血と聖水W「ライル」







ビームサーベルで化身の心臓を貫く。
化身は蝙蝠となって一度遠のくと、血の刃をいくつも放ってきた。
それをビームサーベルですべて叩き落す。
「殺す!」

「血と聖水の名において、アーメン!」
聖水を取り出し、化身に向かって投げると、それをビームサーベルで切った。
聖水の中身が化身にそのままふりかかり、化身は悲鳴をあげる。
「うっぎゃおおおおお!!」
肉の焦げる匂いがした。
ティエリアは止まらない。フェンリルが氷のブレスを吐き、化身の右手を凍らせた。
その部分を、ビームサーベルで切り落とす。
「血族というわりには・・・・」
右手が灰になっていく。
化身は天井に貼り付いて、そこからティエリアの首を締め上げ、首に牙をたてる。
血を吸われて、ティエリアはにっと笑った。
「ぐがあああああああ」
水銀の血族であるティエリアの血液には水銀が含まれている。
ヴァンパイアに有毒の銀が。

喉を焦がして、化身は走り出す。塔の外に逃げようとしている。
それを、イフリエルが炎の槍で、背後から化身を貫いた。
「血と聖水の名においてアーメン!どうか、汝に安からなる眠りを!」
ティエリアのビームサーベルが、後ろを振り返る化身の心臓をゆっくりと貫き、そのまま縦に裂いた。
フェンリルがそこに氷のブレスを吐く。
水銀が血液にまわって化身は動きが鈍くなっていた。
全身が凍りついたその瞬間を、ティエリアは鋭い蹴りを入れて粉々に砕いた。
フェンリルが、今度は炎のブレスを吐く。
粉々になった肉片が、灰となっていく。
それで終わりかと思われたが、ジルフェルの様子がおかしかった。

「どうした!?」
「が・・・・あああああ」
また、化身がその肉体から生まれたのだ。
「くそ、ヴァンパイアの核は精霊王の中か」
「化身はいくつでも沸いてくるのか?」
「いくつでも、だ。核を壊さない限り」

「だから、ネイを・・・・選んだ」
ビームサーベルの血から元の姿に戻ったネイは、自分の体がまるで操り人形のように動いているのにびっくりした。
「おい、俺を止めてくれ!」
「ロックオン!?」

ロックオンは、イフリエルを吹き飛ばして、伸びた爪でジルフェルの心臓を背中から握り潰した。
「くそ、ジルフェル!お前、自分がライルの血族であるのを利用するなんて卑怯だぞ!!」
ジルフェルは、大量に王の衣装に血を吐いて、倒れこみながら、微笑んだ。
「だから、ネイを選んだといっているだろう。ライルの血族ならば、同じ血を引いているネイなら血を与えることでヴァンパイアから元に戻せると考えていただろう。俺は、そんなことは望まない。ライルの血族のまま死にたい。ライルが、俺を血族にしてくれたから。なぁ、ライル。俺は、お前の友であってよかったよ。愛している。そう、お前にはもう俺は必要ないのであれば、俺はお前の血族のまま死を選ぶ」
「ジルフェル!」
イフリエルがかけつけて抱き起こすが、そのままジルフェルはまた血を吐いた。
完全に心臓が握りつぶされていた。

手を引き抜いたロックオンは、すぐに自分の血をジルフェルに分け与える。
「どうか、効いてくれ!血の解放が、起これ!」
「核は心臓だよ、ネイ」
優しく微笑みながら、ジルフェルは夢を見ている気がした。
だって、ライルが目の前に立っていたから。

「ライル!てめぇ、どこから!」
「兄さん・・・・ジルフェルを渡してくれないか」
「お前なら!血を与えれば助けられるだろう!助けてやってくれ!」
突如現れたライルは、幻でも夢でもなかった。


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