血と聖水X「同時指令」







「ところで、ネイ、茶をいれい」
「茶くらい自分でいれろー!この居候が!」
「僕の分のお茶もお願い〜」
「おー、盟友リジェネよ、帰ってきたか」
リジェネは帰ってくるなり、ロックオンを突き飛ばして、ティエリアを抱きしめた。
「あー疲れた」
どさっとソファに腰掛けて、上着を脱ぐとテーブルの上にあったせんべいを食べだす。
もうここ1ヶ月、この精霊神ライフエルとリジェネはティエリアとロックオンのホームに居候しっぱなしだ。
放り出しても戻ってくるので、ロックオンも好きにさせていた。

ぶつぶついいながら、ロックオンは茶をいれる。
「ほらよ!」
乱暴にテーブルにおかれたお茶をすする二人。

「あー、このせんべいうまいね」
「ほんに。うまいのお」

「ほんと、お前のどこが精霊神なんだか」
「その言葉、そっくり返すぞネイよ。お前のどこが血の神なのかのお。ただのまぬけな雑用係りじゃの」
「そうさせてるのはお前らだろおおお!!」
ロックオンは叫ぶが、二人は無視している。

そのまま、何事もなく日にちは過ぎていく。
やがて、刹那が出迎えにきた。

「刹那がきたみたいだ」
白銀の鷹が、透けて室内に入ってきた。刹那の使役魔。
鷹の異名をもつ刹那は、ティエリアとリジェネと同じイノベイターのヴァンパイアハンターであるが、もともと生粋のヴァンパイアである。
北の帝国を滅ぼした鷹のロードヴァンパイアとしてかつては名を馳せた者のなれのはて。
そう揶揄されることもあるが、刹那はきにしていない。

「刹那!」
荷物をまとめたティエリアとロックオン、それにリジェネが空を旋回する金色の鷹に手を振る。
刹那は、10メートルはあろうか上空から飛び降りる。
ゴン。
いつものように、華麗に着地できず、頭から着地する刹那。
彼は、頭から着地するのに、それでも上空から飛び降りる癖がある。
「痛い」
血をダラダラ流しながら、刹那は起き上がった。
「刹那、ただのバカだろ、お前」
リジェネが手をかしてやる。
「華麗に、決まっただろう」
「ああ、華麗にバカに頭から着地が決まったな」
「完璧だ」
刹那は金の鷹を通常サイズに戻して肩に止まらせた。まだ血はドクドクと流れ出ている。
その傷も、人口ヴァンパイアであるイノベイターであるせいですぐに再生される。

「にゃー。主、このせんべいうまいにゃ」
フェンリルが、ティエリアの腕の中でせんべいをかじっていた。
「リジェネもくるの?」
「ああ、僕にも指令きてるよ」
「三人同時ということは、ただのロードヴァンパイアではないか」
刹那が金色の鷹の頭を撫でる。
ただのロードヴァンパイアであれば、刹那、リジェネ、それにティエリアとロックオン、それぞれ個別に撃破できる。無論共闘の姿勢をとったほうが、確実ではあるし危険性が少ない。敵を逃すこともなく短期間で始末できるので、協会側は共闘の姿勢で三人に同じ敵の指名をすることがある。

リジェネはペガサスを召還し、刹那は金色の鷹で、ティエリアとロックオンは、ロックオンの魔力で巨大化したフェンリルに乗って空を飛ぶ。
目指す場所は南。
 



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