硝子細工の小鳥「永遠になった二人」







「ニール・ディランディ、ティエリア・アーデ、ここに永遠に眠る」
ライルは、兄ともう一人のティエリアが眠る墓に、花束を捧げた。

兄の死に顔は安らかだった。ティエリアの後を追ったのだ。
兄らしくないといえなそうだし、兄らしいといえばそうだった。あんなに愛していたんだ。一人で生きていくことは考えていなかったのだろう。
だから、兄にティエリアを施設に入れて暮らしてはどうかとすすめたのだ。いずれ、兄を間違いなくこの綺麗な天使は連れ去っていくと感じていたのだ、ライルは。
予想は的中した。
綺麗すぎる天使は、兄を連れ去っていってしまった。
たった一人の、俺の家族。肉親。

「なぁ、兄さん。俺は、あんたが羨ましいよ。おれは、アニューの後をおえなかった。天国で、達者でな」

「ロックオン。どうか、安らかに。そして、もう一人のティエリアも」
知らせを受けて、もう一人のティエリアの存在が公になって、事実をしったアレルヤが花束を墓に捧げた。

「ロックオン。ティエリアと、どうか幸せに。冥福を祈る」
「もう一人の僕。こうなっていたのは、僕かもしれない。どうか。ロックオンと安らかに」
刹那とトレミーにいたロックオンのティエリアでなかったほうの「ティエリア」も、墓に花束を捧げた。

皆で空を仰ぐ。遺書には、硝子細工の小鳥のつがいになって永遠に愛し続けると書いてあった。
空は綺麗に蒼く広がり、小鳥のつがいになったティエリアとロックオンは、きっとこの世界の空のどこかをペアで仲良く飛んでいるのだろう。


*********************************

疲れて眠ってしまったロックオンに毛布をかけて、ティエリアは置かれてあった効ガン剤を飲んだ。
「そは永遠なれ。我は永遠にそを愛す。・・・・・・・・・・あなたとこの世界で出会えて、良かった。たとえ、どんな形でも・・・・僕はまた、すぐに忘れてしまうかもしれない。あなたのことをちゃんと思い出したことを、あなたに言葉に伝えれないかもしれない。でも、どんなに僕は壊れていても、あなたを愛しています。どんなに壊れても、どんなに壊れても。あなたと一緒であれて幸せです。どうか、先行く僕を許してください。そして、後を追ってしまうあなたを嬉しく思う僕を。愛しています」

ちゃんと、想いは伝わっているから。
あなたを愛している。
あなたはロックオン・ストラトス。僕の夫であり、最愛の人。
僕を守れなかったなんて、そんなことはありません。
あなたは、僕をずっと守ってくれた。あなたはずっと僕と一緒であってくれた。
放棄もできるのに、あなたはずっと、どんなに疲れて絶望に立たされても、僕を愛し続けてくれた。

愛しています。
どうか、どうか。

もう一人のティエリア・アーデへ。

愛する者と、最後まで添い遂げること。たとえ愛する相手が違っても、その愛は同じはず。相手を愛する心は同じはず。相手を大切にすることを忘れないで。そして、僕たちのようにはならないで。でも、僕たちはこれでいいんだ。間違っていても。僕たちは、これで幸せなのだから。ああ、ロックオンがくる。
いかなくては。
僕は、硝子細工の小鳥になっていた。
ロックオン、会いたかった。
俺だけのお姫様。
ロックオンも硝子細工の小鳥になっていた。
僕だけの王子様。

二人は、硝子細工の小鳥のつがいとなって、永遠の時を愛し続ける。

そは永遠なり。
そは永遠なり。
我、永遠にあなたを愛す。

                   硝子細工の小鳥 終幕
                  冬葉マサヤ著 2009.5.11夏
-----------------------------------------------------
涙、ボロボロボロボロ。ここまで泣いて打ってる自分が凄い。鼻水たれながら、文章をうつこと7時間。
朝になっちゃったよ。朝の7時だよ。
書いていくごとに哀しくか哀しくて。
心中物語となることは最初から決めていました。ようはバッドエンド。グッドエンド(ハッピーエンド)が多い小説の中では珍しい。転生ものへ続いて、そして二人は、またであった・・・で終わらせたら、今まで書いてきたものと重なるけど、ハッピーエンドでしょう。でも、あえてこうなる終わり方で。
1週間ほど、もんもんと物語の構成の糸口をさがしておりました。
この終わり方も、ある意味ハッピーエンドではないですが、グッドエンドなのかもしれません。
今回模索したのは、とにかく「泣ける」ということに対して。
感想をこの作品に限り聞きたいです。いや、他の作品も聞きたいのはあるのですが、読者の方が読んで「泣けた」かどうかが知りたい。いっそアンケでもとろうか。
前回の「ガンダム学園V」のギャグ小説の対極に位置するようなものを書きたかったのです。シリアスで切なく、泣けるといいなぁと。
冬葉の小説はシリアスが切なく泣けるものもあるそうですが、狙って書いてみて泣けるなら書いてみてよかったと。いや、もう自分で泣いてるあたり、しかも泣く頻度がシリアスの作品にはその作品によって何度かあったりするのですが、鼻水たれるまで泣きながら書いたのは久しぶりだ。ラブファントムU以降か。ニールの魂が、アンドロイドに蘇り「帰ってきたよ」ってそんなシーンを書いてて鼻水たれてたなぁ。
あー、次はほのぼの小説でもかくかぁ。良い涙を零せた。長いあとがきでした。

NEXT