青春白書13







ティエリアは、とうとう覚悟を決めた。アレルヤの部屋に入る。アレルヤは課題をしていた。
「アレルヤ」
「どうしたの、ティエリア」

「好き」

「僕もティエリアのこと大好きだよ」

「好き」

「僕も好きだよ」

ティエリアは、じっとアレルヤを見つめていた。そして首を振る。
「そういう好きじゃないの。僕、ずっとずっと、アレルヤのことを異性として好きだった。だからマリーって人を見ると不安定になった。アレルヤは僕のものじゃないんだ、僕のものにはならないんだって」
「え。僕のことを、異性として?」
「そう。僕は、アレルヤを女の子として好きなんだ」
「ティエリア」
「正直に答えて。アレルヤは僕のものになってくれる?マリーって人と別れて、僕の傍にいてずっと僕を見て僕を愛してくれる?」
「ごめんね。ティエリア、気づかなくてごめんね。ずっと苦しませてごめんね」
アレルヤは泣き出した。
つられてティエリアも泣き出した。
「いいから、答えて」
伸ばされた腕に抱きしめられて、ティエリアは必死になってアレルヤの背中にしがみつく。
「僕はマリーを愛しているんだ。ティエリアのことも大好きだよ。でも、マリーと別れることはできない。いつか、マリーと結婚して家庭をもつと思う。君が嫌でなければ一緒に暮らそうと思ってた」
「そんなの嫌。僕はアレルヤが好き」
「僕も好きだよ、ティエリア。でも、それ以上にマリーのことが好きなんだ。ティエリアのことも大切だよ。大好きだよ」
「うん、ありがとう」
ティエリアは、とんとアレルヤを突き飛ばした。
「ティエリア!!」
そのまま、ティエリアは家を飛び出した。追いかけようとしたが、ティエリアは足が早くて玄関のところでまかれてしまった。
「ティエリア、ティエリア、ティエリア!!」
もしも、ティエリアの身に何かあったら、全部僕のせいだ。
「そうだ、ニール!」
アレルヤは、ティエリアがおきっぱなしの携帯でニールに電話をする。
だけど、最悪なことに外出中で留守電になっていた。
「ああ、どうしよう」
そこに刹那が帰宅した。
「どうしたんだ、アレルヤ」
「刹那。どうしよう、どうしよう・・・」
アレルヤをなんとか説得して、刹那がティエリアを探すことにした。万が一帰ってくるときのために、もしくは連絡があるときのためにアレルヤは待機させる。
気が動転したアレルヤに、外出させるのもある意味危険だと刹那は判断した。
外は雨が降っていた。
しとしとと振り続ける雨の中、刹那は傘をさしてティエリアを探す。

ニールは、昔の友人と飲み歩いていた。
「あー、もうこんな時間か」
「いいじゃんか。もっと飲もうぜ」
「いや、終電に遅れる」
「けちくせー」
「はははは。また今度な」
ニールは酔ってはいるが、足元はしっかりしている。そのまま電車に乗って帰宅すると、家の前に人影があった。
「ティエリア?」
びしょぬれになったティエリアが、蹲っていた。
ティエリアは泣いていた。
「どうしたんだ、ティエリア。何かあったのか」
「うん」
「こんなびしょぬれで。うわ、つめて!何時間ここにいたんだ」
「わかんない・・・・気づいたら、ニールの家の前にいた」
「いいから、中に入れ!」
ティエリアを家の中にあがらせると、熱いシャワーを浴びさせて着替えさせた。ポタポタと髪から水を滴らせたままのティエリアの髪をふく。
ティエリアはずっと泣いていた。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない。・・・・・・・・ねぇ。抱いて」
「ティエリア」
ニールはティエリアを抱きしめた。
「そういう意味じゃない。僕を抱いて」
ニールはティエリアを抱きしめて、唇を重ねる。
「何もかも、忘れたい」

ニールは、ティエリアを抱きしめてベッドに連れて行ったが、ただ抱きしめるだけだった。
「ニール?」
「もっと体を大事にしなさい」
「僕には魅力ない?」
「そういう意味じゃない。アレルヤと何かあったんだな?」
「・・・・・・・・うん」
ティエリアは泣きじゃくった。ニールはティエリアを抱きしめて、ティエリアが泣き疲れて眠ると、毛布を被せてティエリアの家に、きっと待っているであろうアレルヤに連絡を入れる。


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