だから朝は弱い







「ほらほら、起きた起きた」
「んー」
ティエリアは、ロックオンに起されて目をあけたものの、もぞりとまた毛布の中に顔を埋めた。
毎日のことなので、ロックオンも慣れている。
毛布をはがすと、ティエリアがもそりと緩慢な動作で起き上がった。

「はい、まずは着替える。それから顔洗って、歯を磨く」
「ふぁい・・・・ZZZZ」
ティエリアは、一度立ち上がったかと思うと動かなくなった。
「こらこら、立ったまま寝んな」
また起される。
石榴の瞳を眠そうにこすり、大きく伸びをしたあと、欠伸をした。

少しだけ、頭が覚醒する。
まだ、靄がかかったようではあるが、とりあえず着替えだす。
「こ、こら、着替える時はちゃんといいなさい」
「別にいいでしょう。減るもんじゃなし」
堂々と、ティエリアはパジャマを脱ぐと、クローゼットを漁り、そこからズボン、薄い緑のワイシャツ、ピンクのカーディガンを取り出すと、いつもの格好に着替えた。
とりあえず、ロックオンは違う方向を向いていた。
いくら恋人同士であるとはいえ、あまりに無防備だ。

着替え終わったティエリアは、そのまま洗面所に向かい、冷たい水で顔を洗った。
大分頭がすっきりしてきた。
そのまま歯もみがいて、髪をブラシでとく。

ピョコン。
髪の一部が、はねていた。
水をつけてぬらし、ブラシでといたあとドライヤーでかわかしたが、直らない。

「ロックオン。髪がはねて直りません」
「んあ?珍しいな。ティエリアのサラサラの髪に寝癖がつくなんて。いつまでも意地汚く惰眠を毎日毎日貪ってるせいじゃないのか」
「そんなの関係ありません」
ロックオンのところまでくると、ティエリアはしきりにはねた髪を気にした様子だった。

ロックオンの手が伸びて、はねた髪をなでる。

ピョコン。

はねた髪は、何度直そうとしても根性深くそのままだった。
「あーこりゃ直んねーな。ちょっと待ってろ」
ロックオンが、ティエリアの机の小物入れを漁りだす。
そこには、バレッタや髪ゴムやリボンが入っていた。
その中から、鈴のついたかわいい髪ゴムを取り出すと、口にくわえる。

「ロックオン」
髪を撫でられる。
その気持ちのよさに、ティエリアはまた眠りそうになった。
ロックオンは、はねた髪の部分が右側のサイドであったのをいいことに、そのままそこらへんの髪を掴んで、器用に三つ編にすると、口にくわえていたゴムでくくった。

リン。
髪から鈴の音が聞こえる。
髪を結われるのは、ロックオンのせいでなれてしまったので、ティエリアは文句を言わなかった。

「さて、食堂行こうか」
「はい」
ロックオンに手を握られて、そのまま部屋を後にする。
食堂では刹那とアレルヤが食事をしていた。

「やぁ、ティエリア、ロックオンおはよう。ティエリア、かわいいね。今日は髪くくってるんだ」
ティエリアの髪を見て、アレルヤが微笑む。
ティエリアは、くくられた髪に手をやった。

リン。
かわいい音をたてて、鈴がなる。

「こら刹那。ちゃんと朝はおはようだろ!」
ロックオンが、一向に挨拶のしてこない刹那に説教をはじめる。
それにめんどくさそうになって、刹那は口を開く。
「おはよう、アレルヤ、ティエリア、それからジジくさいロックオン」
スパーン。
軽快な音とともに、刹那の頭がはたかれた。
「何をする!ちゃんと挨拶しただろうが」
「ジジくさいは余計だ!」
「あははは、ロックオン、早くトレイもってきて席につきなよ」
「ああ、すまね」

ティエリアはすでにトレイをテーブルにおき、いつものようにコップにホワイトメロンソーダを注いでいた。
刹那の隣に座ったかと思うと、動かなくなる。
「どうしたの、ティエリア?」
「寝てるな」
刹那が、見もせずにそう確信した。
低血圧なティエリアは、よく朝食中まで寝てしまう。

「あーもうティエリア、起きろ」
ロックオンに揺り起こされて、ティエリアが石榴の瞳を開く。
「ロックオン。僕はもうだめだ・・・・・・ZZZZZ」
「寝るなっつーの。ホワイトメロンソーダ全部飲むぞ?」
その言葉に、カッとティエリアの瞳が見開かれた。
「人のものを奪うなんて、意地汚いです」
「だったら起きた起きた」
「・・・・・・ZZZ」
「だから寝るな!」
「ふぁい」

小さく欠伸を一つ。
それから大きく伸びをして、ティエリアもロックオンと同じように食事をはじめた。