血と聖水外伝「ホーム」







「ピザ焼けたぞー」
「お前が焼けろにゃ!!」
フェンリルは、ピザをオーブンから取り出したロックオンの顔に炎のブレスを吐いた。
ぷしゅるるるるる。
ロックオンの柔らかい茶色の髪はアフロになった。顔をこげさせて、ロックオンはけれどピザは落とさず、皿の上におくとフェンリルをがしっと逃がさないように捕まえる。
「お・前・は・いつもいつも」
びろーんとほっぺたを伸ばしてやる。
「ぎにゃあああああ、にゃにするにゃあああああああああ」
「オーブンで焼いたろか!」
「焼けるもんなら焼いてみろにゃ!」
ロックオンの顔を爪でひっかくと、フェンリルはかましっ屁をロックオンの顔に向けてこく。
「くせえええ!!」
「くっくっく、僕はなんてすごいんだにゃ!ロックオンを退治するのにゃ!」
シャキーンと伸びた爪で再度ロックオンの顔をひっかく。ロックオンは、怒ってフェンリルをつまみあげる。首の後ろをつかまれてぶらーんと空中で足をじたばたさせるフェンリル。
「にゃにゃにゃにゃ。猫キック猫パンチ!あにゃー届かないにゃー」
「お前の短い足じゃとどかねぇよ」
「ずるいにゃ!うわーーーん主ーーーー!!」
大声で泣き出した。わざと。

その声に驚いたティエリアが、いつも腰のホルダーにぶら下げている二丁の銀の拳銃に銀の弾丸をこめていたのだが、その作業をやめてキッチンにはいってくる。
「もう、ロックオン、フェンリルいじめないでください!」
ロックオンからフェンリルをひったくって、ティエリアがフェンリルを腕の中に抱く。
フェンリルは、器用にティエリアの肩によじのぼると、ティエリアの肩ごしに顔だけ見せて、ロックオンにあっかんべーをした。
「にゃろう!!ま、とにかく飯だ・・・・・ってピザがない!?」
「げふ。ごちそーさん」
「ごちそうさま」
「いただいた」
「お前らああああ」
居候のリエットとウエマとそして隣に住むアクラシエルが勝手に、ピザを食べてしまったのだ。
「ピザ返せ!」
「分かった。返す。おええええええ」
「NO!アクラ、返さなくていいからはくなー!!」
無の精霊アクラシエルは、皿の上に元のかたちのピザをはいた。どうやったら、元の形で吐けるのか聞いてみたい。この精霊はなんでも吐く。ヴァンパイアの灰だったり、武器だったり、本だったり・・・・。どうなってんの?四次元ポケットか、お前の胃は。
「あ、またやってしまった。小腸まではいてしまった」
「うわあああああ!!」
まじで小腸がテーブルの上に。
ロックオンは本当に、この精霊どうなってんのと思った。
「いけないいけない。戻れ、私の小腸」
その言葉は魔法となって、小腸はアクラシエルの体に戻った。
「すげぇなアクラ!内臓吐けるなんてまじすげぇ特技だぜ!俺もできるかな?」
「鍛錬すれば、きっとできる」
リエットの憧れの眼差しに、アクラシエルはにこりと笑って、適当なことを言う。
「そうか。がんばって俺も心臓とか吐けるようになるぜ!っと、祈祷の時間だ。おいウエマ、聖書とってこい」
帝国騎士のウエマは、いいようにこき使われている。
ウエマがとってきた聖書を開いて、リエットは神に祈る。
「昨日100リラ拾った。ねこばばした。ああ神よ、アーメン。終わり」
「何それ!?どんな祈祷!?全然祈りになってないだろ!!」
ロックオンはつっこむのに忙しい。

