私は幸せ







「忘れな草の髪飾り・・・うふふ」
アニューは機嫌がとてもよかった。
もらいものとはいえ、ライルから宝石をプレゼントされた。
それも、最高級のブルーサファイアをあしらった髪飾りだ。アニューはそれをつけて、鏡を見る。

「アニュー・・・まだか?」
「待って。もう少しよ」
急いでブラシで髪をといて、薄く化粧をして、鏡の中をのぞく。
「うん、ばっちり」

「おまたせ、ライル」
「今日も綺麗だよ、アニュー」
「ありがとう、ライル」

二人並んで食堂にいく。
アニューを朝に迎えにいくのは、もうライルの日課になってしまった。

「アニュー」
「あら、刹那?」
「最近、ティエリアの様子がおかしいんだ。アニューと、寝言でうなされて・・・何か、心当たりがあるようなことはないだろうか?」
「いいえ?もしかして、この髪飾りのせいかしら」
アニューが、ブルーサファイアの髪飾りを撫でる。
「いや、それはないと思う。ティエリアはアニューを気に入っているからな。ティエリアが他者に対して、ここまで心を開くのは珍しいんだ」
「そうなの?私、ティエリアとよくおしゃべりをするわ。でも・・・・そうね、哀しそうな目をしていたわ」
「心当たりがないのならいい・・・・ジャマをしてすまなかった」

刹那は、まだ眠っているティエリアを起こしにいくために、食堂を出る。

どうしてだろう。
心の中に、ぽっかりと空洞ができた気がする。

こんなにも満たされているのに。
「愛しているわ、ライル」
「いきなりどうした?」
優しく微笑む、エメラルドの瞳。

いつも自分を見てくれる。優しく包み込んでくれる。
愛されていると、自分でも思う。

何が、足りないというのだろうか。

まるで、この感情がすべて偽者みたいな・・・そんな・・・自分が人形のような、そんな感覚がする。
アニューは首を振って、ばかな考えを払拭する。

トレイを手に、ライルと向かい合って朝食をとる。

ほら、こんなにも見たされている。
彼を見るだけで、心がぽかぽかする。

私は、幸せ。