私立ガンダム学園外伝「我輩はチョコである」@







冬の厳しい季節を少しとおりこして、ほんの少しだけ春に近づく季節、2月。
3月になれば授業は全て終わり、今の3年生は卒業し、4月になれば新しい1年生が入っている。無論、2年OO組の彼らも3年に進級・・・するわけない。したら卒業の年がきて物語かけないじゃないか。このままずっと2年でいてもらいます、ええ。作者の都合で。

1月もいろいろとめでたい行事もおおかったが、2月も大きなイベントがある。それは学校がするのではなく、一年に一度のイベントとして定着してしまった、セントバレンタインの日。
女子が好きな男子にチョコレートを渡すというもの。それは日本だけに固定されたもので、外国では違う形式となっている。
女子は複数のチョコをいろんな男子に渡す。いわゆる本命と義理チョコというやつだ。
義理チョコでももらえないよりはまし。もらえない生徒はたくさんもらってもてる生徒に嫉妬したり怨んだりもすることがあるかもしれない。

さて、そんな2月14日の朝。
OO組で学園でも人気の高いマイスターたちは、下駄箱やら机にいれられたチョコレートを整理していた。

一番人気はやはり刹那。
いつものクールなかんじが人気の高さの秘訣か。何より主人公だし。
その刹那と同じくらいにもらっていたのがティエリアとリジェネだ。何よりセレブな人間だ。そこらの成金ではなく、某国の王女と王子だ。流れている血の血統の高さがまず普通のセレブと違う。
おまけにビジュアルバンドメンバーのメインボーカリストだったりして、もうもてる要素がてんこもりだ。
彼ら二人が転校してからというもの、二人の下駄箱には毎日ラブレターがぎゅうぎゅうにつめこまれ、そして二人はそれを読みもせず適当にメイドにもたせて帰るのだ。
ああ、もてるって羨ましきかな。
ニールとライルももてるが、この三人には遠く及ばない。とくにライルは彼女であるアニューの目が厳しいのでラブレターは少ない。同じくアレルヤも恋人のマリーが、ラブレターをもらったアレルヤを見るときれてソーマというもう一人の人格にかわって、学校で拳をまじえる喧嘩になって、アレルヤはいつも保健室おくりだ。
身に粉がふりかかるのを恐れる女子生徒たちは、アレルヤにラブレターを渡すのはあまりしない。何せソーマの人格は渡されたラブレターを読んでその女子生徒に、アレルヤは私の奴隷だとまで宣言するのだ。
その分アニューはまだましか。ライルがもてるのはライルのよさがみんなに分かってもらえている証拠と、微笑むのだ。

さて、ニールとティエリアは付き合っているのだが、そのせいでニールのラブレターも少ない。しかしティエリアの場合、中性という性別、美しすぎる美貌に知名度もあいまって、リジェネのように男子生徒からも女子生徒からももてる。まぁ本人気にしてないので、そこらへんは問題ないだろう。リジェネも男子生徒から呼び出されて告白されても、ティエリアが好きだからとそっけなく答えるのが常だ。ただし、リジェネは男子生徒からもてるのを不快には思っているようだ。ティエリアは女子生徒からもてるのを喜んでいる。
まぁ、ここらはくっきりと少年と位置づけられた性別と、少年でも少女でもないと位置づけられた性別のせいかもしれない。ティエリアに子孫を残す能力はない。中性ゆえに男女のどちらにも属さず、また染色体も特種だ。

さて、そんな2月14日の朝。
ティエリアとリジェネの家のメイドたち数人が、二人の分と、ニール、ライル、それに刹那の分のチョコレートを丁寧に分けてリムジンに乗せて持って帰った。
来るときに乗っていた車だ。
刹那は某変態教師のストーカーが激しい理由もあり、ニールとライルは施設暮らしのせいもあり、今はティエリアとリジェネの両親が暮らす豪邸の別宅に住んでいる。
ただ一人一般の家庭のアレルヤだけが電車通学で、本当に普通の高校生活を送っている。

さてさて。
山積みだったチョコが去っていった中で、刹那は厳しい顔をしていた。
身構えて、最新の銃を腰のホルダーに所持していたのに、目的の人物はいなかった。
おかしい。こんなこと、あるはずがない。
刹那に恋人はいない。密かに同じクラスの委員長のフェルトに想いを寄せているのだが、まだ二人は普通の友人レベル。告白する勇気がまた刹那には足りなかった。
だって、もしもフェルトを恋人にしたら、真っ先にあの男がフェルトに嫌がらせをするに違いない。

いない。
あの男がいない。
高校も卒業していないのに何故か教師をしている、かのストーカーグラハム・エーカーが。
おかしい。
いや、平和でいいじゃないかとか、そんな希望じみた未来はもたない。刹那は現実を直視するタイプだ。
グラハムが高校を卒業していないと発覚したのは去年だ。大学は出ているらしい。いつもフルチンかそれに近い格好で校内を走り回って、刹那をストーキングする男だ。
「少年命」
それがやつの口台詞だ。
何度か銃で撃ったりして殺したはずなのだが、まだ生きている。なぜ生きているのか。それは変態の法則によるものだろうか。

