星の砂「オルゴールの音」







「いやああああああああああ!!」
「おい、ティエリア、ティエリア!!」
「うわあああああああああ!!!」
ティエリアは涙を流して、ロックという、ティエリアの中のロックオンの動かなくなった死体を抱きしめて、叫びまくった。
「あああああああああああ!!!」
「ティエリア!!!」
「いやあああああああ、ロックオン、死なないで、死なないで!」
「そいつはロックオンじゃねぇ!ロックオンは俺だ」
「いやあああああああああああ!!!!」
眼帯のされた右目。憔悴しきった瞳。濁った瞳は、石榴色の美しい色を失い、硝子玉のようだった。
「私も、一緒に、いく。ロックオン。一緒に」
その時、ティエリアの脳の、自害防止のストッパーが強制的に解除された。
ティエリアは、ロックオンの目の前で、違う男に愛を囁いて、舌を噛んだ。

「誰か、誰かきてくれえええ!!!」
ロックオンは、舌を噛んで血を大量に吐き出すティエリアを抱きかかえて叫ぶ。
すぐにドクター・モレノが呼ばれ、応急処置が利いて死ぬことはなかったが、見るからにティエリアは変貌してしまっていた。
はじめは栄養のある食事を与えられていたが、ロックという男はサディストだった。食事をぬかれることもしばしばで、ティエリアの体は更に細くなった。
右目を麻酔もなしで繰り抜かれて、その右目をロックはアルコールにひたして、酒にして飲んでいた。
ティエリアにも飲ませた。
鼓膜を破り、そして足のアキレス腱をきった。次はどういたぶろう・・・その時に、兵士によって助けられたが、ティエリアのマスターはロックオンから更に上書きされ、ロックになっていた。
どんな残忍な行為も、手を開いて受け入れるティエリアを、ロックが愛さないはずがない。
何処まで、ティエリアは壊れていくのだろうか。
何処まで。
ティエリアは一命を取り留め保護されたが、皆深刻な表情になっていた。生き残った兵士から、ティエリアがどんな扱いを受けていたのか全て聞いてしまったのだ。
「うわあああああああああ、ティエリアああああああああ」
麻酔が効いて、眠るボロボロのティエリアを抱きしめながら、叫ぶ。
髪は伸びて、綺麗に結われていた。着ていた衣服も高価そうな女性のもの。でも、その服を脱がせると。背中の皮膚ははがされていた。足の爪は全てはがされていた。体のいたるところに、ムチでうたれた跡がある。殴られたと思わしき内出血もおおく見られた。
愛されながら、虐待を受けていた。それが、ティエリアのロックオンの倒錯した愛しかただった。ティエリアはそれを受け入れていた。すでに、マスターは上書きされている。
精密検査を受けると、肋骨にひびが発見され、足の骨は折れてそして自然治癒したあとが発見される。
ティエリアは、すぐに再生治療を受け、失った右目も再生し、アキレス腱も戻り、皮膚も爪も元どおりになり、美しい元のティエリアに戻る。
見た目だけなら、少し髪が伸びてしまった、いつものティエリア。
でも、ロックオンが声をかけると、ティエリアは耳を押さえて奇声を発する。
「うわああああああああああああ!!!」
「ティエリア、ティエリア!!」
「あああああああああ!!!!」
「やめなよロックオン。ティエリアが怖がってる」
アレルヤがとめに入る。
「ティエリア・・・・」
「っく、ひっく。ロックオンを、私のロックオンを返して!!!」
ドンドンと、ロックオンの胸を叩くティエリアを、ロックオンはただ抱きしめるしかなかった。
「俺だよ。お前のロックオンは俺だよ」
何度も言い聞かせる。ティエリアは首を横に振る。

はじめは、ドクター・モレノもティエリアを隔離しようと思っていた。でも、ロックオンが会いたがるのだ。どんなに拒絶されようとも。
そして、アレルヤや刹那がティエリアに接すると、ティエリアは人形のように動かなかった。それは、ドクター・モレノであれ同じこと。ロックオンがティエリアに接すると、ティエリアは泣き叫んでロックオンを返せとロックオンを責める。
一人だと食事もしないのに、ロックオンを見ると食事もする。
確かに、ロックオンは今は憎しみかもしれないが、ティエリアと言う存在をこの世界に留めている。
荒治療だが、ドクター・モレノはロックオンとティエリアを同じ部屋で生活させる方法に踏み切った。

「いやああああああああ!!出して、出して!!いやあああああああああああ!!」
その叫びに、トレミーの皆が目を瞑る。
「いやあああああああああ、うわあああああああああああああああああああ!!!
「愛してるから!愛してる、ティエリア!!」
「ロックオンを返して!!ああああああああ!!!」
ロックオンは、ティエリアの叫びを聞きながら、星の砂時計のオルゴールをならす。
哀しげなメロディーに、ティエリアの悲鳴がやんだ。
「これは・・・何?」
「オルゴール。お前にあげた、オルゴール」
「私に?」
「そう。俺が、俺がお前のためにあげた星の砂のオルゴール」
「あなたは、誰?」
「俺は、ロックオン・ストラトス」
「嘘。私のロックオンは死んだ」
「死んでいない。あれは、夢だったんだ」
「夢?」
「そう。何もかも、全て悪い夢。お前を守るロックオン・ストラトスは、俺だ。ずっとずっと、お前の傍にいるよ。もう、何があっても手放さない。ティエリア」
ロックオンは涙を流していた。
何故、ティエリアだけがこんな目にあわなければならないのか。
「もう一度・・・呼んで」
ティエリアの硝子玉の瞳に、光が僅かづつではあるが戻りかけていた。



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