星の砂「軋んでいくオルゴールの音」







星の砂時計の砂は零れ落ちる。オルゴールの螺旋を回せば、哀しげなメロディーを奏でながら。

ミッションはある武装組織を壊滅させること。
敵のアジトは数箇所あり、ミッション開始と同時にロックオン、刹那はアフリカ基地を、アレルヤは中東基地を、そしてティエリアはアジア基地を破壊することになっていた。
ミッションは完全にクリアした。
敵の武装組織は壊滅し、それで全て終わりかと思われた。
だが、いつまでたってもティエリアが帰ってこないのだ。
通信を入れても応答はなく、敵に鹵獲されたのかと心配された。ロックオンはいてもたってもいられず、真っ先にアジア基地に飛んだ。
そこでみたものは、完膚なきまでに叩かれた無残な基地の姿。
ミッションは確かに完全にクリアしていた。だが、帰還してこない。皆心配して、刹那もアレルヤも一緒になってアジア基地周辺をくまなく探したが、結局ティエリアを見つけることはできなかったし、ティエリアはいつまでたっても帰還してこない。
そして、そこではじめてドクター・モレノがティエリアが脳の劣化がはじまり、記憶障害を起こしていることを皆に話した。
「なんで、そんな大切なこと黙ってた!!」
「ティエリアが、そう望んだからだ」
白衣を掴み、今にも殴りかかりそうなロックオンに、ドクター・モレノはそう答えた。
「確かに記憶障害だって分かると、マイスターから外されるかもしれない。だから?ティエリアは、もしかして逃走したの・・・かな」
アレルヤの言葉に、ロックオンが噛み付く。
「んなわけねーだろ!ティエリアは、誰よりも自分がマイスターであることを大切にしていたし、マイスターであることを生きる誇りにしていた。あいつが、逃げるなんて、黙って逃げるなんてそんなこと絶対ねぇ!!」
「でも、現に今は行方不明」
ミス・スメラギの言葉に、一同沈黙する。

「次のミッションは延期よ。ティエリア捜索を第一とします」
ミス・スメラギも信じていた。
ティエリアがCBから逃げ出すだなんて、そんなことあるわけがない。
「俺をおいて・・・そんなこと、あるかよ」
ロックオンは、ティエリアの状態に気づかなかった自分を恥じ、そしてティエリアが告げてくれなかったことに苛立ちを隠せないでいた。知られたくないのは分かる。でも、ロックオンはティエリアの全てを手に入れたと思っていた。心も体も。ティエリアなら、記憶障害であれ一緒に歩いていく自信はあったし、たとえロックオンのことを忘れたとしてもティエリアを愛し続けると自負していた。
「帰ってこいよ・・・・ティエリア」
時間は無常に過ぎていく。ティエリアが行方不明になってもう四ヶ月目に入ろうとしていた。
やがて、ティエリアのヴァーチェが南アジアのある場所で見つかった。
そこは、隠されていた、前回殲滅したはずの敵の基地。敵の残存勢力がそこに集結していることに気づいたミス・スメラギがミッションを下したのだ。
敵の残存勢力を排除せよ。
ヴァーチェを欠いたまま、ミッションは遂行される。そして、そこで擬似太陽炉を持った機体と対峙して、マイスター三人は驚いた。連邦政府が持っているはずの機体が一機、裏ルートでこの武装組織に回されたのだ。そして、その擬似太陽炉の機体を真似た、偽擬似太陽炉をもった機体がいくつかそこで作り上げられていた。
「敵、駆逐する」
それを刹那のエクシアが駆逐していく。
しょせんは、偽者。本物の、太陽炉には適わない。だが、数が多く、以外にもロックオン、アレルヤ、刹那は苦戦を強いられる。
二日にわたる戦闘の果てに全ての敵機を叩き潰し・・・・そして、基地の奥で捜し求めていたヴァーチェが発見された。鹵獲、されていたのだ、ヴァーチェとティエリアは。
ティエリアは、逃げていく敵の数機を追ってここまできたのだ。そして、隠された基地を見つけて、トレミーに通信を入れようとして・・・・茫然自失となった。
トレミーへの通信回線のパスワードが、思いだせなかったのだ。
「こんな、こと、あってはならない!万死に値する!」
次々と襲い掛かってくる敵機を、GNフィールドを展開させてやり過ごしながら、長期戦にもつれこんだ。それでも、圧倒的な破壊力をもつバーチェの前では全てが瓦礫と化す。
空を旋回する敵機に、ティエリアは言葉を失った。
「擬似・・・太陽炉!」
連邦政府だけしか持っていないはずのものが、何故ここに。
新たに基地の奥からいくつもの偽擬似太陽炉を、独自に開発させたその武装組織の敵機はティエリアのヴァーチェを囲み、そして鹵獲しようとする。
「なめるな!!」
ティエリアはGNバズーカの滅びの光で、偽擬似太陽炉ごと、全てを飲み込んでいく。
そして、ヴァーチェの残エネルギーが少なくなり、一旦トレミーに帰還することをティエリアは選んだ。
敵は追ってこなかった。油断した。
長いムチのようなもので右足をとらえられ、切断しようとしている間に、高圧電流を流された。
「うわあああああ」
機体にもダメージがいくが、高圧電流はなにより、パイロットに致命的なダメージを与える。ここには、敵だけしかいない。通信回線は開かない。助けも呼べない。
いつもなら、援護してくれるエクシアもキュリオスも、そしてロックオンのデュナメスもいない。
鹵獲された。完全に包囲され、残エネルギーは0。もうヴァーチェは動かない。
コックピットのハッチを開けて、自分から飛び降りた。
「逃げるぞ、捕まえろ」
ティエリアは走った。走って走って・・・足をもつれて転びながら、傷だらけになりながらも走った。
密林のジャングルに逃げ込んで、なんとかなったかと思ったが、敵はわらわらおってくる。ティエリアは、手にしていた振動型サバイバルナイフと銃で何人も殺した。
殺しても殺しても、終わらない。
後ろから右肩を銃で撃ち抜かれて、そこでティエリアの意識は途絶えた。

オルゴールのメロディーが、軋んでいく。歯車がカチリカチリと音をたてて廻る。星の砂は零れ落ちる。さらさらと綺麗に静かに、まるで鎮火寸前の炎のように小さな灯火を、抱きながら。



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