夏の最後の訪問者(夏期休暇)







ピンポーン。
チャイムが鳴る。刹那はいつも通り、確認もしないで扉をあけた。
「しょおおおおおおおおねええええええんん!!!はぁはぁはぁ」
「な、な、な!!!」
刹那は、顔を真っ青にした。
そこにいたのはハム仮面だった。
そう、少年刹那を溺愛する変態のハム仮面ことグラハム・エーカーである。
「貴様、家にくるなとあれほど言っただろう!!」
「ふふふ、少年とデートがしたくなってね。私に不可能の文字はない。さぁ、この扉を開けたまえ」
「嫌だ!このストーカー、変態!!露出魔!!」
なんと、ハム仮面はコートの下はフンドシ一丁だった。
そのふんどしには金糸で少年命とでかく縫い取りがされてある。
「さぁ、いざアバンチュールへ」
「一人で逝ってろ、この脳みそばい菌マン!!」
「はぁはぁはぁ。ばい菌ではなく18菌が私の脳には住みついている」
自慢するハム仮面。

騒ぎを聞きつけて、奥の部屋からロックオンがきた。
「どうした、刹那?」
「ロックオン、くるな!!」
ロックオンの方を振り返った隙に、ハム仮面は玄関に侵入してきた。口には薔薇の花を咥えてかっこつけていたが、とげで血がだらだらでていた。
「おお、眠り姫!さぁ、いざかけおちに!迎えにきた!!」
ハム仮面のターゲットはころころ変わる。
「げ、ハム仮面!」
ロックオンは、刹那の背後に隠れた。
ロックオン・ストラトス24歳。嫌いなもの。ゴキブリとハム仮面。
ハム仮面は、人間とは思えない力で、刹那を突破すると、すぐ後ろにいたロックオンの手をとって、腰に手をあて、そしてそのまま勢いでお姫様抱きをした。
「うぎゃああああああ!!」
「ティエリア、ティエリアーーー!!」
刹那が、助けの声を求める。
ハム仮面の中では、少年はいつでも会えるが、眠り姫はそうそう会えないのだ。なので、今は愛しい少年こと刹那よりも眠り姫のロックオンを優先した。
刹那は、流石に家の中にまで銃を携帯するようなタイプではない。外に出歩くときは持ち歩くが。

「さぁ、愛のヴェーゼを!」
ブチュー。
刹那の声を聞いて降りてきたティエリアが見たものは、自分の恋人のロックオンが変態ハム仮面にお姫様抱っこされてタコの吸盤のような口でキスをされている、まさにその瞬間だった。

ブチ。

「あ、切れた」
ティエリアの血管が切れた音が、刹那にまで聞こえた。
「・・・・・・す。殺す。死ね」
ティエリアは、家の中でも銃を所持している。懐からサイレンサー機能つきの軽い、特注の銃を取り出すと、ハム仮面に向かって発砲しまくった。
発砲しすぎて、ハム仮面は蜂の巣状態。
ドサリと落ちたロックオンは、白目を剥いて気絶している。その体を、刹那が引きずって、安全な場所まで移動させる。
「おえ・・・・ロックオン・・・・俺も、あのキスは・・・されたことあるけど・・・おえ・・・・う、吐きそう」
刹那は、ミッション中で単独で行動していたとき、いきなりハム仮面に襲われてキスされた。その時は、銃を股間に発砲しまくって逃げ出したが、あの気持ち悪い思い出は色褪せない。
哀れロックオン、こうしてハム仮面の餌食となる。

「死ね、死ね、死ね」
キュイン、キュインと、銃弾が壁にめり込む。
すでにハム仮面は、血の海に沈んでいた。

「ロックオン、大丈夫ですか!?」
「俺もうだめ・・・・ティエリア、あとは頼む」
「ロックオン!!」
「刹那。お前は変われ。変われなかった俺の分まで。生きろ、そして世界を・・変革しろ。あとは、頼む」
ガクッ。
ロックオンは力尽きた。
「勝手に殺すなあああああ!!」
ナレーションでもある刹那の頭をはたいて、ぐいっと口を拭って、血まみれのハム仮面を、刹那と二人でロープで縛り上げた。
「こちら、廃品回収車でございます」
外から、そんなアナウンスが流れてきた。
ロックオンも刹那もティエリアも、三人で邪悪な笑みをニヤリと浮かべる。
廃品回収業者を呼んで、金を掴ませて、廃品回収のおっさんに渡して、回収してもらった。
ブロロロと、車の音と共に去っていくハム仮面。
玄関にはふんどしが落ちていた。今のハム仮面はフルチンだ。
汚いので無論見てもいないが。

「ロックオン、こっちへ」
「 (>'A`)>ア゙-ッッ!!」
ロックオンは、ハム仮面が去って、真っ白になって灰になっていた。
「血と聖水の名においてアーメン!!じゃなかった・・・・」
ティエリアは、ロックオンの頬を両手で挟むと、優しいキスをした。
「おっしゃああああ、復活!」
ロックオンも単純だ。でも、それだけティエリアの愛の効果は絶大。
「ティエリア。お前、ロックオンを介してハム仮面と関節キスしたことに・・・・」
「・・・・・・!!!」
ティエリアは逃げるように洗面所にいくと、歯を磨きまくるのであった。そして、ロックオンも一緒に歯を磨きまくる。
そして、二人は改めてディープキスをした。
「あ・・・」
「お前ら、盛るならトレミーに戻るかホテルにいってからにしろ!!」
ごそごそしだしたロックオンの頭をハリセンではたいて、刹那は真っ赤になったティエリアを連れて、玄関のハム仮面の血痕を拭うことにした。
ハム仮面、死んでもおかしくない出血だったのに生きていた。

流石人外。

一方、ハム仮面は。

「うふふふ。眠り姫の唇ゲット。ふふふ」
廃品回収で、廃品にまわされながら、蒼い空を見ていた。フルチンだったので、すぐ警察が呼ばれ、猥褻物陳列罪でしょっぴかれていったとさ。
そしてユニオンの上司から怒られ、減給処分となったそうな。それでもこりないハム仮面は永遠不滅です。