ホワイトラヴァーズ「ティエリア」







四人でバーチャル装置を使い、装置を連結させて仮想空間に舞い降りる。
(AIマリアを今日もご利用くださり、ありがとうございます。ティエリア・アーデを正式なるマスターとして登録しました。今後も、AIマリアをよろしくお願いします)
仮想世界のフィールドで、マリアと名づけられたバーチャル装置に備わっているAIが声を出した。綺麗なソプラノの女性の声だった。バーチャル装置に備わったAIは人としての自我を築いており、世界でも最高のものだ。マリアという名前がぴったりの、美しい銀色の乙女の姿をたまにガンダムマイスターたちの前に現した。
そのまま、フィールドが宇宙に変わる。
戦闘フィールドだ。
ロックオンはデュナメスに乗り、アレルヤはキュリオスに乗り、ティエリアはヴァーチェに乗り、そして刹那はエクシアに乗って、それぞれ連携を組んで、襲い掛かってくる敵を倒していく。
「刹那・F・セイエイ、前に出すぎだ!」
ティエリアからの通信が入る。
刹那の乗ったエクシアが、先陣をきって敵を切り裂いていく。
後ろにいる他のガンダム三機と、かなり距離が開けてしまった。
「刹那・F・セイエイ、単独行動はとるな!バーチャル装置内では、僕の言葉がミス・スメラギの言葉になる。従ってもらおうか」
「了解した」
エクシアが機体を回転させ、あいてしまった距離を縮める。
そのまま、何事もなく戦闘訓練が終わった。
バーチャル装置から現実世界に戻ると、ティエリアが腰に手を当てて刹那にお説教をはじめる。刹那はまじめに聞いていた。
「なんだかんだいっても、仲がいいんだよなぁ」
「そうだね」
二人の様子をじっと見ていたロックオンがもらすと、アレルヤが嬉しそうに同意した。
「いい傾向だよ、二人とも」
「ああ、そうだな」
はじめは人形にしか見えなかったティエリアであるが、接していくうちにちゃんとした人間なんだと安心させられた。
アレルヤほどくるくる表情は変えないが、それでも怒ったり、笑ったり、喜んだりする。怒っている時がかなり多いが、それもまた個性だろう。
ティエリアの石榴の瞳がこちら側を向いた。
「アレルヤ・ハプティズムに特に問題はない。ロックオン・ストラトス、あなたは僕を庇うような行動をとりますね。不要ですので、そういった行動は慎んでください。これでも僕も一人のガンダムマイスターだ。戦力として欠けている部分があるとは思えません」
「すまねぇ、つい」
「ついではありません。以後、気をつけてください。僕は人間ではないので、守られることなど不要です」
「ティエリア」
去ろうとしたティエリアの手を、ロックオンが掴んだ。
「何か?」
アレルヤと刹那はすでに自由時間となったので、いってしまった。
「守るから」
「ロックオン・ストラトス。僕は人間ではありません。守るなら、アレルヤ・ハプティズムか刹那・F・セイエイを守ってください」
「守るから」
強く、引き寄せられてティエリアがバランスを崩した。
その体を、ロックオンが受け止める。
「お前さんは人間だ。そして、お前さんを俺が守る」
「守る・・・守る、守られる。守られる欠陥品?いやあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーー!!」
ティエリアの絶叫が、突然白いその喉から溢れた。
「ティエリア!?」
「私は欠陥品ではありません!嫌です、処分しないでください!欠陥品ではありません!処分はいやああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」
騒ぎにかけつけたのは、白衣をきたCBの医師だった。
手には注射器を持っている。
ティエリアは、石榴の瞳で虚空を見上げ、大粒の涙を零しながら錯乱している。
「処分はいやあああああ!!!」
「暴れている、そっちを押さえろ」
「早く注射を!」
暴れるティエリアを無理やりおさえ、血管に注射器の中身が注入される。
すぐに、ティエリアの錯乱はおさまった。
「ロックオン・ストラトス。僕は、処分なんてされませんよね?」
伸ばされる白い細い腕は震えていた。
ロックオンは、言葉を失っていたが、伸ばされる手をしっかりと握り締めた。
「お前さんは人間だ。誰も、お前さんを処分なんてしない」
「そう。良かった・・・」
そのまま、ティエリアは気を失った。
担架が運び込まれてくる。
「精神的にかなり落ち着いていると思っていたが、まだだめか。違う個体を目覚めさせたほうが良かったのかもしれんな。新薬を投与したとたんこれか。欠陥品だ」
医師の言葉に、ロックオンがその医師の首元を掴んで、殴り飛ばした。
「もう一度言ってみやがれ、このおっさん!」
「あ、違う、これは」
強い殺意を漲らせたロックオンに、殴り飛ばされた医師がしまったという顔をしながら、首をふる。
「つい口が滑っただけで。ティエリアは、時折精神的に錯乱するんだ」
他の医師たちが、ロックオンを羽交い絞めした。
「暴力は止めたまえ!」
「ティエリアをどうするつもりだ」
投与されたのは、鎮静剤だろう。それも強力な。
「新薬を投与するモルモットがちょうどほしか、・・・・・あ、やべ」
「ばか、何言うんだ!」
「バカやろー、機密事項をもらすな!!」
医師たちが色めきたつ。
ロックオンは、羽交い絞めにされていたにも関わらず、医師を投げ飛ばした。
そして、懐から拳銃を取り出して、医師たちにつきつける。
「ご、誤解だ!」
「暴力は止めたまえ」

