二人のティエリア「ロックオンとティエリア」









「あなたのことが好きです」

そう告白されてどれくらい経っただろうか。
ティエリアと、トレミーで同じ部屋で生活を始めた。毎日面白おかしく、それでいてラブラブな日々を送っていた。

誰にも頼らず、ヴェーダだけを信じていたテイエリアの過去を思い出すと、人と触れ合うということを覚えた今のティエリアは、昔とは比べ物にならないくらい、人らしくなっただろう。

イオリア・シュヘンベルグの計画のために生み出されたデザイン・ベイビー。

イノベイターであることを、ティエリアはロックオンに告白した。
母はおらず、人工の羊水の中で今も何体かのティエリアが、計画のために今のティエリアに何かあった時のために、眠っている。
イオリア・シュヘンベルグの秘密基地で。

ティエリアの背中には刻印が刻まれていた。NO8。それがティエリアの番号であり、名前のようなものだった。

ティエリア・アーデという名を、イオリア・シュヘンベルグから受け取った。イオリアが生きていた頃から、ティエリア・アーデは生きていた。それは今のティリアではなく、別のティエリアである。
何代か代替えをして、今のティリアに至った。
ガンダムマイスターとなるべく、生まれてきたティエリア。人ではないティエリア。全てを含めて、ロックオンは愛という名の抱擁をした。

「俺もお前さんを愛してるよ」

ヴェーダにあれほど、人を愛してはいけないと言われていたのに。ティエリアは、その約束を破ってしまった。

それでも構わないと、今のティエリアは思う。ロックオンが隣にいてくれるだけで、ヴェーダを必要としていた日々と違う生き方ができた。

「もしも、僕がもう一人現れたらどうする?」

ある日、そんなことを聞いてみた。

ロックオンは、困った顔をしてそんなことは起こらないと笑った。

お互い、離れ離れにならないと、約束を交わした。

「俺は今のティエリアがいいんだ」

「ロックオン・・・・」

デザイン・ベイビーであろうが、計画のために生まれた命であろうが、イノベイターであろうが、ロックオンはティエリアを必要としてくれた。

「愛しています」

「俺も愛してる」

そっと抱き合って、そして唇を重ねる。

ヴェーダに反対されたっていい。ロックオンと一緒にいられるならば。
たとえ計画の中でこんなことが含まれていないのだとしても。

もう、元には戻れないのだから。

それほどロックオンを愛してしまった。必要としてしまった。もう過去には戻れない。イオリア・シュヘンベルグが作りあげた、完璧なはずのイノベイターであり、計画を実行するガンダムマイスターの存在の意味が違ったとしても。

「あなたの側にいられるなら。僕は全てを放棄してもいい程、あなたの側にいたい」

「お互いガンダムマイスターじゃないか。でも、俺も同じ意見だ。お前さんのいない未来なんて考えたくもない」

トレミーのロックオンの部屋で、生活を初めて何か月が経っただろうか。

毎日、一緒に寝食を共にし、時に肌を重ねる。ガンダムマイスターとしての責務を忘れてはいない。戦いが起こればノーマルスーツに着替え、ガンダムに乗り込んで世界に武力介入する。
二人は、あくまでソレスタルビーイングの一員であった。

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