22話補完小説「白い花が導く」







「刹那、これを」
フェルトに渡された、白い花の入ったカプセルを見る。

フェルトの目は、泣きそうだった。
大きな瞳は、そう、怯えているのだ。心のどこかで。

昔、フェルトは好きだった人を失った。
ロックオンという、かけがえのない存在を。

「どうか、刹那、無事で・・・・・」

フェルトは祈る。
刹那が、生き残って、未来を掴み取ってくれることを。
そして、またいつものように、無表情でトレミーに戻ってきてくれることを。
刹那はマリナとそんな関係じゃないと言っていたが、フェルトは知っている。刹那がマリナに、超小型パソコンを与えてたまに言葉のやりとりをしていることも。

刹那のことは好きだ。
恋愛感情の好きなのか、と聞かれると分からない、としか言いようがない。
ロックオンのように、優しく言葉を何度もかわして接したわけではない。
でも、今の刹那は昔のロックオンに何処か似ている。
だから、だろうか。なんとなく、惹かれるのだ。
彼の隣には、いつもティエリアの姿があったけれど。そう、愛しかったロックオンの隣にも、いつもティエリアの姿があった。
ティエリアに嫉妬したことはない。
フェルトは、刹那と同じくらいティエリアが好きだ。いや、ティエリアの方のことがもっと好きかもしれない。
長い孤独を一緒に味わい、たまに一緒に涙を流していた仲だ。

「ティエリアも、無事で。ロックオン。お願い、みんなを守って」

祈るしか、フェルトにはできない。
フェルトにガンダムはないから、戦うことはできない。
トレミーを守ることが、フェルトの仕事だ。

「信じているから。刹那、ティエリア」

フェルトは、トレミーを守るために、ミス・スメラギの元へと足を向けた。