世界が終わってもV「リジェネ、ゴスロリ店に」







「おい、リジェネ。もうちょっと、表情なんとかできないのか?」
「無理だね」
ムスっとした表情で、リジェネはサマーセーター一枚でニールに抱っこされていた。
小さくなったリジェネにあう服がないのだ。靴もない。
裸足で歩くわけにも行かなくて、子供服を買いにニールとティエリアと子リジェネは出かけた。

「きゃあ、かわいい。お人形みたーい。姉妹かしら?」
すれ違う女性が、いつにも増して黄色い違う声を出していく。
ティエリアの格好は、基本はユニセックスな服だが、ニールの趣味のゴスロリもちょっと入っていて、柔らかくなった印象から、昔から中性的でボーイッシュな少女に見えたが、今では完全に女の子に見えてしまう。
リジェネは、ティエリアの妹に見えるらしい。

いつもなら、人々はリジェネを見ると、目を見開き、声も失う。それくらいの美貌。ティエリアと同じ、女神のような、それ以上の美しさ。女性はしきりに黄色い声をあげ、男性はリジェネを女性と間違え執拗にナンパしたり、何度も振り返ったりする。
そんなことに慣れてしまったリジェネは、行き交う人から投げられる視線も言葉も無視していた。所属のユニットグループだと分かる人はすぐ分かるが、リジェネはすぐに歩き去ってしまう。
一応、ファンの子には適当に愛想笑いをしたり、握手をかわりたり、サインをあげたり、プレゼントをもらったりと、芸能活動で排他的な存在にはならないよう心がけている。他のメンバーにまで、人気の影響が響くからだ。
人にしては美しすぎる10代の少年が他に四人いる。皆、中性的で、時には少女のように見える。中でもティエリアとリジェネの二人はメインボーカル二人で、ユニットの中心存在であるため、人気は高い。

るんるん気分で、ティエリアはニールの隣に並んで歩いていく。
男性はティエリアに見惚れ、女性はニールに見惚れる。本当に、とてもよく似合ったモデルのようなカップルだ。
ニールとの再会で、再び女性化の進んでいるティエリアは、思考まで少女趣味な部分がある。
「ついたよ、リジェネ」
「んー」
眠たげな目をこすって、リジェネが見たのは、子供服を売っている店。それはいい。しかし、どれを見てもスカートばかり。リジェネは女装が嫌いだった。半ズボンにニーソは平気でも、スカートだけははかない。それがリジェネのポリシーであった。
「ゴ・・・・・ゴスロリ!!」
リジェネの背後には、稲妻のトーンワークがあったに違いない。
ニールの腕の中で、戦慄いている。
「僕が、この僕が、女の子用のゴスロリの服を着るというのか!」
「男の子用の、女の子みたいなゴスロリの服は着るくせに」
「それは、あくまで作られた服は少女をイメージしても男性用に作られているから着てるんだ!それに、グループの売りは、”中性的な美しい少年”だし?イメージは尊重するよ。でも、ティエリアや他のメンバーみたいに、女装だけはしない!」
「残念でした。すいません、試着させてください」
リジェネのポリシーは、ティエリアにとって、道端に生えている雑草だった。

暴れようかと思ったが、やばいことに、店内の人間はショーなどで会ったことのある有名なブランドデザイナーとそのお手伝いさん。
「あら、ティエリアさん。リジェネさんは?」
「家で留守番している」
「そう。リジェネさんのお陰で、この前のショーは大成功だったわ」
「伝えておく」
「あら、かわいい。この子は」
「僕とニールの子供!」
「げふげほげっほげっほ」
リジェネは、大きくせきをして、ティエリアの言葉をかきけした。
「えっと、すいみません、リジェネとティエリアの親戚の子です。名前は・・・」
ニールが、リジェネを抱っこしたまま、ティエリアとリジェネの頭を撫でた。
「な、名前はリジェラです」
「あら、リジェネさんにそっくりね?まるで、本人の子供時代を見ているようだわ。それから、あなたは?」
「僕の恋人のニールです!」
ティエリアは、嬉しそうに告白した。
「あら、あなたが芸能界で噂の・・・そう、ティエリアさんの恋人」
最近の記事では、ティエリアの体のラインが男性でないことももう隠せない状態まできているので、ティエリアは実は両性具有である、ということを発表したばかりだ。
「ニールさん。かっこいいかたね」
「はい。ニールはとってもかっこいいんです」
ニールの腕をとって、ティエリアは並ぶ。
「いいわね・・・・。ニールさんだっけ?綺麗な顔立ちをしているわ。ティエリアさんととてもよく似合っているわ。いいわね・・・・」
デザイナーの審美眼に叶ったようだった。
「良かったら、今度うちのショーに出てみない?ティエリアさんとリジェネさんと一緒に」
「え」
突然の言葉に戸惑うニール。
「ごめんなさい。ニールは、実は足が悪くて・・・・ショーのように、綺麗に歩けないんです」
「あら、そうなの。とても残念だわ」

(ティエリア?)
(僕が、あなたを芸能界入りさせると思いますか?自分のライバルを増やすような真似はしません)
(なるほど)
納得したニールであった。

さて、リジェネの運命やいかに?



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