う、うまれた!







朝起きて、ティエリアはショックで固まった。
ベッドの中に、卵が一つ。
それはどうみても卵。
「ぼ、僕はうんでしまったのか!」
そんなバカな。いくらイノベイターであるとはいえ、まさか卵をうむなんてそんなことあるわけない。
いやしかし、僕は人ではない。卵をうむ可能性は0%とは考えられない。
だが、うんだ記憶がない。

よく見ると、その卵は色が白ではなく薄緑だった。
「う、うまれた!!」
ティエリアは、卵を大事にかかえて、ロックオンの部屋を訪れた。

「ロックオン!ロックオン!」
「ん?どうした〜」
部屋の中から間延びした声が聞こえる。ティエリアは部屋の暗号を入力し、ロックオンの部屋に入ると、クッションをしいた小物入れの中にいれた卵を見せた。
「ロックオン。うみました」

「はい?」

「卵をうみました!!」

「はい?」

「だから、卵をうみました!!」

「はい?」

「しつこい!」
ティエリアは、何度でも聞き返してくるロックオンを蹴った。
「見てください。立派な卵です」
「ああ、卵だな」
「うんだんです」
ティエリアは、卵のはいった小物入れをとても大事そうに抱えいる。とてもいとおしそうに。

やべぇ。まさか、ティエリアって卵から生まれたのか。それでもって、ティエリアが卵うんだのか?
ロックオンはすでに人生と戦っていた。
「ティエリア。うん、ちゃんと責任もつから」
「何がですか」
「卵うませちまってごめんな」
ロックオンは、ティエリアを抱き寄せた。すると、足を思い切り踏まれた。

「誰が、僕が産んだというんですか!違います。ジャボテンダーさんが産んだんです!」
「はい?」
「だから、この卵、ジャボテンダーさんが産んだんです。だって、緑色だし、しましまだし・・・・」
確かに、その卵は緑色でしましまだった。
「ドクター・モレノにたのんで、孵化機にかけてもらいましょう」
なぜか、ドクター・モレノの診察室には孵化機があった。なぜあるのかは、謎だ。

「いや、ジャボテンダーがうむわけ・・・・」
「ジャボテンダーさんの子供です!責任を持って、僕が育てます!」

そうして、卵は孵化機にかけられた。
そして数日後。

卵が無性卵であると知ったドクター・モレノはロックオンに、無性卵で孵化機にかけてもダメだといった。
すると、ロックオンは地上までおりて小さなサボテンを購入した。
そして、感動の対面の日。
「うまれたぞ、ティエリア」
「なんてかわいいサボテンさんでしょうか」
ジャボテンダーの子供なのに、何故ただのサボテンなのかという疑問はティエリアの頭にはなかった。

そのサボテンの鉢植えは、大切にティエリアの部屋に置かれ、ティエリアがたまに水をあげたりとちゃんと世話をしている。毎日話しかけ、母親のジャボテンダーさんとの対面もさせる。

なぜ、ティエリアのベッドに卵があったかって?
それは、ティエリアを驚かせようとしたロックオンの仕業だった。ただの食用の卵に色を塗って、ティエリアのベッドの中に置いたのだ。ちょうど酒に酔ってて、それが全て自分のしたことだなんて、すっかり記憶から抜け落ちているロックオンだった。

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