君の友達は誰?









ロックオンは、雑誌を読んでいた。
そして、そこに友達特集!という記事を見つけて読んでいた。
「待てよ?俺らに友達っているのか?」
ロックオンが、雑誌を片手に思案する。
世界に武力介入した存在であるCBは、他の機関とは孤立した存在である。同じように、ガンダムマイスターである4人も、トレミーの クルー以外に接することは少ない。
ロックオンは心配になってきた。はたして、刹那、ティエリア、アレルヤに友達はいるのだろうか?
ちゃんと、ガンダムマイスター同士で友情を築けているのだろうか?
アレルヤはまだ協調性があるからいいとして、問題は刹那とティエリアだ。あの年少組二人は、一筋縄じゃいかない。協調性のきの字もないんじゃないだろうか。
そして、ロックオンの、突撃あなたに友達はいる?作戦は開始されたのであった。

最初のターゲットは、アレルヤだった。
協調性があり、尚且つ誰にでも優しいアレルヤは、トレミーの中でも好かれている。
ならば、友達だっているはずだ。
アレルヤは、イアンと会話していた。
ガンダムキュリオスの調整について話し合っているらしかった。
「あ、ロックオン。どうしたの?君もガンダムの調整の話でも聞きに来たの?」
アレルヤが、雑誌を片手に持ったロックオンに気づいて、声をかけた。
ロックオンは、おほんと咳払いをした後、唐突に切り出した。
「なぁ、アレルヤ。お前の友達って誰だ?」
「何いいだすのさ」
「いいからいいから。友達って思うやつ、ずばり誰?」
ロックオンは、ここで自分の名前が出るのはないだろうかと思った。年齢は4つ離れていたが、アレルヤは刹那やティエリアと違って素直になついてくれる。まぁ、刹那とティエリアも不器用ではあるが、懐いていないこともないが、 アレルヤのようにまだ気軽に話せないでいる。
武力介入がはじまったというのに、2年前からその関係はあまり変わっていないように思えた。
「僕の友達。そうだねぇ、しいていうならハレルヤかな?」
「ちょっと待てー!ハレルヤは、お前の別人格だろうが!」
「そうだけど、友達っていわれて思いつく人物がいなくて。…あ!」
ロックオンは、次こそ自分の名前が出てくると期待した。だが、アレルヤはその期待をあっさりと簡単に打ち砕いてくれた。
「スメラギさんかな?ほら、僕この前誕生日迎えたでしょ。それでお酒が飲めるようになって、今じゃ飲み友達かな」
「そうか。アレルヤの友達はミス・スメラギっと」
ロックオンははらはらと涙を零しながら、メモにアレルヤの友達はハレルヤと飲み友達でミス・スメラギとかきこんだ。
「どうしたのさ、ロックオン」
「なんでもないんだ。邪魔して悪かったな。じゃあな!」
ロックオンは、マッハで去っていった。

次のターゲットは、筋トレをしていた刹那であった。
「おい、刹那。お前の友達って誰だ?」
刹那は、ロックオンを見た後、黙って筋トレを開始した。
「おいおい無視すんな!お兄さん悲しくなるだろうがっ!」
「おっさんの間違いじゃないのか」
刹那の言葉に、ロックオンは心臓に刃がいくつもグサリと刺さった。
「せ、刹那。いいか、24はまだおっさんじゃない。十分に若いんだ」
刹那の筋トレを無理やり中断させて、お説教する。
それに刹那がうんざりとした表情を浮かべた。
「とにかくだ。お前の友達は誰だ?やっぱティエリアか?」
そこで、ロックオンは密かに自分の名前は出ないものかと期待した。刹那とは8つも離れているが、友人といってくれればとても嬉しい。
少し無理があるかもしれないが、どうだろうか。それに出た刹那の答えはこうだった。
「俺の友達はエクシアだ」
「待て待て待てーー!!エクシアはガンダムだろう!人間ですらねぇじゃねぇか!」
「別に、問題はないだろう。俺がガンダムだ」
「刹那、いいか、その俺がガンダムだって思考は捨てなさい」
「何故だ」
「何故でも、不自然でしょうが!」
「別に、不自然だろうが問題はない。俺の友達はエクシアで、俺はガンダムだ」
取り留めのない会話を打ち切って、ロックオンはため息をついた。
いけない、刹那はまだ16の子供なのだ。子供らしい発想だと思えばいいのだ。
「俺、もういくわ」
ロックオンは、メモに刹那の友達はエクシアで俺はガンダムと書き込んだ。

最後のターゲットは、ティエリアだった。
ティエリアは、食堂にいた。
持ち運び可能なパソコンを片手に、何かの書類を纏めているらしかった。
「なぁ、ティエリア。ずばり、お前の友達って誰?」
ロックオンは、ティエリアの姿をみつけるとさっそく切り出した。
それに、ティエリアが眼鏡をかけ直した。そして、石榴の瞳でロックオンを一瞥すると、作業に戻った。
「ティエリアああああ!お前も無視かああああ!!」
「騒がしいですね。一体なんなんですか」
ティエリアが、作業の手を止めて煩そうにロックオンを睨みあげた。
きつい美貌が、そうするとよけい鋭く見えた。
「美人台無しだから!頼むから睨まないでくれ。いいから、お前が友達って思うやつ誰?」
ロックオンは、めげずに問いかける。
すると、ティエリアは顎に手をあてた。そして、うーんと唸る。
「おいおい、迷うとこなのか」
ロックオンは、ひょっとしてティエリアの口から友達はロックオンかもしれないと飛び出さないだろうかと思った。
だが無駄だった。
「友達はいません」
「なんて寂しい考えなんだ!一人くらい、思い浮かぶやついるだろう!刹那とか俺とかアレルヤとか!」
「どうして、そこであなたの名前が出るんですか。刹那は年が近いので可能性はあるとして、まぁアレルヤもあの性格から友人にするにはよい逸材であると考えても、あなたの名前が 出てくることに意味がありません。あなたは、僕よりも7つは年が離れているはずだ。そんな相手を友人に選ぶような真似はしません。自惚れてるんですか?」
グサグサグサ!
ティエリアの言葉がロックオンに突き刺さった。
もともときつい性格だけに、言葉も痛かった。
「ティエリア〜」
「泣かないでください。鬱陶しいですね」
「友達誰だよ〜」
「友達…ヴェーダですね」
「ヴェーダはコンピューターだろうがっ!!」
「なら、ヴァーチェですね」
「ヴァーチェはガンダムだ!そこで刹那と同じ思考に辿りつくなんて、ティエリアもお子様だな」
その言葉がいけなかった。
頬に朱を混じらせたティエリアは、怒ってロックオンを食堂から追い出した。
ロックオンは、プンプン怒るティエリアに追い立てられながら、メモに、ティエリアの友達はヴェーダとヴァーチェと書き込んだ。

そして、忘れていた自分の出番を思い出す。
「うーん。友達か。そうだなぁ、ぱっと思いつくのはハロだな!」
シーン。
ロックオンは、明るく言ってはみたものの、その内容の絶望さに、持っていた雑誌を床に投げ捨てた。
「ハロ人間じゃねぇじゃねーか!AIだよ!俺にも友達いねーのか!」
他に思い出す相手がみつからない。ガンダムマイスターで一番年の近いアレルヤはどうだと思ったが、刹那やティエリアと同じように、弟のような感覚がある。友達ではないだろう。
そして、ロックオンは、メモに泣きながら、俺の友達はハロでAIと書き込んだ。

その日一日のロックオンの奇怪な行動は、刹那、ティエリア、アレルヤを巻き込んで、ロックオンの涙で終わったという。