ユダ−背徳の罪−「ロックオンという名の人形」







「ここ・・・・・なんだ、ここ。懐かしい」
ロックオンは、ティエリアを置いて研究所に来ていた。
たくさん並んだカプセル。
人工の培養液には、何も浸かっていない。
「なんでだろう。ここ、凄い懐かしい」
ズキン。
「くそ、また・・・・!」
酷い頭の痛みに、その場に蹲る。
そして、一つのカプセルの前にきた。
そこは空っぽ。
人工の羊水はもうない。

ここから、外を眺めていたんだ。
そうだ。
ここから、ずっと外を眺めていたんだ。
時折、目を開けては。
じっと、いつも石榴の瞳が自分を見つめていた。

お も い だ し た

そ う だ 俺 は       
        こ こ で 生 ま れ た ん だ

俺は、ロックオン・ストラトスじゃない。
彼の、身代わりだ。
俺は、名前もないただの人形。


「ロックオン・・・・・」
「ティエリア・・・・・・・」
涙を零したティエリアが、研究所に来ていた。
「思い出してしまったのですか」
「ああ、全部思い出した」
「僕は、あなたを」
「俺は、お前を残して死んだ。俺は、ロックオン・ストラトスじゃない」
「違います!あなたはロックオン・ストラトスだ!」
「もうたくさんだ!!!」
ロックオンは首を振る。
「俺は、お前にとって都合のいい人形だったってわけだな」
「違います!僕はあなたを愛しています!」
「お前が愛しているのは、本物のロックオン・ストラトスだろう!?」
「いいえ!あなたはロックオン・ストラトスです!」
「違う!俺はロックオン・ストラトスの名前と姿を持った替え玉だ!」
「いいえ!あなたはロックオンだ!」
ティエリアは泣き崩れた。
ぐっと、ロックオンの手が伸びて、ティエリアの細い首に手がかかる。
「僕を・・・・殺してください」
ティエリアは泣きながら微笑んでいた。
「あなたを愛しています。あなたに殺されるなら本望だ」
ロックオンの顔が歪む。
秀麗か顔が、悲しそうに。
力が篭る。
カクンと、ティエリアの体から力が抜けた。
「さぁ・・・早く、殺してください。愛しています」
銀色の涙を溢れさせながら、ティエリアは手を伸ばした。
そっと、ロックオンの涙を脱う。
「僕は背徳の罪を犯しました。あなたを生み出した。罰は受けます。僕を殺してください」
ロックオンの手にが、ぐっと力をこめる。
「あなたを愛しているから」

ドサリ。

ロックオンは、ティエリアを離した。
ティエリアは、力なくその場に倒れる。
「どうして・・・?」
がりっと、綺麗な桜色の爪が床を引っ掻く。
「どうして、殺してくれないのですか」
「お前を殺しなんになるんだ!俺は一人残されるのか!」
「それは・・・・・」
抱き起こされて、ティエリアは言葉を区切った。
「こんなにも、愛しているんだ!狂ってしまいそうなくらいに!!」
ぎゅっと、ティエリアを抱き寄せる。
「ロックオン」
「身代わりでもなんでもいい。お前を愛してるんだ!!」
ロックオンは泣いた。
ティエリアも泣いた。
二人は、嗚咽をもらし、泣きながら抱きしめあった。
そして、唇を重ねる。
「罰は、俺も受ける」
「ロックオン・・・・」
「だから、一緒に生きよう。俺は、誰でもない、ロックオン・ストラトスだ。ティエリアが愛してくれた、ロックオン・ストラトスだ」
「ロックオン!!」
ティエリアは石榴の瞳から涙をとめどなく溢れさせた。
二人は、誓い合うように何度もキスを交わした。




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