ジャボテンダーさんとお風呂







「ロックオン!大変なのです!」
「どうした?」
ティエリアが、ロックオンの部屋に入ってくるなり、ぶんと、思い切りジャボテンダー抱き枕をロックオンに向かってなげる。
ボスっといい音とたてて、それを顔面でキャッチするロックオン。
「おいおい、また怪我するぞ、ジャボテンダー」
落ちたジャボテンダー抱き枕を拾い上げるロックオン。
「ジャボテンダーさんに・・・・」
「どうした?」

「ジャボテンダーさんにカレーをこぼしてしまいました!」

確かにジャボテンダーはカレーくさかった。
カレーの匂いがプンプンする。
「ジャボテンダーさんはカレーを食べませんでした」
「おいおい、まさか食わそうとしたのか?」
えぐえぐ。
涙を浮かべたティエリアは、首を振る。
「抱きしめて食べていたら、普通に零してしまいました」
「おいおい。食事の時くらい、ジャボテンダー置いていけよ」
「嫌です!僕の親友なんです、彼女」
「彼女?」
「ジャボテンダーさんは女の子なのだと思います」
初耳だ。
「針万本な攻撃をしてくるところとか、女の子なので恥らっている証拠です」
そうなのか?
ただたんに戦闘で攻撃してくるだけじゃないか。
とは思ったが、口には出さない。

「どうしましょう」
おろおろ。おろおろ。
ティエリアはかわいいが、このままなのもかわいそうだ。
「お兄さんに任せない。ジャボテンダー、洗ってやるよ」
「でも、ランドリーは狭すぎてジャボテンダーさんが入りません」
「なーに、風呂場で手洗いすりゃいいのさ。そうだな、ついでだから俺も風呂に入るか」
ロックオンは、口笛を吹きながら、浴槽に湯をためる。
そして、湯がはりおわり、ロックオンは脱衣所にいって扉を閉め、服を脱いで全裸になると、ジャボテンダーと一緒にお風呂に入った。
石鹸で、丁寧にカレーを零したところを手もみで洗っていくと、カレーのしみはとれた。
「いい湯加減だろ、ジャボテンダー」
ジャボテンダーを、そのまま湯の中にいれる。
ふと、風呂場の外に影があった。
「ティエリア?」

ガラリ。
堂々と、裸でティエリアが入ってくる。
「ちょ、お前!」
「ロックオンだけ、ジャボテンダーさんとお風呂に入るなんてずるいです!僕も入ります!」
頭にタオルを乗せて、ティエリアは狭い浴槽に入ってくる。
ルルル〜〜。
濡れて重くなったジャボテンダーを湯の中に沈めながらティエリアは歌いだす。
ロックオンはというと、見慣れてしまったというわけでもない、ティエリアの幼い体のラインにどぎまぎして、顔を紅くしている。
無性とはいうものの、女の子に近い体のつくりをしているティエリア。
白すぎる肌が無防備に目の前にさらされている。
無防備すぎる。
いくら恋人の前だからって。

ロックオンは、桃の湯の元をいれた。
「わあ。ピンク色!桃の香りがする!」
「特別だぜ?」
ウィンクする。
「ありがとう、ロックオン」
パシャンと湯がはねた。
ロックオンに、浴槽の中で抱きつく。
二人は、一緒に少し狭い浴槽で仲良くお風呂に入る。
「いい湯ですね、ジャボテンダーさん」
「なぁ。ジャボテンダー、窒息してないか?」
湯の中に完全に沈めている。
ティエリアはルルル〜と歌いながら、ロックオンの頭の上にもタオルをのっけた。
「ジャボテンダーさんは、水中呼吸ができます」
いや、できないだろ。
そもそも抱き枕が呼吸するわけないだろ。
いっぱいつっこみたいところは多いが、かわいいのでよしとする。
そのまま、ティエリアの髪と体を洗ってあげた。
ティエリアはくすぐったそうだった。

ロックオンは紳士なので、恋人が無防備に裸だからと、いきなり体の関係を迫ることはない。
お互いがそんな雰囲気になったときにしか、そういう大人なことはしない。

「ロックオンの体、ジャボテンダーさんが洗います」
そのまま、ジャボテンダーにボディーシャンプーをつけて、ジャボテンダーでロックオンは体を洗われた。抱き枕に体を洗われる男、現在24歳、白人、本名ニール・ディランディ。コードネームはロックオン・ストラトス。ガンダムマイスターの一人だ。
果てしなくおかしな光景であった。
最期に、また湯につかる。
ジャボテンダーが吸ってしまった水分を、しぼっていると、ティエリアがうめいた。
「うううううう、苦しいです、ロックオン」
「どうした!どこか具合でも悪いのか!?」
あせるロックオン。
「いいえ」
けろり。
「ジャボテンダーさんの心境を、代わりに言ってみたのです」
「そうか」
もう慣れてしまったので、驚きはしない。
不思議生物なティエリアは、今日もおもしろおかしい。
そのまま、風呂からあがってペタペタ裸で歩き回るティエリアを、ロックオンが慌てて止めた。
廊下にそのままで出ようとしたからだ。
本当に、どこまで無防備なんだ。
常識知らずというか、なんというのか。
ロックオンはバスタオルでティエリアの体をふき、タオルで髪を拭く。
「下着が、ないんです。持ってくるの忘れてしまいました」
「だから、裸で外に出ようとしたのか?」
「はい」
「だからって、そんなかっこでうろうろしちゃだめだ。分かったな?」
「分かりました」
「待ってろ。おれが、下着とってきてやるから」
「はい」
ティエリアは、バスタオルを胸に巻いて、じっと待っていた。

やがて、ロックオンがティエリアの下着をとってくる。
ボクサーパンツをティエリアは好んではいている。
それを渡す。
「胸のベストは?」
「もう、後は寝るだけだろ?つける必要ないだろ?」
「そうですね」
ぶかぶかなロックオンのシャツを羽織って、ごそごそとベッドに潜りこむ。
「おいおい、自分の部屋で寝ないのか?」
「今日は、ロックオンと寝たいです。ジャボテンダーさんは干されてますし・・・」
頬を染めるティエリア。
あーもう。
かわいいな、こいつ。
ロックオンは、ぱじゃまを着ると、シャツしか着ていないティエリアの横にもぐりこむ。
「な、なぁ、ティエリア、その、あたってるんだけど」
「はい?」
腕にぴったりとしがみつかれて、僅かな胸の膨らみが腕にあたっている。
「あーもう!」
ロックオンは、ティエリアに優しくキスをすると、毛布でぐるぐるにくるみこんだ。
「よし、これでOKだ」
「わーい簀巻きですね、これ」
「いや、違うから」
簀巻きだとしても、何故に喜ぶ?

毛布でぐるぐるになるながらも、ロックオンに抱きつく。
そんなティエリアを抱きしめながら、ロックオンとティエリアは、心地よい眠りに幸せそうに誘われていくのであった。