帰宅







帰ってきたティエリアの機嫌は悪かった。
合計34人の男に、声をかけられたのだ。
刹那と並んで手を繋いで歩いていたのにも関わらず。刹那までボーイッシュな女の子と間違えられて、刹那の機嫌もすこぶる悪かった。
最近髪を切らずに伸びっぱなしにして、邪魔な髪をティエリアからもらった花のヘアピンで両サイドとめているのが、女と間違えられるきっかけになった。
服は、ティエリアは日本のジメジメした暑い気候が嫌いなので、半パンにキャミソール、ニーソにブーツという・・・萌え心をくすぐるような、格好。全部、ロックオンが買い与えたもの。
おまけに頭にはヘッドフリルをつけて、キャミソールもゴシック仕様。
ゴシックロリータファッションが好きなロックオン。ただ単に似合うからなのだが、そこには確かに萌え心もある。
ティエリアの私服はゴシックロリータの入ったかんじのものが多い。

紫紺の髪はツインテールに結われ、その上からヘッドフリルをつけていれば、この美貌だ。キャミソールなんて着ていれば、どこから見ても女の子にしか見えない。
たとえその胸がまな板でも。
胸なんて服でいくらでもごまかせる。
フリルでごまかせる形になったものばかり着ているせいで、貧乳なのだろうと相手は思うが、ティエリアの神の寵児の如き美貌に、そんなことどうでもよくなるのだ。

「かわいいねー。貧乳だけど」
そういった男の顔を、ティエリアは拳で殴って、足を踏んづけて刹那と一緒に逃走した。
「かわいいね。そっちの子も褐色の肌がいいね。女の子だよね」
そういわれたとき、刹那は。
「俺はガンダムだああ!!!」
と言って、相手を頭突きした。相手の連れを、ティエリアが蹴りを入れて、さらに抱いていたジャボテンダーアタックを決めてトドメをさす。
ティエリアの愛しの親友ジャボテンダーは、こういうとき凶器になる。

帰ってきた二人から事情を聞いたロックオンとアレルヤは、吹き出した。
「でも、無事で何よりだよ」
「私は!僕は、貧乳でも、ロックオンは愛してくれますよね!?」
ロックオンに詰め寄るティエリア。
「ばーか。気にすんなって。愛は、胸のあるなしじゃないだろう。何度体繋げたと思ってるんだよ」
キスされ、その言葉にティエリアだけでなく刹那、アレルヤまで紅くなった。

「じゃ、お先に。俺とティエリアは上の奥の寝室使わせてもらうな。ティエリア、一緒にお風呂入って、TVでも見た後に一緒のベッドで寝ようぜ」
刹那の家にきてまでも、一緒に眠る日課はかかせない。
「では、僕はこれで」
ジャボテンダーを大事そうに腕に抱えて、ロックオンとリビングルームを去っていく。
「アレルヤ。俺は、立派な男だ。何故日本の男どもは、俺を女に間違えたのだろう」
「うーん。多分、ティエリアのせいじゃないかなぁ。ティエリアといるとき、刹那すっごい自然な表情になるし、髪をとめてるヘアピンもそのせいかも。ちょっと髪伸びてきたね。また今度、ロックオンに切ってもらうといいよ」
「そうする・・・」
ヘアピンをとって、刹那は後ろで一つにくくれるくらいまで伸びてしまった髪を、さっさと切ってすっきりしようと思い初めていた。
それまでは、ロックオンに髪を切ってやるといわれても、めんどくさいと一蹴していたのだが。
まさか、16歳にもなって女に間違われるなんて。一緒に歩いていたティエリアはどう見ても女にしか見えないし、実際中性の少女だ。
でも、女扱いされると非常に機嫌が悪くなる。ロックオンとは恋人同士なのに。不思議なものだ。

刹那は、ティエリアからもらったヘアピンをガンプラが置いてある棚に、静かに置くのだった。なくさないように。大切な、友人で好きな人からのプレゼントなのだから。