今年もやってくる死のバレンタイン







「ロックオン、はい、バレンタインチョコです」
にこにこにこにこ。
満面笑顔でそれはそれは花が咲いたように明るいティエリアに、ロックオンは喜びの笑みを無理やりつくって、チョコを受け取った。
頬が軽く引き攣っているのは仕方ない。
ちなみにティエリアは白衣をきている。
何をしていたのかはすぐに想像がついた。キッチンではなく実験室でチョコを作っていたのだろう。去年のように。

「今すぐ食べてくださいね!去年みたいに賞味期限切れになるまで放っておかないでください」
「あ、ああ・・・・」

去年は賞味期限が切れるまで飾っていた。
それはロックオンにとっても安全対策にもなった。

とりあえず、ハート型のラッピングをとって中身を確認する。

「あー。味見した?」
「するわけないじゃないですか!」

どこからこんな自信が湧いてくるのだろうか。
それはティエリアにしか分からない。きっと。

チョレート。ハート型に綺麗に整えられて、ホワイトチョコでロックオンLOVEとかかれていた。
ホワイトチョコは問題ない。
普通のホワイトチョコだ。
問題はハート型のチョコレートだ。
普通なら茶色。まぁストロベリー味でピンクのチョコなんかもあるけど。
どうして蛍光色のオレンジなんだろうか。
そりゃハロはオレンジだけど・・ノーマルスーツの色でも模したのか?いや、ノーマルスーツのオレンジはアレルヤだった。
グリーンだ、ロックオンのノーマルスーツは。
「ハロさんとお揃いの色にするのに苦労しました。シアン化合物とか、ナトリウムとかいろいろまぜて・・・化学反応で色をためしまくったあげくにですね」
すでに劇薬か、このチョコは。
化学物質を混ぜたのだろうか、このチョコに。

きっと白衣をきていろいろ、ドクター・モレノの実験室をかしきってつくっていたんだろう。
キッチンで作らないから、ティエリアは。

「おーいアレルヤー!」
通りかかったアレルヤを呼び止める。
「なんですか、ロックオン。あ、チョコだー。綺麗な色だね」

ロックオンはアレルヤを羽交い絞めにすると、ティエリアに促す。
「アレルヤと刹那の分もあるよな?」
「もちろんです」
ティエリアはロックオンのチョコより小さめのハート型の蛍光色のオレンジのチョコを取り出した。
「ロックオン、ロックオン、うわあああ、僕はまだ死にたくないよ!!」
ティエリアの料理の壊滅的な腕はトレミーでも有名だ。食物に薬品(食べれる?かどうかはティエリアのみ知る)を混ぜたりして、致命的を通りこして致死的だ。
一欠片、ティエリアが作ったアレルヤ用のチョコを無理やりロックオンはアレルヤに食べさした。
「もがっ・・・・オレンジの味が・・・・・さようなら、ハレルヤ」

バタッ。

アレルヤは泡を吹いて白目をむいて失神した。
陸に打ち上げられた魚が酸素を求めて死ぬ間際のような動きをして、アレルヤは力つきた。

「ほう、オレンジの味か。これは新発見だ」
ティエリアは何やらメモをとりだして、それにメモしている。
「症状は、陸に打ち上げられた魚・・・と」

「俺は、いくぜぇ!!」

ロックオンは深呼吸して、ティエリアから受け取ったチョコを1分で食べきった。
そして。

バタッ。

アレルヤの隣に倒れた。
「実験は・・・・失敗した。おかしいな。僕にメロメロになってくれるはずだったのに・・・」
不満そうなティエリア。
どんな実験だ。
とその場に刹那がいたらつっこんでいただろう。
ちなみに刹那は部屋にロックをかけて閉じこもっている。臨死体験はしたくないので。

「ジャボテンダーさん、帰りましょうか」
右手にもっていたジャボテンダーを抱きしめなおして、ティエリアはあいた左手でロックオンの足を掴むとズルズルと引きずってロックオンの自室に向かった。
ティエリアは刹那の分のチョコを一口食べてみたが、首を傾げていた。
「おかしいなぁ。オレンジの味はするが・・・・確かにビタミン剤とかはいれたけど、有害物質はほんとはいれてないのに。食べれる発光色固形がおいしくなかったのかな?まぁ、ロックオンはチョコにメロメロになって意識を失ったのでいいか」
どこをどうとればそういう発想が出てくるのか。
ひたすらに前向きだ。

ちなみに、目覚めたロックオンは普通のチョコをまたティエリアからもらったとか。
手作りじゃなくって、売ってたやつを。
最初からそれをしない勇者ティエリア。

君にロックオンはメロメロだ。
実験しなくても大丈夫。