そう、変態は永遠に不滅である。

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「刹那、先いっとくぞー」
「ああ、先にいってくれ」
ニールが自分の鞄を右手にティエリアの分の鞄を左手にもって、先に教室に向かって歩きだす。
メイドさんたちにチョコを渡すために、一度教室に入ったのだが、机にはいっていたチョコを持って、下駄箱のある場所まで戻ったのだ。そこにずらーっとメイドさんたちが、メイド長を筆頭に並んでいた。ある意味凄い光景だ。
ティエリアとリジェネの家は高校に多額の寄付をしており、メイドさんはよく見かける。教師もそして校長も何もいわない。理事長が容認しているせいだ。
昼時にはシェフの料理を届けに校内をよく歩いていたりするのだが、朝からうろうろするのは流石に自重しているようだ。まぁ、そうしてほしいと、ティエリアとリジェネが願いでたのだ。
前の高校ではいつも周囲にメイドがいて、教室も後ろのほうで控えていたりして・・・どうにも高校生活をしている気にならない。メイドさんたちは才色兼備なので、教師が授業でちょっとミスをすると指摘したりして、もうメイドさんが家庭教師でいいじゃないか状態だったり。教室移動のさいは、どんなに軽いものでも持ってしまうメイドさんたち。新しく転校したこの私立ガンダム学園では、普通の高校生活がしたいと二人も考えるようになっていた。
なので、メイドさんが校内を徘徊するのは随分と減った。

ティエリアは変わらずジャボテンダーさんをもって、教室にくると隣の席に座らせる。
ジャボテンダーさんの席は椅子はソファーになっていて、体勢のとれないジャボテンダーさんが転ぶことはない。
「さて、今日も一日がんばりましょうね」
ティエリアが、ニールに笑いかける。
「にしても、刹那のやつ遅いなぁ」
もうすぐ朝のホームルームだ。

ついには担任のマリナ先生がきて、出席をとってしまった。
「あら、刹那くん?刹那・F・セイエイ君は休みですか?」
「いえ、きてます」
リジェネも首を傾げている。
「ねぇティエリア、刹那どうしたの」
「わかんない」
「まさかもうあの変態の毒牙に・・・・」
「そういえば、いつも門のところにいるはずのグラハム先生いなかったね。休みなのかな。毎日いるのに」
「うーんどうなんだろう・・・・」
「あの変態が休みなら今日は安全だなぁ」
アレルヤもライルも混じって、自然に輪ができていた。
一方その頃、刹那は。

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「・・・・・・・・・・・・・・・・・どうしろと」
自分のロッカールームをあけて、そこにあった物体を凝視していた。
等身大、裸体グラハムチョコが入っていた。
口には薔薇をくわえている。薔薇もチョコでできている。花弁のところはピンク色で多分ストロベリーなんだろう。
そして、刹那はグラハム裸像チョコの股間をみて、吐き気を催していた。
「おえっ・・・・」
バナナだった。見事にそりかえっている。バナナが突き刺さっていた。
皮も親切にむかれて、さも食べてくれといわんばかりに。
「う・・・・眩暈が・・・・・」

「はぁはぁ・・・・少年・・・・我輩はチョコである!遠慮せず!!全身!特にあそこ!!から食べてくれ・・・・ハァハァ・・・・」

裸像チョコの中から、荒い鼻息が聞こえてくる。
「ま、まさか中にいるのか!!」
「はぁはぁグッジョブ!!溶けないように、特種スーツを着て・・・あ、特注でスケスケだから安心したまえ!バナナには、私の愛のエキスがたっぷりかけられているぞ少年!!」
そういえば、バナナはカビカビしていて、白い液体がこびりついている。青臭い、この匂いは。

「・・・・・・・・・2010年お前の出番はない。劇場で会おうなんていうものか、このど変態フルチン!チンカスだらけなんだよぼけえええ!!!」

ピシッ。
グラハム裸像チョコが割れて、中から特種スケスケスーツを着たグラハムがよろめいて現れた。
「しょ、少年、私はチンカスなどないぞ!ちゃんと毎日綺麗にブラッシングして」

「死ね」

スパーン。
軽い音と一緒に、グラハムは脳天を銃で打ちぬかれて、その場に血を流しながら倒れた。
「あはん」
変な悲鳴と一緒に。

「わ・・・・我輩はチョコである・・・・」
去っていく刹那に向かって手を伸ばす。
でも刹那は足早に通り去っていった。
「我輩は猫・・・・猫は受けだ!だから猫じゃない!我輩は今日はチョコだ!我輩はチョコであるうう!!!」

さぁ、2月14日、バレンタイデーの一日の幕開けだ。

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