「うっせえぇ!!!」

ロックオンは、銃を天井に向けて発砲した。
そのまま、担架に乗せられたティエリアの体を攫う。
「ティエリアは渡さない。てめぇらみたいな腐った連中に、渡してたまるか!」
「だが、ティエリアは精神的に」
「うるせぇっていってるだろ!それもこれも、てめぇらが投与した新薬とかいうやつのせいじゃないのか!?」
医師たちの顔色が、見る見る青ざめていく。
ロックオンの言葉は当たっていた。
「ティエリアは、俺が保護する。てめぇらは、処分を覚悟するんだな」
その言葉通り、その後医師たちは、ティエリアが秘密を漏らさないのをいいことに、開発途中で副作用の出る危険性のある新薬を複数投与していることがばれて、CBを追放された。もちろん、監獄いきだ。
精密検査を受けたが、新薬の投与による精神的錯乱は見られるものの、健康的に被害はないということで、一応は幕をおろした。
ティエリアは普通の人間とは体の仕組みが違うため、CBで新しい医師が常任することとなった。名を、ドクター・モレノという。後に、トレミーに乗る仲間であった。

ティエリアに関しては、ドクター・モレノとロックオンに任させる形となった。
ロックオンの部屋で、ティエリアは目覚めた。
「私は、処分されたくありません」
「大丈夫だ。ティエリアは処分なんてされない」
「本当に?」
「ああ」
「私は欠陥品じゃない?医師たちがいつも、私のことを欠陥品と言っていたのです」
涙を流しながら、震えている。
あまりにも痛々しいその姿に、ロックオンは強くティエリアを抱きしめた。
「もう、誰もお前をモルモット扱いしないし、欠陥品だなんていわない」
「本当に?新薬投与の実験を受けなくてもいいのですか?」
「そんなもん、もう二度と受けさせねぇ!俺が許さねぇ!新しく決まったドクターはいい奴だ。ティエリアのことをちゃんと任せられる一流の医師だ」
「では、私はもう、体をいじられることもないのですか?」
「あいつら、そんなことまで!」
ロックオンのティエリアを抱きしめる腕に力が入る。
「お前さんは俺が守る。これからずっと守るから。絶対に、守ってみせるから」
「ロックオン」
ティエリアの桜色の唇に唇が重なった。
相手は少年だというのに、止まらなかった。

「あなたになら・・・・・」
「ティエリア?」
ティエリアは着ていた衣服を脱ぎだした。
「おい、そんな真似する必要ないって!」
「いいから、黙ってみていてください」
一糸纏わぬ姿となったティエリアに、ロックオンは驚愕した。
平らではない胸。括れた細い腰。
一目見る限りでも、そのラインは少年のものではない。だからといっても、少女のもというにはあまりにも未熟すぎる。
「これが、僕の秘密。僕は無性の中性体です。男でも、女でもありません」
「ティエリア」
ティエリアは涙を零していた。
「気味悪いですか?」
「いいや。綺麗だよ」
その裸体は、天使のようであった。
ロックオンは、毛布を取り出してティエリアの体を包み込んだ。
「好きだ、ティエリア」
「ロックオン」
迷いのないエメラルドの瞳に見つめられ、ティエリアは涙を溢れさせた。
この人の傍にいたい。
もっと、もっと。
ティエリアは脱いだ衣服を身につける。そのまま、二人は抱き合って眠った。
目があう。
ロックオンが優しくティエリアの頭を撫でた。

「好きです、ロックオン」

人間に恋をしてはいけないとヴェーダが言っていた。
それなのに、僕は人間に恋をしてしまった。
許してください、ヴェーダ。
僕は、人間になりたい。



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