ホワイトラヴァーズ「ペイン」







浮上する意識。
痛みはない。
何も感じない。
ゆっくりと、目を開ける。

ティエリアは、見慣れない天井を見上げて、涙を零した。
あんなにも強く願ったのに、僕は死ねなかったのか。

ティエリアをはじめとする、大破したトレミーの生き残ったクルー全員が、CBの違う機関によって助け出されていた。
主に、補給をメインとした宇宙ステーションで働いているCBメンバーたちに助け出されたクルーは、全員怪我の治療を受け、そして致命傷を負ったティエリアは、その人知をこえた治癒スピードにより、一命をとりとめ普通の人間の何十倍もの速さで怪我は塞がっていった。
ずっと、まるで目覚めることを拒否するかのように、体の傷は癒えてもティエリアは目覚めなかった。
医師たちは首をひねる。
トレミーのCBは、半ば壊滅の解散という形となった。
まだCB構成員が大勢生きている現状では、行方不明となっているアレルヤ、刹那を探してCBは新しく立て直されるだろう。
新しく立て直していく中で、ティエリアという、現在生き残っているガンダムマイスターの存在は欠かせなかった。彼には、CBの中心のリーダーとなって歩んでいく素質がある。

ティエリアは、自嘲気味に笑った。
「ははははは・・・・」
喉から、乾いた笑いが漏れる。
それからのティエリアは、虚ろな目をしていた。
そして、リハビリをして、無気力なまま生きていく。
「なぁ、ティエリア。昔のように、戻ってきてくれよ」
ティエリアの様子が見ていられずに、傷のいえたイアンが、虚ろな眼差しのまましゃべらなくなったティエリアに声をかける。
「ダメか・・・」
ティエリアは心を閉ざしていた。
一番愛しい人を失ったのだ。
愛しい人の元にいくと誓ったのに、いけないでまだ無駄に生にしがみついている。
「なぁ、ティエリア。もう一度生きるんだ。一緒に、生きるんだろう?」
イアンの言葉に、ティエリアが反応した。
涙を零している。
だが、言葉を発することはなかった。

一緒に、生きたかった。
どれほど、望んだだろう。

ホワイトラヴァーズ。
白い恋人たちは、雪に埋葬された。
白く白く、心も体も。
けれど、ティエリアは生きている。
そこからまた新しく、スタートをしていかねばならない。

「はー。やっとか」
イアンが、笑った。
「世話かけちまったな」
「なぁに、再生治療は時間がかかるからな。それよりも、はやくお姫さんのところに行ってやれ。食べることも止めて、今は点滴だけで生きている。このままじゃ、遅かれ早かれまじでくたばるぞ。いっつも虚ろな目をしていて、時折名前を呼んでは泣くんだ。声をかけても反応しない」
イアンと会話していた人物は、ゆっくりと廊下を歩き出す。
そして、ティエリアとネームプレートのかかれた病室に入る。
ティエリアは、歌っていた。

世界は一度終わったのに 私はあなたと出合った
世界は一度終わったのに 私はあなたと出会ってしまった
世界の終焉から あなたは私を連れ出す
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
失われた楽園に あなたは私を連れて行く
ロストチャイルド ロストチャイルド ロストチャイルド
終わりからの始まり あなたと私は歩きだしていく
私の世界は終わったのに あなたはそこから私を連れ去る
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
失われた楽園に あなたは私を連れて行く
あなたの愛がそこにある わたしのためだけの愛がある
世界は一度終わったのに 私はあなたと出合った
世界は一度終わったのに 私はあなたと出会ってしまった
私はもう一度歩きだす あなたと一緒に新しい世界を
あなたに愛されながら 私もあなたを愛する
あなたの愛に包まれながら 私は生きる 歩みだす
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
あなたの愛が 私の楽園 あなたの愛が 私の世界

