血と聖水V「指令」







銀色の巨大な鷹が空中を旋回する。
「刹那!」
鷹の刹那。字(あざな)の通り、多くの鷹を使役魔に持つ同じイノベイターのヴァンパイアハンターである。
刹那は、10メートルもあろうである空中から鷹から飛び降りた。
シュタッ。
綺麗に着地が決まるかと思った。
実際は、ゴンって頭ぶつけて頭から血を流していたが。
「あー、ゴホン」
そんなことしてもごまかしにならないぞ、刹那。
銀色の鷹は普通のサイズに戻り、刹那の肩に止まった。

「よう、刹那」
元の姿に戻ったロックオンが、刹那を見て、笑っていた。着地に失敗したところを目撃したのだ。
「お前さんけっこう、ドジなのな」
「ティエリア。協会から指令だ」
「え、もう?今さっきロードを倒したばっかりなのに」
「今回は、俺とペアだそうだ。相手は・・・・」
そこで、刹那はちらりとロックオンを見た。ロックオンは、黙って二人の話を聞いている。

「相手は、エターナル」
「エターナル?裏のヴァンパイアハンターか?それとも帝国から来た者か?」
裏の協会所属のヴァンパイアハンターは、全てエターナルヴァンアパイアで構成されている。ヴァンパイアたちの帝国、ブラッド帝国よりきた貴族たちだ。
ブラッド帝国にいるヴァンパイアを普通のヴァンパイと比較するために、エターナルと呼ぶ。普通は真紅の翼をもつヴァンパイアだが、エターナルたちは真っ白な翼をもつ。
ブラッド帝国には、魔法の加護がある。その地より出でると、貴族、皇族、皇帝意外はただのヴァンパイアに堕ちる。もともと平民が占める割合の多いブラッド帝国からは、禁止されているのに帝国から出る者も多い。
バリアのようなものが巡らされているが、隙間をぬって這い出てくるのだ。
そんなヴァンパイアたちが、人間世界で人間を襲う。
それを駆逐するために、ブラッド帝国の皇帝は自らの家臣たちである貴族にヴァンパイアハンターとなり、帝国から逃げた者たちを狩る使命を与えた。
そのヴァンパイアハンターたちが所属するのが、裏のハンター協会である。
他にも、人間世界で生まれたヴァンパイアもヴァンパイアハンターになる場合があるが、それは表側所属となる。現在知られている、表側所属のヴァンパイアとして生まれながら、ヴァンパイアハンターとなる道を選んだ者は5人。中でも、アレルヤという青年は7つ星をもち、三百年も長きにわたりヴァンパイアハンターをこなしている。もともとは裏所属のエターナルであり、アレルヤは今もエターナルだ。だが、帝国出身ではないというこで、表所属となった。アレルヤはエターナルと、人間世界のヴァンパイアの間に生まれたヴァンパイア。
裏のエターナルたちは、貴族であり気高い。皇帝の家臣でもある。貴族でもないエターナルであるアレルヤを敵視して対立したために、協会側が裏から表所属への措置をとった。

ヴァンパイアたちも、複雑な事情を抱えているのだ。

「裏所属の者ではない。帝国出身でもない」
「?」
「実際に、会ってみれば分かる。もう100人以上の人間を虐殺したそうだ」
「追放処分を受けたエターナルかな。まぁ、刹那がそういうなら深くは聞かない」
刹那は、ロックオンに銃口を向ける。
「お前のようなエターナルも、通常は排除対象だ。それを忘れるなよ」
「はいはい」

ブラッド帝国の真なる支配者、夜のネイであったロックオンも生粋のエターナル。皇帝、血の一族の神としての力はティエリア、刹那、リジェネを転生させたことにより失われたが、ヴァンパイアマスターとしての力は普通の貴族のエターナルにもひけをとらない。
 



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