だって好きだから(3期)







「ライル、いるかしら?」
「どうしたんだ、アニュー?」
ライルの部屋にやってきたアニューは、部屋の中に通された。
ライルは笑顔でアニューを抱きしめる。
ライルとアニューは恋人同士だ。それはもうあつあつ。大人の恋人だ。
「見てちょうだいこれ。ティエリアに教わったの」
「なんだ、これ?」
「折り鶴よ」
「紙でできた鶴か」

アニューの手の中にある、ピンク色の折り鶴を、ライルはじっと見つめる。
「平和の願いをこめて、日本の人はこの鶴をおるのですって。世界で唯一核で被爆した国として、核廃絶を目指して、折り鶴を折って慰霊碑に捧げるのですって」
「へぇ」
「他にも、病気になった人の回復を祈るという意味もあるそうよ」
「紙でできた鶴か。本物じゃだめなのか?」
「本物じゃ意味がないわ。自分の手で、折り紙で折ることに意味があるの」
「折り紙か。そういえば日本の折り紙文化は深いからな」
「これ、受け取ってくれる?あなたといつまでもいられるようにと心をこめて折ったの」
「勿論受け取るよ」

折り紙を、ライルは大切に手の平にのせる。

「俺も、アニューに折って渡すかな」
「あら、折りかた知ってるの?」
「知らない」
「やっぱり」
「ティエリアにでも聞くかな」

「私が教えるわ」
「そうか?」
「ええ。けっこう楽しいのよ。いろんな折り紙の折り方が載った本をもらったの」
二人は、折り紙をテーブルの上に広げて、本を見ながら折り紙を折っていく。

「できた」
「あら。鶴じゃないのね」
「百合。アニューに」
「ありがとう」

二人は微笑みあう。
「本物の百合もいいけどな。こういうのもありだろう」
「ありがとう。大切にするわ」
アニューは受け取った百合を大切そうにしまう。

ライルは、次の日折り鶴を全員分折って渡した。
「はぁ?なにこれ」
リジェネが折り鶴をつまみあげる。
「いつまでも、一緒にいられるおまじない」
ライルが答える。
「僕は別に君と一緒にいたいわけじゃないんだけど」
「奇遇だ。俺もアニューと一緒にいられればそれでいい。でも、みんなといつまでも仲良くいれたら、もっと素敵だと思わないか?」
「あー・・・まぁね」
リジェネは、折り鶴を天井のライトに透かしながら、綺麗な笑顔を零した。
「なんかこういうのもいいね」
新しくガンダムマイスターとなったリジェネは、あまりティエリアとロックオン以外と交流を深めようとしない。最低限の交流はあるが、仲がよいというわけでも悪いというわけでもない。
「お前さんさ」
「何?」
「笑顔綺麗だな」
「は?」
「勿体無い。もっと笑えばいいのに」
「無理いわないの、ライル」
遅れてやってきたアニューが、苦笑する。
リジェネはティエリアと同じ容姿をしているが、ティエリアほど柔らかくない。笑顔というか、黒い笑いはよく見かけるが、心から楽しそうな、嬉しそうな笑顔を見る機会は少ない。
ティエリアの前では何度も楽しそうな嬉しそうな笑顔を見せるが。他のメンバーにはあまり見せない。
ライルとアニューを残して、リジェネは歩きだす。

「笑顔綺麗・・・ね」

ばったりと出あったミレイナが、その独り言を拾って、太陽のように笑った。父親のイアンに似て、よく笑う。
「レジェッタさんの笑顔、綺麗です。もったいないですう。もっと笑えばいいのに」
「あのね。君みたいなお気楽な性格してないから無理」
「私、レジェッタさんのこと好きですう。みんなレジェッタさんのこと好きですよう?」
「そう。・・・・・・・・・・・・ありがと」
ミレイナの頭をポンポンと触って、リジェネは廊下を蹴ってふわりと体を浮かす。

ミレイナは、撫でられた頭に手をやっている。
「アーデさんをものにしようと思ってもできなかったですう。レジェッタさんはフリー。乙女なミレイナ、がんばるです!」
何気に宣戦布告する。
それをしるわけもないリジェネは、それからミレイナに振り回されることが多くなったそうな。