青春白書3







朝起きると、刹那はすでに全て仕度を終えて、テーブルについていた。
ティエリアはパジャマ姿のまま、欠伸をしてテーブルにつく。
朝ご飯はアレルヤがいつも作ってくれる。家事のほとんどはアレルヤがする。朝食は、トーストとサラダ、それに苺という簡単なものだったが、それだけでもありがたい。
ティエリアは、食が細い。長い間、食事をまともに与えられてもらえなかった時期があるせいか、胃が小さいのだ。
トーストを半分食べると、サラダは放置する。それから苺だけは好きなので全部食べた。
「俺の分も食べるか?」
刹那が、苺を盛った小皿をティエリアの目の前に置く。
苺に限らず、果物が好きなティエリアを刹那はよく知っている。
「うん。ありがとう」
半分になってしまったトーストをかわりに刹那に渡す。
刹那はそれと受け取って食べてしまう。
「早くしたくしろよ。待ってるから」
通学する時は一緒だ。
徒歩でいける距離のマンションを刹那は選んだ。
「うん。ごめん、着替えてくるね」
制服はブレザー。
ティエリアは着替えた。それから、洗面所にいって歯を磨いて顔を洗う。顔なんて石鹸でごしごし洗う。
髪なんてシャンプーだけだ。
女の子なんだから・・・・そんな台詞をアレルヤから受けるが、女の子という感覚がティエリアからは欠如していた。ティエリアはリジェネと一緒に男の子として育てられた。そのせいかもしれない。

「うーん。うーんうーん」
長い髪を結ぼうとしてもなかなか上手くいかない。
めんどうくさいので、そのままにした。

「いってきます」
「いってきますー」
鍵をかけて、寝ているであろうアレルヤを起こさないように気をつける。
外は快晴だった。ゴミはすでにアレルヤが出してくれたのか、影も形もなかった。


「おはよう」
「おはよう、リジェネ」
「おはよう、ティエリア」
リジェネはティエリアにそっくりだ。双子と間違われる時がよくある。
「ティエリア、先に教室にいってるぞ」
「あ、うん刹那」
下駄箱をあけると、毎日のようにラブレターが何通か入っている。
ティエリアは、それを読むことはしない。そのままゴミ箱に捨てる。酷いかもしれないが、自分が今好きなのはアレルヤなのだ。それ以外の男性に興味なんてない。
それでもラブレターは毎日のようにしつこいほど入っている。ストーカー被害にあうことだって、多い。
それも全てはこの容姿のせい。
だから、なるべく目立たないように他の女子のようにかわいいリボンで髪を結んだり、おしゃれをすることはしない。それでも目立つ。リジェネも似たような容姿をしているが、少年なので女の子からよくもてる。
「いっ・・・」
靴を履こうとして、足の裏に激痛が走った。
「くそ」
足の裏に完全にささった画鋲をとりのぞくと、地面に叩き捨てる。
その姿をみてクスクスと笑う女子のグループがいた。またあいつらか。
ティエリアは男子にもてる。それが、女子には面白くないらしい。ティエリアに女子の友人はいない。刹那の友人たちが、ティエリアの友人だ。
ティエリアは、靴を履き替えるとそのまま教室に向かった。
「遅いぞ、ティエリア」
刹那が、鞄をもってくれた。
「うん、ごめん」
リジェネは違うクラスだ。
ちなみに、刹那も女子にもてる。おまけにティエリアと同居しているとなれば、皆誤解する。
「ひゅうひゅう、朝っぱらからなんだ?」
からかいの声が飛ぶ。
刹那は無視するし、ティエリアも無視する。
「大丈夫か?顔色悪いぞ」
刹那が顔を覗き込んでくる。
「ううん、なんでもない」

なんだか、今日は少し体調が悪いかもしれない。
なんだろう。
よく分からない。

少女にしては発育が悪い体。胸なんてあまりない。
できれば男に生まれたかったな。
そんなことを思う。

1時間目、2時間目と授業を受けたあと、3時間目は体育だった。移動する。体操服を持って、ティエリアは刹那とその友人たちとしゃべりながら、教室を後にする。
「でさ、刹那のやつ告白された女子を振った言葉、なんだと思う?俺より背が高いから嫌だだってさ」
「ぎゃはははは、なんだよそれー」
「刹那、身長はまだ伸びる」
「ティエリアに言われちゃおしまいだよな。ティエリア身長女の子なのに高いからなー」
刹那はムスっとしている。
「大丈夫、そのうち伸び・・・・」
友人たちと談笑している時、ふいに眩暈に襲われた。
そのまま、ティエリアは倒れた。
「おい、どうした!」
「すまない。保健室につれていく」
ティエリアはよく倒れる。それが精神的なものなのか、身体的なものなのかはよく分からない。ただ、ティエリアは生まれつき体が弱いのは事実だ。
もう慣れてしまった刹那は、ティエリアを抱きかかえて保健室に向かった。
それを見ていた女子は、明らかにバカにする。またわざと倒れたと。男子の気をひくために倒れるなんて、バカじゃないのって声が、意識が遠ざかっていくティエリアの耳にも聞こえた。



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