22話補完小説「見ていてください」







「セラヴィ、ティエリア・アーデ、出る」
ヴェーダの奪還。
それは、イノベイターを倒すことに繋がる。
不思議な気分だった。あれほど固執していたヴェーダの奪還を前に、気分はとても落ち着いている。

月の裏側に、敵の戦力が集中しているという。
そこを突破して、ヴェーダの奪還を図らなければならない。
苦しい戦いになることは、目に見えていた。

「ロックオン」

操縦桿を握り締めて、そう呟いた。
最後の戦いの火蓋が、いよいよきって落とされる。
アロウズを叩き、ヴェーダを奪還し、そしてイノベイターを倒すための戦いが。

コックピットには、一輪の忘れな草の花が置かれていた。
発進と同時に、それはふわりとコックピットを漂う。

「ロックオン。見ていてください。最後まで。私は、戦って生き残る」

そう、生き残ってみせる。
もう、誰も死なせたくない。
世界を変えるために、長い時間歩んできた。
ロックオンが死んで、もう五年近くになる。

「見ていて。私は、あなたに恥じない結末を導き出して見せます。どうか、私を守ってください」

セラヴィが、宇宙を翔る。

最後の戦いを、未来を、切り開くために。

あなたの意志を継いだのは、刹那だけではない。
私も、ちゃんと継いでいるから。
きっと、アレルヤもライルも。

「GN圧縮粒子、全面解放!」

GN粒子の光が満ちる。
破壊の光。

でも、それはきっと明日へと繋がっている。
そう信じて、ティエリアは戦う。
誰でもない、ガンダムマイスターの一人として、ロックオンの意志を継ぎながら、他の仲間と一緒に。