赤いターバン







刹那が珍しく制服姿ではなく、私服姿でトレミーを歩き回っていた。
「お、その格好なつかしいな」
刹那の姿を見たニールが、昔の、そうもう5年も前によく中東出身らしい衣服を身に纏った刹那の服をあれこれ触っている。
「なんとかしてくれ、ティエリア」
「ニール、刹那が迷惑がっているぞ」
「おっと、悪いな。懐かしすぎてな。服の採寸は流石に変わったな。大きくなった・・・と言いたいところだけど、俺から見ればまだまだお子様だ」
ポンポンと頭を叩くニール。
21歳の刹那は、24歳で時を止めてしまったニールから見ればまだまだ子供なのだ。
ニールは、リジェネの蘇生により復活したが、その細胞にイノベイターの細胞をうめこみ、さらには遺伝子操作をくわえて人工的なイノベイターとなっていた。瞳が金色に輝くことも、脳量子波を使うこともないが、老いるということはない。
それは、リジェネの策でもあった。永遠を生きるティエリアに、もう二度と愛する人の死を味わせることのない、不死という名の魔法。

「刹那、フェルトが探していたぞ」
「ああ、今いくところだ」
ティエリアは、じっと刹那の格好を見つめていたかと思うと、刹那の頭を撫でた。
「うーん、その姿をしている君は、あの頃のイタズラな少年のようでかわいい」
「ティエリア」
「すまない、君は本当にかっこよくなった。ああ、本当に懐かしい。あの頃はよくニールにイタズラをしかけていた刹那が、今ではガンダムマイスターたちのリーダーか。おっと、すまない、いってこい」
刹那はニールとティエリアから解放され、トレミーを歩き出す。
この服を着ていると、16歳の少年時代に戻ったような気分さえする。
「確かに、懐かしい」

「フェルト、いるのか、入るぞ」
フェルトの部屋に入ると、フェルトは午後の紅茶の用意をしていた。
「あら、刹那、その格好」
「制服をすべて洗っている。仕方ないので私服を着ている」
「懐かしいわ」
フェルトは刹那を見つめる。
あの頃は、フェルトはニールに憧れて、刹那もニールに憧れて、そう、早く大人になりたいと願ったものだ。

「座って。お茶にしましょう」
「ああ」
刹那とフェルトは椅子に座って紅茶をのみ、午後の時間を楽しむ。
「どうした?」
「ううん、明日あたりになると、もうその姿が見られなくなると思うとちょっと残念で」
「フェルトが望むなら、いつでも私服になる」
「本当に?ありがとう、刹那。でも、刹那にはやっぱり制服姿が一番似合っているわ」
「そうか」
刹那は首に巻いていた赤いターバンを外すと、フェルトの首に巻いた。
「刹那?」
「もらってくれ。フェルトを守るおまじないだ」
「ありがとう、刹那」
フェルトは、赤いターバンを口元にもってくる。
「刹那の匂いがする。お日様の匂い」
「フェルト」
刹那は静かにフェルトに口付けた。

二人は静かに午後の紅茶を楽しむ。