ガーネットが、きっと守ってくれる







「なぁ、ハロ。最近のティエリアのかわいさ、犯罪だと思わね?」
相棒の橙色のAIハロを抱きしめながら、そっとロックオンが尋ねる。
「ロックオン、ハンザイシャ、ロックオン、ハンザイシャ。ロリコン、ロリコン」
「ハロ〜〜」

ハロがピョンピョン跳ね回る。
それを追いかけるロックオン。

「楽しそうですね。混ぜてください。ハロさん、ハロさん。ご機嫌いかが?」
ロックはかかっていたのに、暗号を入力してティエリアが部屋の中に入ってきた。
ハロが、ピョンピョン跳ね回る。

「ハロさん。僕の相棒になりませんか?」
「ハロ、ロックオンガイイ、ロックオンガイイ」
「そう言わないで」

あどけない表情で、ティエリアは誘惑する。
これが大人の、特に男であればノックアウトしてしまいそうな、そんな艶やかさが一緒になっている。

これもう、犯罪だろ?
あー。
あーもう。

「ロックオン?」
ティエリアを抱きしめるロックオン。

「ティエリア。食べないからさ、そのなんていうか・・・・・」

ティエリアは、氷の花のように微笑む。
「あなたは、紳士ですから」
「そうでも、ないんだけどな」
いろいろと、ロックオンも大変なのだ。
我慢している。いろいろと。

「これ以上、俺のライバル、増やさないでくれるかな?」
「ハロさんが、ライバルになるのですか?」
不思議そうに首を傾げる。

ハロは、ロックオンになついているが、ティエリアにも懐いている。
「ティエリア、カッコイイ、ティエリア、カッコイイ」

「ハロさん・・・」
ティエリアは胸をんきゅんとさせて、胸の前で手を握り締めてきらきら輝く瞳でハロを見つめている。
しきりに、かわいいのではなくかっこいいのだと繰り返すティエリアを、ハロは記憶していた。
「そうです、僕はカッコイイのです」

表情はとても乙女だったけれど。

カラン。

「あ、いけない」
ポケットから、いつも大事にしまっている、ロックオンが誕生日の日にくれたガーネットが転がりでた。それを大切そうに拾い上げるティエリア。
「それ、大事にしてくれてんだな」

「ダイジ、ダイジ」
ハロがぴょんぴょん跳ねる。
「あなたにもらった、大切なものですから・・・・」
そっと、抱き寄せられる。

「きっと、俺がいなくなっても、それがティエリアを守ってくれる」
ロックオンの言葉に、ティエリアは怯えて瞳から涙を浮かべた。
「いなくなるだなんて、そんな恐ろしいこと言わないで下さい」
「ああ、そうだな。ごめん」

頭を撫でる。
この愛しい存在を置いていくだなんて、そんな酷いことどうすればできるだろうか。
考えつきもしない。
でも、万が一の時もある。

「ティエリア、マモル、ティエリア、マモル」
「ハロさん・・・・ステキ」
ハロに見ほれるティエリア。どこまでも乙女だ。
「俺も、守るから」
「知っています」

さも当たり前のように答えるティエリアに、ロックオンが苦笑する。



「あなたの分まで・・・・・このガーネットが、きっと守ってくれる」
さっき虚空に向かって手を伸ばした時に、大切にいつも持っていたガーネットが地面に落ちてしまった。昔はよく、ロックオンが「なくすなよ」って困っていた。

「僕は・・・・強くなります」
ガーネットを、胸に握り締める。
そして、窓を向いていた瞳を、数回瞬かせる。

ほら、歩いていこう。
あの人と、今でも一緒に、二人三脚で。

愛している。
この想いは変わらないから。

歩いていく。

ガーネットが、きらりと紅い涙の雫を零した。