世界でたった一つの楽園7







摘んだブーケやつくった花冠などを車にのせて、二人は帰途に向かう。
途中で、最初にきたオアシスに向かう。

オアシスの泉でロックオンとティエリアは水浴びをした。
シャワー装置は車には備わっていたが、貴重な水を無駄にしないためにここ二日シャワーを浴びていないからだ。綺麗好きなティエリアのために、わざわざシャワーが浴びれる車を選んだが、ティエリアはロックオンが浴びないなら浴びないと言って、我慢した。
服を脱いで、オアシスでティエリアはシャワーのかわりに沐浴をする。ロックオンもだ。

二人は泉を泳いで、水をかけあってまたはしゃいだ。
ティエリアは泳げないように見えたが、わりと泳げた。泉の奥深くまでもぐってしまったティエリアに、ロックオンが慌てたくらいだ。
水の中にいるティエリアはマーメイドかウンディーネのようだった。

「ぷはっ」
顔をのぞかせたティエリアに向かって、ロックオンが水をかけた。
「仕返し!」
ティエリアが、ロックオンに水をかける。
パシャパシャと、水音が響く。
昼の一番暑い時間をそうして過ごした。ロックオンは泉からあがってバスタオルで水分をふくと、置いてあった服に着替える。
ティエリアは、泉の中にまたもぐってしまった。
ロックオンがバスタオルをもって、待っていると、透明な歌声が聞こえてきた。
チチチチ。
水を飲みに着ていた小鳥たちが、ティエリアの肩に止まる。
水鳥が、エサを探すのをやめてじっとティエリアのほうを見つめていた。草食動物の群れも、動きを止めてティエリアの歌声に耳を澄ます。

空と風と大気を支配する、声。

どこまでも透明に澄んだ、泉のように綺麗な声は天をかけあがる。

ティエリアは歌う。
この前、部族の人から教えてもらった神話の歌を歌う。

神の庭を最初に見つけた者は願い叶う。
願いが叶った恋人たちの物語。
恋人は人間と精霊。
いずれ引き裂かれる。
引き裂かれた人間は、恋人との再会を願い、そして願いはかなって、人間は精霊に連れ去られていった。そんな悲恋の歌。

どこにでもあるような、メロディー。
ティエリアが歌うと、まるで天使の歌のようだ。神曲。神に捧げるためだけに歌う、精霊天使のような声。
ティエリアが歌い終わると、小鳥たちは羽ばたいていった。
青空を見上げて、ティエリアはロックオンからバスタオルを受け取ると水分をとって服に着替える。
「ちゃんと、頭ふけよ」
ポタポタと滴る髪の水分を、ロックオンがふいていく。
ティエリアはされるがままだ。
「綺麗な歌だな」
「あなたに褒めてもらうのが一番嬉しい」
ティエリアはロックオンに髪をふいてもらいながら、そんなことを呟いた。
そして、トレミーに戻るために車を町に戻してデュナメスに乗り込む。
神の庭で摘んだブーケと花冠はオアシスに置いてきた。もうしおれて枯れてしまうだろうから。ドライフラワーになるような種類の花ではなかったので、水に浮かせてそのまま流れていったのを見送った。



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