デジャヴ−記憶の欠片−「覚醒と邂逅」







「刹那。目を覚まして?」
いつものように、刹那に声をかける。
刹那はピクリとも動かなかった。

そして、夢の中の言葉と通りに「ロストエデン」を歌いだす。

世界は一度終わったのに 私はあなたと出合った
世界は一度終わったのに 私はあなたと出会ってしまった
世界の終焉から あなたは私を連れ出す
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
失われた楽園に あなたは私を連れて行く
ロストチャイルド ロストチャイルド ロストチャイルド
終わりからの始まり あなたと私は歩きだしていく
私の世界は終わったのに あなたはそこから私を連れ去る
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
失われた楽園に あなたは私を連れて行く
あなたの愛がそこにある わたしのためだけの愛がある
世界は一度終わったのに 私はあなたと出合った
世界は一度終わったのに 私はあなたと出会ってしまった
私はもう一度歩きだす あなたと一緒に新しい世界を
あなたに愛されながら 私もあなたを愛する
あなたの愛に包まれながら 私は生きる 歩みだす
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
あなたの愛が 私の楽園 あなたの愛が 私の世界

刹那が目覚める気配は全くなかった。
ティエリアは涙を零す。
そして、何度も繰り返しロストエデンを歌い、歌いすぎて疲れて、ティエリアは刹那のベッドの傍でまた眠りについていた。

刹那は、ゆっくりと瞼を開いた。
そこにあったのは、ティエリアの寝顔。涙を零している。
刹那は、ゆっくりと手を伸ばして、その涙を拭き取った。
夢も見ていない深い眠りだった。
ただ、ティエリアの歌声がずっと聞こえていた。
それに導かれるように、沈んでいた刹那の魂は浮上した。

「ティエリア」

声は、わりとしっかりしていた。
体を動かして、ティエリアに口付ける。
ティエリアの右手に巻かれた包帯を見て、刹那は心が痛くなった。
きっと、ティエリアは手首を切ったのだろう。
あれほど強く、一人にはしない、そばにいるといったのに、死にかけたのだ。ティエリアの動揺は凄まじいものだったろう。

「ティエリア」

懐かしい声に呼ばれて、ティエリアが目を開ける。
そこには、しっかりとしたピジョン・ブラッドの瞳を強く輝かせている刹那がいた。
「刹那!」
ティエリアは、刹那に抱きついた。
「もう、僕を置いていかないで。一人にしないで」
「悪かった。もう、お前を一人にしはしない。ずっと傍にいる」

ドクターは、奇跡だといっていた。
脳死状態で回復の見込みはほとんどないと言っていた。

傷がすっかり癒えた刹那は、右目の再生治療も受け、右目を取り戻した。もう、刹那の体に傷はない。
その日も、ティエリアは刹那の部屋のベッドで一緒に抱き合っていた。
「ティエリア、愛している」
「僕も、君を愛している。ロックオンを愛しているけれど、君も愛している。好きだ」
「俺も、好きだ」
抱きしめあい、優しく唇を重ねあう。
「寝ている間、ロストエデンの唄が聞こえてきたんだ。そして、ああ起きなければと思ったとき、目が開いた」
「刹那は、ロストエデンの唄は好き?」
「好きだ」
「歌うね」
ティエリアが微笑んだ。


世界は一度終わったのに 私はあなたと出合った
世界は一度終わったのに 私はあなたと出会ってしまった
世界の終焉から あなたは私を連れ出す
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
失われた楽園に あなたは私を連れて行く
ロストチャイルド ロストチャイルド ロストチャイルド
終わりからの始まり あなたと私は歩きだしていく
私の世界は終わったのに あなたはそこから私を連れ去る
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
失われた楽園に あなたは私を連れて行く
あなたの愛がそこにある わたしのためだけの愛がある
世界は一度終わったのに 私はあなたと出合った
世界は一度終わったのに 私はあなたと出会ってしまった
私はもう一度歩きだす あなたと一緒に新しい世界を
あなたに愛されながら 私もあなたを愛する
あなたの愛に包まれながら 私は生きる 歩みだす
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
あなたの愛が 私の楽園 あなたの愛が 私の世界

比翼の鳥は、またお互いを取り戻した。
寄り添いあい、そして時折愛を囁く。
完璧な恋人同士ではないけれど、二人はそれでいいのだ。
必要な時だけ愛を語ればいい。
必要のないときは、言葉に出さなくてもいい。
擬似恋愛の擬似恋人。

ティエリアの世界は終わらなかった。
また、はじまる。
ロストエデンの唄のあなたは、刹那のことだろうか。

それは、ティエリアにしか分からない。

二人は、互いに寄り添いあい、また日常を取り戻した。
比翼の鳥のように、決して離れることなく。
魂の双子は、純粋にお互いを大切にしあった。

本当の、比翼の鳥のように



               デジャヴ−記憶の欠片− The End
                                            Thank you for you
                                           Presented by Masaya Touha

                                            デジャヴではないデジャヴ
               あの人を愛しながら、僕は新しく人を愛する

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フー。
多分、満足?
思ったとおりのかんじで文章になりました。
完全に刹ティエですね。ロクティエ前提の刹ティエ。ライルは振られてしまいました。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
恵さまに捧げます。愛の形になってしまったのですが、擬似恋人であることは変わりません。
思いっきり刹ティエです。