世界が終わってもV「本日の実験、失敗」







「あ、美味しい」
おいおい、本当かよ。
これは、悪いのは見た目だけで味は成功というやつか?
くそ、俺も食べればよかった。ティエリアの手料理なんて、本当に滅多にお目にかかれないんだ。しかも成功してる品なんて。
「リジェネ、俺にもくれないか」
「バーカ。誰が君になんてやるか。バーカバーカ」
リジェネは、子供のようにベロベロと舌まで出しておちょくってきた。
く、このクソガキ・・・・。一遍、女装させたろか(ニールもニールで、懲らしめ方がおかしい)

美味しいといわれて、ティエリアはとても嬉しそうだった。
「でも、なんか喉かわくな」
「これでも飲む?」
ティエリアが、ごそごそと取り出したのは、大好きなホワイトメロンソーダの瓶。優しくもあけて、コップについで氷までいれるティエリア。
(く、なんて羨ましい・・・・)
リジェネは上機嫌でそれを受け取る。
「ありがとう。愛してるよ」
受け取ったときに、リジェネはティエリアの額にキスをする。
(この、今日はまだティエリアに触ってもいないのに!!)
リジェネはそれを飲んで、全ての玉子焼きを食べてしまった。

「・・・・・・・・・・・・」
ティエリアの顔が、不満そうになる。
「どうしたの?美味しかったよ?」
「ティエリア、どうした?」
不安になって、二人ともティエリアの様子を伺う。
ティエリアは、外していた眼鏡をかけると、メモを取り出す。
「本日の実験、失敗」
「まてえええぇぇぇぇぇ!!!」
ニールが、待ったの声をあげるが、ティエリアは気にせず、メモにわけの分からない化学記号と専門用語をかきこんでいき、とりあげたニールには解読不能だった。

タリ・・・・。
あごの端から、リジェネはホワイトメロンソーダ・・・だったはずの液体をたらして、首を傾げた。
「ティ〜エ〜リ〜ア〜??」
「僕と同じ細胞を持つ君なら、この食事とその液体で・・・・・なるはずだったのにな。また失敗か。ドクター・モノレの育毛剤もちゃんと入れたのになぁ」
あ、なんか走馬灯が。
食べてもいないニールに、走馬灯が走った。そう、今から6年以上も前、ニールが現役のガンダムマイスターとして戦っていた頃に、ティエリアはドクター・モレノの研究室にたまにこもって、研究を重ねていた。
内容は、人の老化。
普通なら、若返りを研究するのだが、永久ティーンズのティエリアにとっては、外見が若いままというのは、良いこととあると同時に、年を重ねていくニールと対になれない苦痛でもあった。一緒に、年を重ねていきたい。
ただその純粋な心から、人が老化する薬を開発しようとして、結局は作れなかった。
昔は、失敗して自分で実験台になっていたので、10歳の女の子になったりした事件もあった。あのティエリアはかわいかったよなぁとか、思いながら、そのときも確か「ドクター・モレノの育毛剤」がどうのこうの言っていた気がする。

「酷いよティエリア!僕を使って実験するなんて!」
泣き真似をするリジェネだったが、ティエリアは騙されない。
「君のことだ、たかだか実験台に使われたぐらいで、毛筋の傷にもならないだろう」
「へぇ。そんなこというんだ」
ゆら〜りとリジェネが立ち上がる。
「ふふふふ・・・・・」
「ふふふふ・・・・・」
シンメトリーを描く二人は、ラリってそうなかんじだった。
ティエリアも、リジェネのあけたホワイトメロンソーダを、コップに注いで飲んだのだ。

「おい、これ、酒!」
ホワイトメロンソーダ・・・・・カクテル。アルコール率2%。
ほんの少しのアルコール。でも、ティエリアは酒に弱い。同じ細胞のリジェネも、理論からすれば弱いはずだ。

二人は、紫紺の髪を、リジェネは肩に少しつくくらいまで伸びているのを一つのポニーテールにして、ティエリアは肩甲骨の下あたりまで伸びている(現在伸ばしている)のをツインテールに結って、二人ともお揃いの白のリボンで結び、あまった部分を背中に流している。
ちなみに、服装まで一緒だった。
紺のデニムのハーフパンツに、上は白のサマーセーターから、黒のフォックスリボンストール。家にいるときは、いつもスリッパをはいている。日本の刹那の家での暮らしから、家に土足であがる、という行為をやめたティエリアとニールに習うように、リジェネも室内だけではくブーツ。
リジェネはシルバーフォックスの毛皮の膝の位置まであるブーツをはいていて、ティエリアはジャボテンダーさん柄の特別なスリッパをはいている。ちなみに、靴下もジャボテンダーさん柄だ。
そこらは置いといて、二人ともまるでモデルのようないでたちだ。その服は、有名デザイナーの服で、無論オーダーメイド。モデルをしているリジェネが、そのデザイナーのショーに、珍しく出て、そのお礼にといろいろと服をオーダーメイドで作ってもらったのだ。金額に換算するだけでも恐ろしい。

 





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