ホットケーキの災難







カチコチカチコチ。
ロックオンの部屋で、いつものようにお泊りをして、同じベッドで寝ていたティエリアは目を数度瞬かせた。つぎに、ぐ〜きゅるる〜という空腹に耐えかねたお腹の音に耳を塞ぐ。
「んが〜んごごごご」
「お腹へった・・・・」
ティエリアにしては珍しい、夜間に眠れないほどのお腹がすいたという現状。
隣では誰よりも愛しいロックオンが、ンガーンガーといいながら、大口をあけて寝ている。

「よく起きないな・・・・」
ティエリアは、とりあえずジャボテンダーさんでロックオンの口と鼻をふさいでみた。
1分経過。
ビクッ、ビクビクビク、
ゴロゴロゴロ!
「ぬおおおおおおお、死ぬ!!」
「ロックオン、1分12秒もたえた、すごいですね」
ぱちぱちと拍手をおくるティエリアに、ロックオンは荒い呼吸を整えてから頬をつねった。
「全くこの子は!人が寝てるときにこんな悪戯しないの!」
「痛いです、えい!」
のしっ。
ロックオンの頭にジャボテンダーをめりこませる。

「なんなんだ。寝れないのか?」
「お腹すきました。ホットケーキが食べたいです」
「はぁ!?今から!?」
時計を見ると深夜2時だ。
「はい。今から。ということで、作ってきてください」
にっこりと花のように微笑むティエリアに悪意などないだろう。天然なんだから。
大輪の薔薇を咲かせたまま、ティエリアはベッドでごろごろしだす。

仕方ないと、ロックオンはパジャマ姿のまま、トレミーの廊下の照明をいれてキッチンにまでいくと、そこでなぜかエプロンだけいいだろうに、コック帽もかぶった滑稽な格好でホットケーキを焼き出すのだ。

それで、その頃ロックオンの部屋でティエリアはというと。
我慢できなかったのでゼリー状のサプリメンを食べて満腹になった。
「ロックオン遅いですね・・・・眠い・・・今日は刹那と寝よう」
ズールズールと裸足で、寝ぼけ眼をこすって、ジャボテンダーを引きずりながら部屋のロックを解除して廊下にでると、宙を音もなく蹴って刹那の部屋の前にくる。
そして、かってに刹那の部屋のロックを解除して、安眠している刹那のベッドにこそこそ潜り込んでティエリアはまた寝た。
ちなみに、刹那は振動で片目だけあけて、相手がティエリアであるのを確認すると、毛布をかけてやった。
たまに、刹那の部屋にティエリアは泊まりにくる。
ロックオンがミッションでいないときなんて毎日だ。
だから、場慣れしている。

刹那は、なぜティエリアがやってきたのかなんてどうでもよかった。
ロックオンとケンカしたのなら、明日かってに仲直りしてるだろうし。
年少二人は互いの体温を共有しあうようにベッドで丸くなる。


「ティエリア、できたぞホットケーキ!!・・・ってやっぱりいねえええ!!」

一人放置されたロックオンは、涙を流しつつホットケーキをやけ食いして、それからアルコールを飲んでぶつぶつ愚痴を零しながら一人で寂しくねた。
ロックオンはティエリアは刹那の部屋だろうと分かっていたけど、回収にいかないのは刹那を起こすと噛み付いてくるうえに引っ掻き回して、本当に子猫のように手におえない。

ちなみに、ティエリアにアレルヤの部屋で寝るという選択肢はなかった。
だって、アレルヤ、自分の部屋に訪問者がくると感動して太陽が昇るまでマルチーズの話を永遠と繰り返すのだから。