永遠の絆「仲間の言葉」







新しいティエリアはすぐにやってきた。
記憶も与えられ、すぐにティエリア・アーデとして振舞った。
その記憶の中に、ロックオンの恋人であるというものが混じっていた。
「どうしてだ、ミス・スメラギ!!なぜ、ティエリアに俺の恋人であるという記憶を与えた!!」
詰め寄るロックオンに、ミス・スメラギは断言した。
「その記憶を与えなければ、動かなかったのよ。だから、仕方なく与えた。あなたのためじゃないわ。私だって、これ以上ティエリアが傷ついて壊れていくのは見ていたくない。だから、本当ならあなたが恋人だったという記憶も与えるつもりじゃなかったの。でも、それを与えなければティエリアがティエリアとして成り立たなかった。どうしてかしらね・・・・記憶回路は、完全に新しいものを与えているのに。魂でもあるのかしら」
「魂・・・」

それは、人間ということ。

ロックオンは、もう決めたのだ。ティエリアを壊さないために、ティエリアを愛さないと。
「別れよう」
「どうしてですか!?」
唐突に、別れの話を切り出されて、ティエリアは戸惑った。
「僕に何か問題でも・・・・」
「ああ、問題おおありだね。お前みたいな人口アンドロイドは飽きたんだよ。本物の人間がいい」
「・・・・・・・・・・・ロックオ・・・・」
涙を流して、床に膝をつくティエリアの痛い、傷ついた顔を見ていられなかった。
「僕は人工アンドロイド・・・どう足掻いても、人間にはなれません・・・・ごめんなさい、ロックオン・・・・あなたを愛してごめんなさい。全部僕が悪いんです」
「じゃあ、な・・・・」
「ロックオン?どうして、涙を流しているのですか?どうして、そんな辛そうな顔をするのですか?ねぇ、ロックオン。答えて。拒絶しないで」
「俺はお前を、愛さないって決めたんだよ!もう俺に関わるな!!」

ティエリアは、微笑んだ。

「僕は・・・・言ったでしょう。何度でも、あなたに恋をすると。何度あなたのことを忘れても、あなたに恋をすると。また壊れてしまうかもしれない・・・でも、あなたがいない世界で僕は生きていたくないのです。壊れることよりも、あなたが僕の傍からいなくなってしまうことが怖い。お願い、傍にいてください」
すがりつかれて、ロックオンの決意が揺らぐ。
「お前なんて愛してない、愛してない、愛してない!!」
ロックオンは、部屋を飛び出していった。
「ロックオン・・・・」
残されたティエリアは、泣き続けた。

「どうしたの、ロックオン。涙流して」
「アレルヤ」
「ティエリアと、何かあったの?」
「ティエリアに・・・・愛していないといって、別れを」
その言葉に、アレルヤは激昂してロックオンの頬をぶった。
「ロックオン!そんな矛盾することしてどうするの!あなたが傷ついて、余計ティエリアを傷つけるだけじゃないか!あなたはあんなにもティエリアを愛していただろう!責任を、一度愛した責任を最後までとるべきだ!ティエリアを愛したのなら、最後まで貫いて・・・よお」
アレルヤも涙を零す。
「あんなに・・・・仲良かったじゃないか。ティエリアのこと、ティエリアが人間じゃないからって、それでも構わないってあなたは強くいって、周囲の反対を押し切って。都合が悪くなったら、ティエリアを捨てるの?ティエリアは玩具じゃないよ!壊れるほどに、でも壊れてもいい覚悟をもってあなたを愛していた!!」
「壊れる、覚悟」
「そうだよ!そうじゃなきゃ、愛という感情で壊れるって知っていながら、ロックオンを愛したりするもんか!」
「ティエ・・・・リア・・・・」

ロックオンはデッキにでると、遠い青空を見上げた。
「ロックオン。ティエリアは、お前がいなくなれば、それで大丈夫だとでも?幸せになれると思っているのか?」
デッキで、寝転がっていた刹那が、外でのアレルヤとロックオンのやり取りを聞いて、ロックオンに寝そべったまま緋色の瞳を向ける。
「刹那」
「ティエリアは、お前がいてとても幸せそうだった。殺す者が殺される覚悟をもっているように、ティエリアは愛することで、壊れる覚悟を持っている。愛という感情で壊れても、構わないと。だからお前を愛し続けている。そうじゃないのか?」
刹那は、ゆっくり流れていく雲に視線を向ける。

「はは・・・・お子様にまで諭されているようじゃ、俺はマイスター最年長失格だな」
ロックオンは、刹那の隣に座り込んだ。
「泣けよ。哀しいんだろう?好きなだけ泣けよ」
ロックオンは、涙こそ零さなかったものの、苦しみ続けた。
そして、その結果導き出した答えは。

「覚悟、いるよな俺にも。最初にティエリアを愛したのは俺のほうだ。最後まで愛を貫く。愛したからこそ、覚悟を」
紺碧の空を見上げ、ロックオンは立ち上がった。


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