血と聖水\−U「神々の世界」







「神なんて、あの世界には必要ねぇんだよ。ちょっかいだしてきたら、ただじゃおかねぇからな」
「・・・・・・・・」
ネイは、すぐに現実世界に戻ってしまった。

「ネイ・・・・・・だから、若いといわれる。この世界は、いずれお前も視た道を辿るだろう。アルテナもウシャスも、人間を淘汰することに賛成している。ネイ。いつか、敵対する時がくるかもしれないが、何百年後かな?その時ネイ、お前はネイとしてまだ世界に在るか?どちらにせよ・・・・数万年を生きる我ら創造神にとっては、滅びも再生への道への一つ。だが、あの未来はあまりにも・・・・・・・・新人類は死に絶え、人間は2割しか生き残らぬ。あの未来はあまりにも酷だ。再生もままならぬ」
創造神ルシエードは、極彩色の庭に出ると、自分で作りだした月を仰いだ。
「ネイ。人に作られし神よ。新人類の神。人はまた、同じ過ちを起こす。何度でも、何度でも」

神への空間を閉じたロックオンは、ソファーに見知った影が座って二人揃ってポリポリクッキーを食べているのを見てこけた。
「これはうまいの」
「まあまあか」
「ライフエルはまぁいつものことだとして・・・・アクラ!お前死んだんじゃなかったのか!?」
その言葉に、アクラシエルははいていたスリッパをロックオンに向けて投げた。
「あいて!」
「失礼だな。神が、そうそう死ぬわけがないだろう。神としての存在を維持できなくなったまでだ。母は無の精霊神ゼロエリダ。私は元々精霊だ。無の精霊アクラシエル」
「お前、精霊だったのか!?」
驚くロックオンに、元神はカップをつきつける。
「ネイ、お茶」
「ネイ、我も茶のおかわりじゃ。はよもて」
「お前ら〜〜!!」
肩を振るわせながらも、素直にお茶を入れて二人にだす。
「ほらよ!」
「荒れておるのお、ネイ」
「そうだな」
「誰のせいだと思ってやがる!!」
「まぁまぁ、ロックオン」
「落ち着けだにゃ、この下半身男めだにゃ」
「誰が下半身男だ!」
「お前にゃ!」
びしっとフェンリルが猫手を突きつける。

「う・・・・」
言い返せないロックオン。

「あの、僕アクラと契約しました。無の精霊って一人だけなんですね」
「つか、もともと無の精霊なんていねぇよ。無の神が精霊になったから、無の精霊になった・・・無理やりだな」
アクラシエルは楽しそうに、美しい美貌でティエリアとこそこそ密談をはじめる。
「アクラ、てめぇティエリアとなにたくらんでやがる」
「別に、何も」
「ルシエードと会ったが・・・」
ピクリと、元神の動きが止まる。
「父様と?私のことで、何かいっていたか?」
「いいや、何も」
「そうか・・・・決めた、私もヴァンパイアハンターになろう!」
「はぁ!?」
ロックオンが間抜けな声をだす。
「神の世界にも、精霊界にも帰れない。することもない。ヴァンパイアハンターになろう」
「いいですね。僕の協会に是非登録してください!」
アクラシエルは本気だった。
「無の精霊にゃ〜。はじめての精霊にゃ。よろしくにゃ。僕、フェンリルにゃ」
「よろしく。ということでネイ、しばらくの間世話になる。ライフエルと一緒に」
「なんでそうなるんだーーー!!」
ロックオンは、二人のために用意したクッキーをバリバリと一人で食べたあと、三人の輪に入れなくていじけて、フェンリルに頭をかじられて寝室に閉じこもってしまった。
 



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