カナリア「カナリアの本当の名前」







「ロックオン」
それからというもの、ティエリアはロックオンの名前を口にするようになった。
いつでも、ロックオンの傍にいた。
ロックオンがミッションでいなくなると、発作をおこした。
「いや、カナリアも連れて行って!」
「だめだ、ちゃんと帰ってくるから待っててくれ」
「いや、いや!」
首を振って、泣きじゃくる。
何度も鎮静剤を打つはめになった。
今回もそうなるのかと、ロックオンは心の中で暗澹となった。
「必ず・・・・帰ってきてくれる?」
「ああ、必ず帰ってくる。愛してるよ、ティエリア」
「カナリア・・・・待ってる。カナリア、あなたを待ってる」
「ティエリア!」
思わず痛いほどに抱きしめていた。
いつもなら、こんな抱き方をすると嫌がって逃げ出すのに、今回は逃げない。
おずおずと、背中に腕を回してくるティエリア。
「カナリア、歌うから。あなたのために、歌うから。カナリアの唄聞いて?」
「ああ、聞くとも」

ティエリアは歌いだす。

「ららら〜らら〜らら〜〜〜・・・・・・・・」
歌声が途中で止まった。
「どうした?」

「カナリアの新しい唄、聞いて?」

世界は一度終わったのに 私はあなたと出合った
世界は一度終わったのに 私はあなたと出会ってしまった
世界の終焉から あなたは私を連れ出す
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
失われた楽園に あなたは私を連れて行く
ロストチャイルド ロストチャイルド ロストチャイルド
終わりからの始まり あなたと私は歩きだしていく
私の世界は終わったのに あなたはそこから私を連れ去る
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
失われた楽園に あなたは私を連れて行く
あなたの愛がそこにある わたしのためだけの愛がある
世界は一度終わったのに 私はあなたと出合った
世界は一度終わったのに 私はあなたと出会ってしまった
私はもう一度歩きだす あなたと一緒に新しい世界を
あなたに愛されながら 私もあなたを愛する
あなたの愛に包まれながら 私は生きる 歩みだす
ロストエデン ロストエデン ロストエデン
あなたの愛が 私の楽園 あなたの愛が 私の世界

「ティエリア?ロストエデンの唄、覚えているのか?」
「この唄、ロストエデンっていうの?」
ティエリアが首を傾げる。
「そうだ。ロストエデンっていうんだ」
「綺麗な題名」
「ティエリアが、好きでよく歌っていた」
「ねぇ。カナリアのこと、どうしてティエリアって呼ぶの?カナリアはカナリアなのに」
「違う。お前の名前はティエリアだ」
「カナリアだよ」
クスクスと、ティエリアは笑う。
「愛している、ティエリア」
「愛ってなぁに?」
「愛っていうのはな、心があったかくなるものだ」
「心が?」
「そう。切なくなったり、痛くなったりもする」
「カナリア、痛いのは嫌・・・・」
「大丈夫。もう、誰もティエリアを傷つける者はここにはいないから」
抱きしめて、唇を重ねる。
「お客さんは、どうしてカナリアを抱かないの?」
「俺は客じゃないから、ティエリアを抱かない。愛しているから、愛があってお互いが一つになりたいって時じゃないと、ティエリアを抱かない」
「カナリアには分からない・・・・。カナリアは、歌って、抱かれる人形なのに」
ロックオンが強く首を振った。
「違う、お前は抱かれる人形なんかじゃない。人間だ」
「僕はカナリアだよ?鳥なの。天使なの。翼はないの」
そっと、服を脱ぐ。止めるロックオンに構わず、背中を見せる。
「ほら、カナリアが天使の証拠。翼の紋章があるでしょう?」
「ああ、あるな」
懐かしく、愛しそうにロックオンは、肩甲骨に彫られたGN粒子の光を淡く放つ天使の翼をイメージした紋章をなで、そこに口付ける。

「シリアルNO8・・・・カナリアの、本当の名前」
「ティエリア?」

少しづつ、少しづつ。
ティエリアは、人間に戻っていく。
昔の記憶を、時折思い出して口にする。
少しづつ、少しづつ。

ロックオンとティエリアは、二人三脚で生きる。


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