虚ろな眼差し。
現実世界の何も映していない。
手には点滴の針がささっており、随分とやつれてしまった。
「あなたの痛みを、僕にください。神様、あの人の元へ、僕も連れて行って」
それだけいうと、石榴の瞳を金色にかえて、涙を零す。
「愛しています、ロックオン。あなたが傍にいてくれるなら、僕は何も望まなかったのに」
虚空に向けて、手が伸ばされる。
その手を、白い肌をした手がしっかりと掴んだ。
「・・・・・・・・・・」
ティエリアは反応しなかった。
イアンや医師に、何度もその手を握られた。だが、反応は還ってこなかった。
生きることを止めたティエリア。
手を掴んだ人物は、ティエリアに口付けると、狂おしいくらいに胸にかき抱いた。
「生きろ、ティエリア」
その懐かしい匂いと体温に、ピクリとティエリアの眉が動く。
だが、それだけだ。
「還ってこい、ティエリア」
金色の瞳が、不思議そうにエメラルドの瞳を見上げる。
「あは・・・壊れちゃった」
涙を零して、ティエリアは目の前の幻に抱きついた。
「愛しています、ロックオン。幻でもいいです。僕を一人にしないで」
「愛している、ティエリア。俺は幻なんかじゃない。ちゃんと生きてる。お前を一人にはしない」
「・・・・・・・・・・ロックオン?」
金色の瞳が、ゆっくりと見開かれる。
「ああ、本物だ」
「生きて?」
「ちゃんと、生きている。亡霊じゃない」
「あああああぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!」
ティエリアは絶叫した。
「ロックオン、ロックオン、ロックオン!!」
「ティエリア、ティエリア、ティエリア!!」
狂ったように名を呼びあいながら、抱きしめあう。
「幻じゃないんですか?」
「幻なら、消えてなくなるだろう」
しっかりと、ロックオンの輪郭を確かめる。
右目はちゃんとあった。
「再生治療を受けてて、ずっと意識不明だったんだ。迎えにくるのが遅くなってすまなかった」
「愛しています、愛しています、愛しています!もう、僕を一人にしないで下さい!」
「悪かった。お前を捨てて死のうとした俺を許してくれ」
「あなたの痛みを、僕に下さい」
ロックオンが、誓いの証のようにティエリアの唇に深く唇を重ねる。
「ロストエデンには連れていけないけど、お前と一緒に俺は歩く」
「ロックオン!!」
そのまま二人は、体を重ねた。

「ロストエデンの唄、歌ってくれないか」
「はい」

世界は一度終わったのに 私はあなたと出合った
世界は一度終わったのに 私はあなたと出会ってしまった
世界の終焉から あなたは私を連れ出す
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
失われた楽園に あなたは私を連れて行く
ロストチャイルド ロストチャイルド ロストチャイルド
終わりからの始まり あなたと私は歩きだしていく
私の世界は終わったのに あなたはそこから私を連れ去る
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
失われた楽園に あなたは私を連れて行く
あなたの愛がそこにある わたしのためだけの愛がある
世界は一度終わったのに 私はあなたと出合った
世界は一度終わったのに 私はあなたと出会ってしまった
私はもう一度歩きだす あなたと一緒に新しい世界を
あなたに愛されながら 私もあなたを愛する
あなたの愛に包まれながら 私は生きる 歩みだす
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
あなたの愛が 私の楽園 あなたの愛が 私の世界

ティエリアの綺麗な歌声が、響く。
世界は一度終わった。
ティエリアの世界は一度終わった。
そこから、ロックオンがティエリアを連れ去っていく。
ロストエデンを探すように、あてはないけれど。
ロックオンの愛に包まれながら、ティエリア生きる。歩きだす。
ロックオンの愛が、ティエリアの楽園。ロックオンの愛が、ティエリアの世界。

「愛しています。ロックオン」
「愛している、ティエリア」
抱きしめあいながら、ティエリアの虚ろだった瞳に光が戻っていく。
生きるという意志を刻んだ瞳に。
「あなたと一緒に、僕は歩みます」
「俺はどこまでも、ティエリアの傍にいる」
二人は、歩き出す。
永遠の愛を誓いあいながら。
二人、一緒に並んで、手を握りあいながら。

ホワイトラヴァーズ。
白い恋人たちよ。
白く白く溶けていく。
愛という感情に。
翼はもう白い雫となってしまってティエリアの背中にはない。
無性の天使。
白く白く、雪に埋葬されたのはなくなってしまったティエリアの翼。
二人は雪に埋葬されることなく、しっかりと白く白く染められながらも、歩きだす。
ホワイトラヴァーズ。
白い恋人たちよ。
永遠の愛を、あなたたち二人に。


               ホワイトラヴァーズ The End
                                          Presented by Masaya Touha
                                         白く白く、どこまでも白く溶けて。
               世界は一度終わった。またそこから歩んでいく。
               誰よりも愛しい人と一緒に。ずっとずっと。
               あなたの痛みは、僕のいたみ。
               僕の痛みは、あなたの痛み。
                ペイン。見えない傷跡。
               人を愛した天使に刻まれたペイン。
               天使を愛した人間に刻まれたペイン。
               二人は、見えない傷跡を刻みながら生きていくのだ。

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二日に分けて書いたけどまぁハッピーエンドで。
そのままロックオン死なせたまま切ない終わりでも良かったんですけど。
ティエリアが立ち直る方法が見つかりませんでした。
生還小説は書かないとかいっておきながら、まぁパロなのでたまには良いかと。
砂糖のように甘いロクティエ長編。
うちのロクティエは、読者の方いわく切ないのだそうです。
切ないくらいに愛し合っててください。
ところで、毎日のように長編を打っている自分がおかしい。人はこうまで、執筆できるものなのだなぁと思いました。
中盤はまぁ、それなりに適当に書きました。
生きることを止めたティエリアを救いにくるロックオンと、はじめての出会いというエピローグとプロローグは決めていました。
夢の中だけで生きろといわれても、うちの弱いティエリアじゃむりですね。
鎮静剤いるくらい錯乱するし。精神的にかなり弱いようだ。
痛い愛を、噛み締めあう。なんかもう空っぽ・・・・。


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