血と聖水フロスト「食すエーテルイーター」







咆哮するネイの真っ白な6枚の翼のエーテルイーターに呼応して、ティエリアは金色の瞳を瞬かせると、背に6枚の翼を広げる。
「エーテルが泣いている・・・神の力エーテルが。聞こえる。こっちだ」
ホーリーシールドを広げ、刹那とティエリア、リエットはロックオンと巨人を残して、刹那が残した攻撃用の金色の鷹とは違う、黒い鷹を召還し、その背に皆を乗せるとティエリアが指差すほうへ飛んでいく。
この氷結地獄は巨大だ。
どこに、なにが封印されているのか分からない。
ずっとずっと飛んでいくと、そこには巨大な12枚の翼を広げた氷像があった。
「アクラ!!」
「これが・・・アクラ?」
「ティエリア、お前の精霊が?何故こんなところに」

一方、ロックオンは、ネイとなって翡翠の瞳をそのままに、エーテルイーターを起動させる。
「エーテルイータ60%解放、ファイア!」
60%限定起動されたエーテルイーターは、この世界に封印された異形の神々をまずは食い尽くしていく。
「違うだろ、そいつじゃねぇ!あの巨人だ!くそ、このくそエーテルイーターが!」
異形の神々がもつ大量のエーテルにひかれ、神を食っていく。
巨人は、ロックオンを踏み潰した。
雪に、ビチャリと内臓と血が飛び散る。
巨人は笑った。
「笑止。ヴァンパイア如きが、この番人を突破できると思ったか」
エーテルイーターのエーテルを食らう音は止まらない。
ビチャビチャ、ビチャグチャ・・・・。
異形の神を食らったあとは、悪魔を食おうとして、げっぷして、エーテルイーターは持ち主である神に支配された。
「笑止は汝なり。滅びよ」
エーテルイーターが白い巨大な口となって、巨人の上半身を削ってしまった。一口で、食ってしまったのだ。巨人は断末魔を叫ぶこともなく、そのまま足までエーテルイーターに食われた。
「そうさな・・・・お前も酷使ことが多い・・・・好きなだけ食べるがいい」
エーテルイーターは、その世界に封印されていた異形の神々、悪魔、天使を手当たり次第に食らう。
ネイは止めない。
だって、ネイはそんなただの食物に興味がないからだ。
エーテルイーターは暴走することもなく、巨大な食物個となった氷結地獄の餌を食い続けた。

「元に戻す方法は・・・・・エーテルを、分け与えること、かな?」
エーテルとは神の力であり生命力である。ティエリアは、銀のダガーで手首を切って血をふりかけ、生命力を分け与えようとしたが、刹那に止められた。
「何するの。止めないで」
「下手に生命力を分け与えると、お前が死ぬ」
「でも、このままじゃアクラが」
「元とはいえ・・・・神、なんだろう?なあ、お前、そんなに力のない存在なのか、お前は。世界を変革するといっておきながら!」
ピシリと、12枚の翼に罅が入り、翼が崩れおちた。
そのまま、本体にもひびがはいって、ガラガラと氷像が崩れていく。
「アクラ!」
「神は祝福を汝に・・・と、もともとは神だったか、お前は」
崩れ落ちた氷像から、じわりとエーテルが滲み出す。
それは12枚の黒い翼となり、バサリと巨大な翼を広げると、中心に彼が立っていた。
「アクラ」
「・・・・・・想いの力、か。ネイめ。エーテルイーターで食ったエーテルを、私に与えている。もう十分だ、ネイ。ありがとう、ティエリア。リエットも、それから、刹那、だったか」
アクラシエルは綺麗に笑うと、三人を連れて空間転移して、食い続けるネイの元に戻った。
「あ・・・空間転移。凄いな。いくら俺でも使えねぇ」
「空間転移は、神々の魔法だ。神か、それに等しき者でないと使えない」
「神聖魔法にも空間転移があるが・・・・信仰の力が足りなくて使えなかった」
「ロックオン・・・・怖い」
ビチャビチャと、エーテルを欲して食べ続けるエーテルイーターと一体化したロックオンは、まさに化け物。新人類を食らう使徒に相応しい姿。
「ネイ、戻れ。もういいだろう、ネイ」
アクラシエルが知っているネイの姿を見ても驚くことなく、ネイを諌める。
「ああ・・・・・分かった。眠れ、エーテルイーター」
真っ赤な血と臓物で彩られたロックオンが、ティエリアの傍にやってくると、ティエリアはビクリと怯えた。
「ティエ・・・リア?」
「怖い・・・ロックオン、怖い」
「いくらなんでも食べすぎじゃねぇの?ここら一帯なんもねーや。見通しがいいことで。あー、神に滅びし汝らへ祝福を。アーメン」
帰還のルートをロックオンが無言で開く。そのまま、ティエリア、刹那、リエット、アクラシエルと脱出して、最後にネイが残った。
「はは・・・・怖がられちまった。これが本当の俺。なぁ、先代の俺たち」
コキュートスの奥に眠る、初代〜5代までのネイを、ロックオンは闇の目で見ると・・・・笑って、それから自分も帰還した。



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