ココア







「刹那、待ってて。今ココア入れるから」
フェルトが起き上がって、ココアを入れにいった。
刹那とフェルトは、同じベッドで仮眠していた。
刹那は大丈夫だったが、フェルトはまだ少し眠そうだった。フェルトが帰ってくる。
ココアの入ったマグカップを受け取りながら、刹那が心配する。
「フェルト、無理をしなくてもいいぞ。まだ眠いなら寝ていろ」
「大丈夫よ」
フェルトは首を横に振る。

刹那は、かつてティエリアと一緒のベッドで眠っていたせいもあってか、眠るときフェルトと一緒だ。同じベッドで眠りにつく。一人でも勿論眠れるが、隣に誰かいたほうが眠りやすいらしい。

「このマグカップ、そういえば刹那とこの前一緒に買いにいったやつだね」
「ああ、そうだな」
お揃いの皿やパジャマも買った。
大抵の日用品や雑貨はその店で購入した。もうしばらくは買いにいくことはあるまい。
「おいしい」
刹那が、ココアを飲んで一息つく。
「ありがとう」
「フェルトが入れてくれたココアは、ティエリアが入れてくれたものより美味しい。ティエリアの入れてくれたものはかなり甘すぎる」
「ああ、私も飲んだことある、甘すぎて胸焼けしちゃった」
二人で笑いあう。
こんな日がくるなんて、昔では想像もつかなかっただろう。

ジャボテンダーを、フェルトも購入した。
何気にジャボテンダーは密かに流行っている。
ゆっくりと、みんなジャボテンダー病にかかっていく。

「ん?なにか聞こえるな」
廊下で、ニールとティエリアが朝の体操をしていた。

は〜いいちにのさんしジャボジャボジャボ
は〜いいちにのさんし針万本
間違っててもマンボウじゃないジャボジャボ
にーにのさんしジャボジャボジャボ
さんにのさんしジャボジャボジャボ
屈伸運動ー ジャーボテンダ〜
大きく腕を広げて〜 ジャボテンダー 腕もげたー
大きく息を吸って〜 ジャボテンダー でも繋がったー


「ぶふっ」
フェルトが、その歌声を聞いて、いつものジャボテンダー体操だと思い知って吹き出した。
「ティエリアったら、ニールを誘って廊下で体操してるわ。おかしい」
「ニールも楽しんでいるんだろう」

実際にそうだった。
ジャボジャボと体操しながら、朝のひと時を、平和に楽しんでいる。
この体操をしているときは、流石のリジェネも近くにはやってこない。リジェネは二人の時間を作ってはくれるが、ティエリアが大好きなので、ティエリアはニールとリジェネと三人でいることが最近は多い。

は〜いいちにのさんしジャボジャボジャボ
は〜いいちにのさんし針万本
間違っててもマンボウじゃないジャボジャボ
にーにのさんしジャボジャボジャボ
さんにのさんしジャボジャボジャボ
屈伸運動ー ジャーボテンダ〜
大きく腕を広げて〜 ジャボテンダー 腕もげたー
大きく息を吸って〜 ジャボテンダー でも繋がったー


「前から思ってたんだけど腕がもげた、でも繋がったってどういう意味かしら」
「ああ、昔、もう5年以上も前にティエリアがジャボテンダーを乱暴に扱って、腕がもげたことがあるらしい」
「まぁ、ティエリアったら」
フェルトはクスクス笑う。
その光景を想像してしまったのだ。
今はドクター・モレノは死んでしまっていないけれど、彼の息子のドクター・モレノ2世がトレミーのドクターになっている。

刹那は、よく笑うようになった。
それは、フェルトのお陰かもしれない。