21話補完小説「金色の瞳」







「刹那」
「ティエリアか。ダブルオーライザーで、グランジェ5に出る。後のことは頼む」
「こっちにこい、刹那」
「?」
手招きされて、刹那はティエリアの細い肢体を抱きこむ。

「やはり・・・か。君は、変わっていくな。人類の進化だ」
「ああ。気づいている」
薄暗い廊下のトレミーで、刹那の真紅の瞳は金色に輝いていた。

「忌まわしいとは思う。だが、その存在はリボンズ・アルマークのようなイノベイターではないのだと信じている」
「すでにあるイノベイターとは、存在が違うだろうな。君は純粋種だ。人から進化していこうとしている。そう、はるか昔、哺乳類だった人類が猿に進化し、人に進化したように。それが、急激に、あわゆる起因が発端となって起こっているだけだ」
「気味が悪くないのか、ティエリアは」
「どうして?僕はもともとイノベイターだ。むしろ、君がイノベイターになってくれるなら、同じ時間を一緒に生きれる・・・・途方もない、生、という時間を」
ティエリアは、刹那に触れるだけのキスをした。

「分からない。俺の今の存在は、寿命までは・・・・」
「それでもいいさ。君と一緒にいられるなら」
「ライルが・・・俺を背後から銃で狙っていたとき、ライルの背後で銃を向けていたな」
「参ったな。君はなんでもお見通しか」
「伊達に戦場を生きてくぐりぬいてきてはいない」
「ライルは、撃つ覚悟があるようで、ない。多分、刹那を撃てないだろうな、一生・・・。そして、もしもライルが君を殺せば、僕がライルを殺す」
「止めてくれ、そんな」
「なぜ。僕は君を愛している。愛している人を殺されれば、残った者は悲しみにくれるか復讐をとるかの二択だ」

ティエリアは、瞳を金色に輝かせた。
同じ金色の瞳が、2対ある。

「金色の瞳。ティエリアの瞳のほうが綺麗だ」
「いいや、刹那のほうが綺麗だ。精悍な顔立ちが美しい」
「ティエリアの女神のような天使のような美しさに、金色の瞳はよく似合っている。神秘的だ」
「褒めても、何も出ないぞ」
「そうだな」

「検討を祈る」
「分かっている。後のことは任せた。リーダーとして指揮をとれるのは、ティエリアしかいない」
「グランジェ5か。遠いな」
「ミス・スメラギの指示だ。仕方ない」
「僕もできることならいきたいが、ダブルオーライザーを欠いてはもしものときに戦力に支障がでる。ライルはまだ不安定だし・・・三機だけでも、なんとか持たせてみせるさ」
「ああ、信じている」

刹那が、ティエリアの瞼に口付ける。
ティエリアが、刹那の瞼に口付ける。

「「金色の瞳も悪くない」」

二人はしばし互いの瞳を見つめあったあと、お互いの任務をこなすために別れた。