全力で。









全力でトイレにこもって2時間。
ロックオンは、でそうででない、そんなもやもやを抱えて、ついには雑誌を読み出した。
俺ってばおっさんくせえ。
でもトイレに雑誌を置いていたのはティエリアだ。

コンコン。
トイレをノックされる。

「ごめん、まだむり。自分の部屋のトイレ使ってくれないかな」
「ここが私の部屋です」

ティエリアは断言した。
いや、ここ俺の部屋だし。

コンコン。

「まだ無理!」

コンコン。

「分かった、出るよ!」

出ると、ティエリアはジャボテンダーを抱えて、10秒で出てきた。

「ふう。ジャボテンダーさんが水分をとりすぎたものでして」

ガクッ。

いつものオチだけどさ。

まぁいいか。

そして、ロックオンはまたトイレにこもる。
雑誌を見ていると、時間を忘れてトイレに篭りきりになっていた。

トイレから出ると、ティエリアの書置きがあった。

「下剤もらいにいってきます。ドクター・モレノのところへ」

「だあああ!もういいんだって!」

急いでドクター・モレノのところに行くと、ドクター・モレノに聴診器を頭に当てられながら、会話をしている二人がいた。

「だから、ジャボテンダーさんは水分をとりすぎると、やはりトイレに行きたがるようで」

「それお前さんの間違いじゃないか」

「いいえ、これは愛しいジャボテンダーさんの話だ。ジャボテンダーさんはジャボボ星が故郷で、普通のジャボテンダー星から来たのではないのだ。ジャボテンダー星とジャボボ星は3万光年離れていて」

ドクター・モレノはこっくりこっくり居眠りを始めた。

そこへ、緊急のシグナルとアラーム。

「前方に敵と思われる影発見!マイスターたちは急いでガンダムを発進させるべし!」


ふっと。
ジャボテンダーを放り出して、ティエリアは眼鏡を外した。ロックオンとすれ違いそうになる。

「何処へ行くのですか。行きますよ」

真紅の瞳が、とても綺麗で。

「ティエリア・アーデとしての責務を全うします」
走っていく。

いつものお茶らけた可愛い仕草も言葉も消えていた。触ると、切れそうな刃物のような雰囲気。纏う空気が全く違う。

「アレルヤ、遅い、何をしていた!」

すでにノーマルスーツに一番に着替えて、最後にやってきたアレルヤを一喝して、皆それぞれガンダムに乗り込んで、祈る。

この戦場を乗り越えて、生き残り、再び邂逅できるようにと。
ジャボテンダーが、宇宙に華を散らしていく敵を、ゆっくり見つめていた。