血と聖水X「神の涙」







「ロックオン・・・・ネイ・・・・・」
ティエリアは、ロックオンの腕の中にいた。
「今しばらくの辛抱ぞ、ティエリア。しばし待て」
「はい・・・・」

闇が濃くなっているのに、ティエリアが気づいていた。
このまま、ネイとして覚醒を続ければ、ロックオンはティエリアたちを認識しなくなってしまうかもしれない。
でも、そうすればティエリアは自分の命でロックオンを止めるつもりだった。
三人の中から、クローンの血を抜いたロックオンは、クローンと対峙する。

「ネイは僕だ!!」
「面白いではないか子供よ。どちらが真にネイであるか、決着をつけようぞ」
「望むところだ!!」
クローンは血の刃で剣を作り、ロックオンもまた血の刃で剣をつくり、幾度も切り結ぶ。
「ヘルブレス!!」
「ゴッドブレス!!」
クローンが氷のブレスを吐けば、ロックオンは炎のブレスを吐く。
「ハイサラマンダーの王よ、敵を消滅せよ」
クローンがハイサラマンダーの炎の精霊王を召還する。
「ふむ。ハイサラマンダーの精霊王よ、我がネイだ」
「・・・・・主の気配が二つある。だが、主は一人」
精霊王は二人に向けて炎を放つ。それをロックオンは避けもしない。だが、子供は宙に翼を広げて逃れた。
「愚か者が。契約した精霊王が、主を傷つけるわけがなかろう」
ロックオンの声で、クローンははっとするともう遅い。
「主、無礼を許したまえ。ハイサラマンダーの精霊王、サラマンティエルの名にかけて汝を滅殺せん」
凄まじい炎が世界を、視界を満たしていたいく。
精霊王は、クローンを業火で包み込み、そのまま飲み込んだ。
「ぐぎゃあああああああああああ!!」
絶叫。
飛び出してきたクローンに、ロックオンは血の刃できりかかった。
相手も血の剣で応戦するが、もはやロックオンの敵ではなかった。
圧倒的な力の差。
皇帝なる者、神である血の夜の皇帝と、そのできそこないクローンの違い。
さらに追撃をかける精霊王の前に、ライフエルが両手を広げていく先を阻む。

「ネフィリア!!」
精霊神ライフエルが、地上に落ちていくクローンを抱きとめる。
「・・・・・・神よ、その敵を庇うのか」
「ネフィリア、ネフィリア!!」
「私には神を攻撃することはできぬ。主よ許されよ」
「ライフエル!!」
ロックオンが、ライフエルを糾弾する。
「ライフエル、我が契約者であることを忘れたか!何ゆえそやつを庇うか!?」
「ネフィリアは・・・・・ネフィリアは・・・・・・・・」
美しい貴婦人は、ボロボロになったクローンのネフィリアを抱きしめながら、ロックオンに頭を垂れた。
「許されよ、ネイ。ネフィリアは・・・・私の子なのだ」
「そのような戯れがあるものか、ライフエル!!」
「ネイ?」
ロックオンは、ライフエルの体ごと、ネフィリアを爪で引き裂いた。
「ああ・・・・ネイ。我は・・・・・我は・・・・・ネイ、そなたは、我の子でも殺すのだな」
「ライフエル。それは我の・・・・俺のできそこないだ。お前の子ではない」
「だが、ネイ!!」

闇を飲み込んだロックオン。
エメラルドの瞳で、ライフエルの傍に膝をつく。
ボロボロになって、もう呼吸も鼓動もとめてしまったネフィリアに、ライフエルは涙をこぼした。
「ネフィリア。母を許したもれ。我は、精霊神でありながら人間の子を宿し産んだ。そしてその子はネイのクローンの元にされた。ああ、ネフィリア・・・・我にはどうすることもできなかった。そなたを救うことも」
「人間の子を産んだのか、ライフエル」
「そうじゃ。その子は人間として生きていた。この世界で。しかし、イブリヒムがその魂に目をつけ、ネイのクローンの元にしたのじゃ。我はネフィリアとかかわりをもつことを他の神々によって禁じられていた。そして、ネイのクローンとなったネフィリアはイブリヒムを殺して自ら皇帝となり・・・・我は、ただ傍で見守っているしか。ネイ、何をするのじゃ!?」
ロックオンは、自分の心臓に、伸びた爪を立てた。
そのまま、流れ落ちる血をネフィリアの痛いにかける。

「忘れるな。俺はネイ。血の一族の神。俺も神様のはしくれだってこと。一度はお前に転生のためにその力を捧げて全て失ったが」




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