たった一つの願い6







「あなたはずるい」
「そうだな。俺はずるい」
「一人で先へ先へといってしまう。もう、どんなに望んでも、僕には届かない場所にいってしまった」
ロックオンの制服に、ティエリアの涙がしみこんでいく。

「僕はあなたに生きていて欲しかった」

「ティエリア」

「あなたを愛している。愛している。好きだ。大好きだ。一緒にずっといたい」

「ティエリア」

鮮明だったロックオンの体から、エメラルド色の光があふれ出し、ちらちらと雪のように舞い降りてくる。

「俺も愛してるよ。大好きだよ。お前の記憶の中に、心の中に俺は生き続けている」

「あなたは僕を残していった。でも、僕はあなたを許す。だって、あなたを愛しているから。あなたがとった行動は愚かだが、否定はしない。あなたは、確かに生きようとしていた。帰ってこようとしていた。あなたは、確かに生き残るつもりでいた・・・・ねぇ」

「どうした?」

「さよならは、言わないで」

「分かったよ」

ロックオンの体が透き通っていく。ふわりふわりと、天に昇るようにエメラルド色に溶けていく。

「ロックオン。ただいま。僕の心はトレミーに戻ってきた。もう迷わない」

「おかえり、ティエリア」

ロックオンを抱きしめようと手を伸ばしても、もうロックオンに触れることさえできなかった。

「うん。もう迷わない。いっぱい泣くだろうけども。立ち上がる。挫折しても立ちあがる。何度だって!」

ロックオンの元にいきたいなんて、もう思わない。もう迷わない。僕は生きる。生きて、この世界を変革していく。ロックオンの心と共に。

ティエリアは、涙をボロボロ零しながら綺麗な笑顔を浮かべた。

「綺麗だよ、ティエリア。その笑顔、すごく自然だ。その笑顔を忘れずにな。また会おうな!」

「うん!」

ロックオンは、にっこりと微笑んで、消えた。

沈黙した世界に残されたのは、ロックオンがはめていたグローブだけが床にぱさりと落ちる。制服もペアリングも持っていってしまった。
でも、それでいいのだ。制服も彼のためだけに作ったものなのだから。もっていってくれて嬉しい。



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