってくる。
その度に、ティエリアはベッドから抜け出す。
解熱剤はまだ効いていないようで、ティエリアの体温は以前と高いままだ。
もう仕方ないかと、ニールは仕事をしながら、膝にティエリアの頭を乗せて、キスしてといわれたらキスをして、だっこしてといわれたらだっこをして・・・とにかく、要望通りに甘やかせまくる。

「ニール、好き」
「俺も大好きだよ」
「猫猫パーンチ!」
ティエリアは、仕事を続けるニールに力のないパンチを決める。
へろへろしている。そりゃ、高熱なんだから力が入るはずもない。
「そろそろ昼食の時間だな。食欲はあるか?」
「にゃいのー」
「そっか。仕方ないなぁ。でも食べないと薬の効果あんまりでないし。何か食べたいものでもあるか?」
「メロン」
「メロンか。水分とるのはいいことだしな。あーでも冷蔵庫になかったよな。買ってくるから、待ってられるか?」
「うん、待ってる」
その言葉に、ニールはまたティエリアを抱き上げて寝室までいくと、ベッドに横たえて毛布と布団を被せる。
「喉かわいた」
「ほら、水」
ペットボトルの水を渡すと、ティエリアは受け止めそこなって中身を零してしまった。
「仕方ないなぁ」
ニールはペットボトルの水を口に含んでは、口移しでティエリアに水を与える。
「もう乾いてない?」
「うん」
「じゃあ、ちょっと買い物いってくるからな。大人しく待ってろよ」
「はーい」
 



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