「うっせ」
ロックオンを聖書で殴って、リエットはウエマと一緒に教会に出かける。
「無から有を。ピザを・・・・ピザを・・・・・うぬぬぬ、ピザハットさんですか。すみませんがピザをLサイズでチーズクラフトのシーフードスペシャルでお願いします。ええと、住所は・・・・とりにいきますので。空間転移です。え、ばかにしてるのかって?いや本当に空間転移でとりにいくので焼いててください」
アクラシエルは、魔法でピザを作り出した。気分だけは。電話をかりて、ピザハットに注文をすると、空間転移でとりにいくのだどうのこうの、電話先でもめていた。
ロックオンは、リエットの聖書で殴られて床に伸びている。
「では、とりにいってくる」
「いってらっしゃい。あ、フェンリルも連れてって。ローストチキン食べたいんだって。かってきてあげて」
「承知した」
アクラシエルは、フェンリルを頭にのせてピザハットの一番近い店の中に現れた。
「ローストチキンを一つ。先ほど電話でピザを注文した者だが。空間転移でやってきた。嘘はいってない」
店員たちは、みんなその、元神の美貌に釘付けになった。
「にゃー。働けにゃきみたち。そして僕にローストチキンを。支払いはアクラがするにゃ」
凍り付いていた店員たちは、頭の上でにゃーにゃーしゃべる物体を見てまた驚きながらも、注文されたピザとローストチキンを梱包してアクラシエルに渡した。
「2765リラになります」
「そうか。金はもっていない」
「ちょ!困ります!お金がないなら商品を返してください」
「無から有を・・・釣りはいらない」
じゃらじゃらと、何もない空間から金のコインが降って来た。
世界中で通貨となっている金のコイン。リラ金貨だ。1枚、1万リラする。それがじゃらじゃらと降って来て、店員は慌てた。
「お金が多すぎます!!精霊さんですか?いくらなんでも、非常識ですよ!!」
美しすぎる外見と、空間転移や金のコインを何もないところから魔法で生み出したところから、店員も精霊種族が客にいるため、精霊と判断したのだ。
「いかにも、今は精霊だ。だが、元は神。非常識であたりまえ。常識などいらない」
「は?」
「この人、元々神様だったにゃー。えらんだにゃ。凄いんだにゃ。しかも本とか心臓とか吐くんだにゃ。四次元ポケットの胃をもってるにゃ。非常識で常識なんてないにゃー」
「釣りはいらない。では、さらば」
アクラシエルは商品をもらって、空間転移でティエリアとロックオンのホームに戻った。
「ぴぎゃ!」
ロックオンを踏んづけていた。ふみどころが悪かったのか、ロックオンはまた気絶した。
「ネイは・・・・よく気絶するな」
「いつものことですから。ありがとうございます。支払いは?」
「リラ金貨を降らせた。100枚くらい」
「百枚!?百万リラ!?」
ティエリアは、なんてもったいないことをと思った。
「アクラは、金を無からつくりだすの?」
「そう。無から。錬金術の応用かな」
「すごい。あれ、フェンリルは?」
「私の胃の中にいる?」
「は?」
「四次元ポケットの胃を体験したいそうなので、魔法で飲み込んだ」
「主ただいまにゃー。アクラの胃の中にいるにゃー。すごい空間だにゃ、いろんなものが入ってるにゃー」
アクラシエルのお腹から、フェンリルの声が聞こえた。
「フェンリル!戻ってこれる?」
「今吐く。おえええええええ」
「アクラああぁぁぁぁ!!美人なのにいつもいつも吐かないでえええぇぇぇぇ!!」
ティエリアは、真面目に自分と契約した精霊に訴える。
でも、訴えるだけ無駄。
だって、もともと神様なんだから。常識なんて通用しない。
フェンリルを吐いた・・・・といっても、口から小さくなったものが出てくるだけ。それがすぐにもとの大きさになるので、吐いているといっても口をあけておえええとかいってるだけなので、汚くはない。
でも、一緒に内臓を吐くので怖い。
「あ。膵臓を吐いてしまった。いけない」
「きゃああああああ」
リアルな本物の膵臓に、ティエリアがロックオンを踏みつけた。
アクラシエルは、魔法で膵臓を元に戻す。

「ローストチキンと、ピザのLサイズ・・・これでよかったんだな?」
「あ、うん。ありがとう。とりあえず・・・昼食にしようか。アクラも食べてくよね」
「いいのなら、食べていく」
「ローストチキンがうまいのにゃー」

ティエリアとロックオンのホームは、居候やら隣人が増えて、とても毎日が楽しいことになっている。