血と聖水「水銀のヴァンパイア」







血の聖水となったロックオンが、同じロードヴァンパイアの心臓を食らう。
驚異的な回復で再生する心臓に噛み付き、そして全身にヴァンパイアの毒である水銀をいきわたらせる。
水銀は危険であるため、人間では取り扱いができない。使役魔も同じだ。主に接触する可能性があるため、使うことはできない。
ロックオンは、ヴァンパイアの最大の弱点でもある水銀を使う。それで千年の間生き延びてきたのだ。
同じヴァンパイアの血肉になることもなく、狩られることもなく。
ロックオンは水銀で同じヴァンパイアを殺し、そしてヴァンパイアハンターは実力で殺した。

ドロドロと、とけていくロードヴァンパイアはついに灰となった。
ビームサーベルをひきぬく二人。
ロックオンはすぐに血液となり、元の姿に戻る。

「灰を・・・とらないと」
「さわるな。俺がとる。水銀にまみれてるからな・・・人間にとっても毒だ」
「いつも思うが、なぜロックオンは水銀を使う?」
「水銀が、ロードにもマスタークラスにも有効だからさ」
「しかし、自分の命にも影響があるだろう」
刹那が首を傾げる。
「残念。俺は、水銀からうまれたんだよ。水銀の汚染で、3つの王国は勝手に滅びた」
「あんたも、賞金首になっているのを知っているか、ロックオン?」
刹那のビームサーベルが、ロックオンの胸の前につきつけられる。
「刹那!彼は、もう昔に吸血行為は私のみとすると誓った」
「だからといって、過去の罪が消えるわけではない」

「西の帝国を滅ぼした、鷹のロードヴァンパイア。元々ヴァンパイアでありながら、イノベイターに目覚めたお前に、退治される云々だの、過去の罪をとわれるいわれはない」
ロックオンは、ビームサーベルを片手で掴んだ。
肉のこげる匂いに、ティエリアが泣きそうになった。
刹那は、ビームサーベルをおさめる。
「ティエリアの情夫になど、興味はない」
「だ!!だから、ロックオンは情夫なんかではない!」
ティエリアが真っ赤になって叫ぶ。
「えー。あんなことやこんなことしてるのに?」
「ロックオン!!」
ティエリアが、紅くなったままロックオンを殴り飛ばした。

その時は突然だった。
ティエリアの瞳が金色に輝き、背中に六枚の金色の翼が現れたのだ。
「ほう。覚醒か。遅いな」
「覚醒?これが・・・って、何もかわったかんじがないが」
翼はすぐに消えて、瞳の色も石榴色に戻った。
「おかしいな?覚醒をした者は、飛躍的に力がUPすると聞いているが」
「にゃーにゃにゃ。主の星の数が増えてるにゃ」
フェンリルが、目を回しているロックオンのかわりに、自動でLVを告げる星システムの3つ星が4つ星になっているのを見つけた。
「3つ星が4つ星か・・・・プッ」
刹那は背中をむけてふきだしていた。
「うるさい!!」
ティエリアは、刹那も投げ飛ばした。

家には、ロックオンが召還したナイトメアの背に乗って帰った。
協会に、覚醒を告げ、星が一つ増えたことを嬉しげに伝えると、皆プッって笑っていた。
覚醒で星がたった一つ増えたなんて、はじめてだった。通常はもっと強くなる。
「怒るとかわいい顔が台無しだぜ?」
「ふん、怒ってなんていません」
「にゃーにゃ。にゃっ」
フェンリルを猫じゃらしで遊ばせながら、ロックオンはティエリアの額にキスをする。
「情夫って響きはなぁ。せめて彼氏くらいじゃないと」
ロックオンは、猫じゃらしをティエリアの目の前にもってきた。ティエリアは、それごとロックオンを投げ飛ばすのであった。

協会から、次の使命がきている。
リジェネのかわりに、ハイクラスのヴァンパイアを3体排除せよとの命令だった。
とりあえず、使い魔をリジェネに送ったら、リジェネが絶対自分で退治するとすでに向かったそうなので、放置しておいた。リジェネなら、間違いなく魔王クラスでもない限りうちもらしはないだろう。