乙女は怖い







「うーん・・・・」
ティエリアは、いつもの貧血に襲われていた。
食事はちゃんととったし、睡眠もきちんととった。
「刹那・・・・」
ふと、脳量子波がやってくる。
(やぁ、ティエリア元気にしてる?)
(元気じゃない。今にも貧血で倒れそうだ)
(なんだって。待ってて、今すぐ助けにいくから)
(いや、地上と宇宙じゃ無理があるから)
(愛があればどんな弊害も無意味さ!小型宇宙船用意してそっちにいくから)
(本気で止めてくれ。今、イノベイターに対して皆殺気だっている)
(ああ、アニューの件か・・・あれ、は)
プツリと、リジェネの声が途絶える。
リジェネにも、納得がいかなかったのだろう。
(僕はアニューが好きだった)
リジェネにそういうと、反応が返ってきた。
(奇遇だね。僕も、アニューが好きだった。人間臭いところがあって・・・・君たちのシップにスパイとして乗ると聞いたとき、反対したんだ。でも、リボンズの意志には逆らえない)
(僕は、怖い。いつか、僕もアニューのように意志を操られるのではないかと)
(大丈夫だよ。君は自我を強く持っている・・・・・と、リボンズがきた。またね、ティエリア)

リジェネの声が遠のくのと一緒に、意識が遠のいていく。
「こんなことで・・・・」
ここ数日、ライルに精神連結をさせたり、少し精神的に無理をしすぎた反動だろう。
「アーデさん、部屋まで運びますね」
「ミレ・・・イナ?」
靄のかかった視界に移ったのは、金髪のツインテールの少女と、明るい声。

「どっこいせ、ですう」
倒れたティエリアを、お姫様抱っこで軽々と抱き上げるミレイナ。
隠れ力自慢だ。
そのまま廊下を歩いていくと、ブリーフィングルームから出てきた刹那と出会う。
「あ、セイエイさん」
「俺が運ぶ」
「だめですう。私が運ぶのですう」

「だめだ」
刹那の真紅の瞳に見つめられ、ミレイナはしぶしぶ腕の中のティエリアを刹那に渡す。
「点滴を受けさせる。このまま医療室に運ぶ。貧血だろうが・・・症状は重いな」
診察をしたわけでもないのに、ティエリアの症状をすぐに察する刹那。
「セイエイさんは・・・何処までも、アーデさんを愛しているのですね」
「魂の双子、だからな」
軽々とティエリアを抱き上げて、そのまま刹那は宙を蹴る。

ミレイナは思う。
乙女だって、強いんだからと。
「セイエイさんに勝てなくてもいいんです」
ミレイナは小さくなっていく刹那の後姿を見る。
ただ、ティエリアがたまに声をかけてくれるだけで、ミレイナは幸せなのだ。
刹那からティエリアを奪おうとは思わない。

「乙女にはたまらないのですう」
刹那とティエリアの関係が。
ミレイナは隠れ腐女子で同人作家だ。
「ああ、妄想が止まらないのですう。今すぐ部屋に戻って原稿にしなくては!」
ちなみに、ミレイナがかく同人誌はいまやミス・スメラギのサークルにも所属していて、刹那×ティエリアのガンダムOOものがほとんどだった。

乙女は怖い。
とっても。