あなたが生まれた日







「誕生日おめでとうございます、ロックオン」
「んー?ああ、そういえば俺、今日誕生日だった」
「それくらい、自分で覚えておいてくださいね」
ぶんと、ティエリアの手からジャボテンダーがとんで、ばしばしとロックオンを殴る。
「いたたたた。簡便」

「これ、誕生日プレゼントです」
たり・・・と、ロックオンは汗を流した。
ティエリアの贈り物はろくなものがない。
「中、開けていい?」
「はい」

中をあけると、ロックオンのイニシャルが入ったマフラーだった。
乙女チックなピンク色。
ああ、手作りなんだなと見てすぐに分かった。
ところどころほつれている。

「ありがとな」
ロックオンは、ティエリアの額にキスを落とす。
「すみません。不器用で・・・・」
ロックオンは、マフラーをトレミーの室内だというのに巻いてしまった。
「これからしばらくこれ着用する」
「はぁ?正気ですか?」
「正気だ。だって、しばらくは休暇とれないし。つけないともったいないだろ」
「それもそうですね」

「それから、これ・・・」
きた。
今年もきた。
ティエリアの手料理。お菓子か。
ロックオンは、顔を蒼白にした。ティエリアの料理の腕の壊滅さは、凄まじいものがある。
「手作りの、アップルパイです」
今、食べるしかない。
そう、愛を確かめられている。
今食べるんだ。

「ありがとな。食べるよ」
「はい」
ティエリアは終始にこやかな顔だった。
中身をあけて、ロックオンは固まった。
アップルパイなら普通は茶色とかそんな色だろう。焦げて黒とかもありだけど。
蛍光色のピンクだった。
ピンクのアップルパイ・・・凄い。

見た目だけなのかもしれない。
人体に影響のない、蛍光色の着色料だってあるし。
うん、きっとそれのピンクを混ぜただけだ。
一つ手にとって、ロックオンは食べる。
ティエリアが「ららら〜」と機嫌よく歌いながら、アッサムも高級な紅茶をいれて、ロックオンが座ったテーブルの前に置いた。

これ、アップルパイだよね?
なぜか、イカ焼きの味がした。
でも、イカ焼きの味なら大丈夫だ。まだいける。
次を食べると、エビピラフの味がした。大丈夫、美味しいじゃないか。
味が芸術的なことになってるけど、大丈夫。きっと、大丈夫。
次を食べる。・・・・・・・・歯磨き粉の味がした。
まだいけるって、うん。次を食べる。
腐った卵の味がした。
うん、ちょっとやばくなってきたかな。がんばれ、俺。
あと二つじゃないか。
次を食べる。なぜかここでメロンソーダの味がきた。ロックオン、HPが一桁だったのが、ちなみにMAXHP2000、が、600回復した。
最後の一切れを食べる。

カッ。
ロックオンは目を見開いて、気絶した。
「あれ、ロックオン?もうお昼ねですか?」
ティエリアは、目を見開いて気絶したロックオンを、ガンガンと椅子に頭を打ち付けさせながら、足を引きずって、ベッドに寝かして、毛布をかける。
ロックオンは、アップルパイを食べた姿のまま、固まっていた。

愛って、辛いね。
ロックオンは、気絶から回復したとき思った。
でも、去年は凄まじい腹痛つきだった。今年は何もない。味だけだ。
うん、ティエリアの手料理、確実に上達してる。
愛って凄いね。
美味しかったってほめると、必ずまた挑戦するので、あえて何も言わない。かわりに、ティエリアと思いっきりベタベタして、相手に次の手料理をという思考の暇を与えないのがポイントだ。
もしくは、ジャボテンダーグッズを用意しておくこと。

ちなみに、今年はロックオンはすぐにお礼だってジャボテンダー柄のシーツと枕カバーをプレゼントした。
ティエリアは目を輝かせてベッドの上で、眠るわけでもないのにゴロゴロしていた。

うん。作戦は成功だ。グッジョブ、俺。

そして、夜になる。
「僕を、食べて?」
去年もだったけど、そういわれた。去年は腹痛で何もできなかったけど。
「食べちゃうぞ」
「味は、どうか分かりませんが」
石榴色の目を潤ませて、上目遣いで見上げてくる。無意識でやってる。

たまりません。

ロックオンはなんとか鼻血を出すことをこらえて、美味しくティエリアを食べました。
ちなみに、いつもより念に念をいれて、もう手料理なんて考えを出さないように、愛撫していかせまくったせいで、夜に廊下を通った刹那に「激しいな」と次の日言われ、ティエリアは無性でそういう夜のことにはむいていないので、ドクター・モレノの元にいくはめになってしまい、ミス・スメラギに呼び出されて怒られ、アレルヤには「人でなし」といわれ、フェルトやクルーたちには「ヘンタイのロリコン」といわれ、散々だった。

でも、二人の間には確かに愛があるから、誰も別れさせようとはしない。
トレミーは、今日も平和。