昼のひと時







「刹那は本当に好き嫌いがないのね。ティエリアはけっこう多いわね、好き嫌い」
食堂で、昼食のときにフェルトがそういった。
フェルトのトレイには、グリーンピースが綺麗によけられている。
刹那の隣に座るティエリアは、ブロッコリーをよけている。
刹那のトレイは何もよけられたものはない。

「僕には幼少期というものが存在しなかった。覚醒したときに与えられた食物でいやだと感じたものはそのまま食べなくなった」
刹那が、スプーンで綺麗にフェルトとティエリアが食べないものを食べていく。
「それはなんていうのか・・・・・親の愛情とかももらえなかったんでしょ」
「かわいそう、とは言わないでくれ。僕は、生れてきたことに感謝さえしている。親などいらない。君たちがいる。僕には仲間がいるから」
「そう」
フェルトは満足そうだった。

「刹那は、嫌いな食べ物とかないの?」
「ない。しいていえば・・・腐ったものと、カビの生えたものは嫌いだ」
「それ、すでに食べ物じゃないわ」
フェルトが苦笑する。
刹那の苦く辛い少年時代は聞いている。

「フェルト、このチョコケーキ好きだったな。食べるか?」
デザートの小さなチョコケーキ。
「ティエリアも好きじゃない。私はいいわ。ティエリアにあげて」
フェルトは遠慮した。
「そうか。ティエリア、食べるか?」
「かせ」
ティエリアは、チョコケーキの皿を受け取ると、綺麗に二等分して、それをフェルトと自分の皿に置く。
「これで、問題ないだろう、刹那」
「ティエリアなら、そうすると思った」
刹那が氷水を飲む。
フェルトに全部あげてもいいのだが、甘いものはカロリーが高い。過剰に摂取するのはあまりいいことではない。ティエリアの体は過剰にカロリーを摂取しても熱となって逃げているように作られているが、フェルトは違う。
「代わりにハンバーグをやる」
ティエリアが、ハンバーグにフォークをつきさし、刹那の皿に置く。

刹那は好き嫌いはないが、肉料理はわりと好きなほうだ。
「ありがとう」
「私、ね。刹那とティエリアと一緒にいるようになって気づいたことがあるの」
「なんだ?」
「何が?」
「刹那の笑った顔って、かわいいって思うの」
「かわいい?そうか?」
「それは同感だ。いつもは無愛想な無表情だからな。たまに浮かぶ笑顔は幼く見える」
「でしょ」
ティエリアとフェルトは刹那の笑顔について語り合う。
刹那は、一人首を傾げていた。