「ティエリア?」 室内を照らす柔らかな光に、ロックオンは目を細める。 ティエリアは本、というものを好む。データ上でのパソコンを使っての読書もするが、普通に本という懐かしい旧世代の感覚は、今でも薄れることはない。 それは、人が始めて紙とペンを持ったときから始まった物語。 今ではむしろ本のほうが贅沢品だ。それでも、ティエリアに限らず、地上、コロニーに暮らす人々は本や雑誌として手にとれる形となったほうを好む。ロックオンもその一人だ。 「なんの本読んでたんだ?」 ティエリアは、頭の上に本と眼鏡を置いて、ソファベッドに横になっている。 見ているこちらまで幸せになってくるような寝顔をする。 ティエリアが読んでいたであろう本を拝借するロックオン。 「遺伝子工学の未来と可能性・・・・だめだ、タイトルから頭が痛くなってきた」 ティエリアのIQは180をこえている。 その頭脳にあった難しい専門書であった。 「幸せそうな顔してるなぁ」 ロックオンは、ベッドから毛布を取り出して、そっとティエリアにかける。 俺だけの眠り姫。 ロックオンは微笑んだ。 ティエリアは、すやすやと健やかに眠っている。 そうしているうちに、ソファベッドに寄りかかってロックオンも寝てしまった。 「あれ?」 気づくと、ベッドに寝かされて毛布を被せられていた。 傍には、ティエリアの寝顔。 ベッドに寄りかかるように、静かに眠っている。 ロックオンは、もう一度眠るために目を瞑るのだった。 「眠り姫といっしょに、ナイトも眠ってしまう、平和な日」 また、すぐに眠りに攫われていく。 静かな、愛の螺旋の日々。 |