血と聖水「新しい世界で」







「なんだか・・・・納得がいかないです」
「仕方ない。禁忌の子はどのみち狂う。狂えば殺戮を犯す」
「それでも・・・・救う道はなかったのだろうか」
「殺すことが、唯一の救罪だ」

「最後は、母と父の魂の元に還っていった。幸せだろう。普通に退治されるよりは、遙かに」
刹那が、ビームサーベルをしまう。
そのまま燃え盛る屋敷の外に出て、刹那が銀色の鷹を召還するとそれに乗った。
「俺は、一足先に戻る。お前たちはイチャつくなり、交尾するなり、なんでもしてろ」
「刹那!」
ティエリアが石を投げるが、刹那がそれをひょいと避けた。
「じゃあな」
鷹はそのまま遠ざかってしまった。

「ねぇ、ロックオン」
「ん?」
「ネイであったあなたは、もっと孤独だったのですね」
「んー、まぁなぁ。でも昔のことだし。今はお前がいる」
ロックオンはティエリアを抱き上げる。
「マリアーヌのような子供が、増えないことを祈るしかありません」
「帝国ではこんなことはない。今回は特例だろう。皆、血族に迎えてから子供をもうけるのがヴァンパイアのしきたりだ。それをしなかったあの子の両親は、マリアーヌをうむべきじゃなかった」

ほんの僅かの間だった。マリアーヌとの触れ合い。自分がヴァンパイアであることもわかっていなかった幼い少女。。
刹那とティエリアがヴァンパイアハンターと分かっていながら、結局は母親のとろこまで案内してくれた。
「ママを助けてあげる」
そんなありもしない甘言を信じて。
どんな結末を迎えるか、マリアーヌには分かっていなかったのだろう。
いや、この結末を望んでいたのだろうか、彼女は。ヴァンパイアが自分であり、自分が百人もの人間を殺した時点で死を望んだマリアーヌ。もう母に人間を殺して欲しくない一心で。

狂ってしまう前に、死ぬことを望む幼い少女。
狂ってしまえば、自分から死ぬこともできないただの化け物になるしかない。

「愛されたかったか・・・・・」
ティエリアが空を見上げる。
ひらひらと、空から羽がふってきた。
「これは?」
「・・・・マリアーヌの魔法だな」
「死んだのに?」
「魔力は残る。残っていれば、魔法は死んでもあとにも施行される」

ひらひらと降る羽の雨は二人を包み込んだ。

「ん?リーブか。どうした?」
召還してもいないのに現れた命の精霊リーブが、ロックオンとティエリアを見て、空中で踊りだした。
空中に光の文字がかかれる。

(マリアーヌは転生がきまった。父と母と一緒に、もう一度この世界で、今度は人間としていきることが)

「はーん・・・・ライフエルの仕業か」
ロックオンはリーブが光の結晶となって消えていくのを見守った。
「ばれたか。流石はネイよの。血の一族の神」
「ライフエル!呼んでないぞ!」
生命の精霊神ライフエル。
美しい貴婦人は、ロックオンの腕の中のティエリアに微笑みかけた。
「どうだ、ティエリエルよ。ネイとうまくいっておるか?」
「あ、はい。うまくいっているでありますです」
ティエリアはかちんかちんに固まっていた。それもそうだろう、相手は神でもあるのだ。

「ふふふ・・・・・ライフエルはいつもそなたらを見守っているよ。我は気まぐれだがのう。そなたらの愛を見守るのは楽しい」
「でばがめの間違いじゃねぇの?」
「ネイよ、いつからおぬしは我に対してそのような口が聞けるようになった?ええ?」
ライフエルはロックオンのほっぺたを抓ると、太陽の一部となって消えていった。

「にゃあああああ」
「フェンリル」
「主、酷いにゃ!炎の中においていくなんて」
「ごめんごめん」
フェンリルはにゃーにゃーと鳴いて、ティエリアの腕の中に飛び込んだ。
ティエリアはロックオンにおろされて、地面にすでに立っている。
「主ーーー!!」
ドカン!
ロックオンと白梟が激突した。
「ブラド、お前なぁ」
「目覚めると主がいなかった。某をおいていくなんてひどい」
「にゃ!ブラドにゃ。ぎにゃあああああああああ」
「おおう、フェンリルよ。あいかわらずおいしそうな子猫ぶり」
二匹は追いかけっこをしだす。それを放置して、ロックオンはナイトメアを呼び出す。

「帰ろうか、ホームに」
「はい」

また、新しい指令がティエリアにも刹那にも届くだろう。ヴァンパイアハンターは忙しい。
ロックオンは、ティエリアのパートナーとして、また一緒に行動するのだ。


                    血と聖水V The End

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なんかありきたりになった。
これでも改稿したんです。
大幅にかきおろした。
こんなものでもミホリ様へ。
ろくなものないな、おい。。