聖棺の中で眠れ「嗚呼、無垢なる魂よ」







ティエリアを診てくれた医者は、ドクター・モレノという名前で常識人だった。
これまでティエリアを囲んでいた環境を一掃した。
ティエリアを虐待していた科学者は左遷されるか逮捕された。

肩に包帯を巻かれ、自分のベッドですやすやと眠るティエリアを、ロックオンは同じベッドで抱きしめて眠る。
ティエリアは、何も言わなかったとても傷ついていた。
暴行されかけたことも何度もあるようで、虐待の傷にはロックオンも言葉を失った。
背中には鞭打たれた傷、胸には煙草を押し付けた痕。全て皮膚の再生治療であとかたもなく綺麗になくなったが、心の傷まで綺麗に治るわけがない。
ロックオンはまた相部屋でティエリアと生活しだすようになった。
ティエリアが一人で行動することをできるだけ避ける。まるでナイトのように。
新しくやってきたマイスター候補は、ティエリアの美貌に驚き、そしてセクサロイドとしての機能を持っていることを知って複数で暴行しようとする。
ロックオンはその相手を実力でねじ伏せて、言葉の通りティエリアを守った。
「ごめんなさい。僕のせいで。僕が、セクサロイドの機能があるから・・・・」
「お前のせいじゃねぇって」
ティエリアは大切なヴェーダとのアクセス機関。ヴェーダとアクセスするには、ティエリアとシンクロするのが一番手っ取り早い方法だった。
研究員のいうとおり、ティエリアと名づけられたバイオノイドは複数いて、何かあれば今のティエリアは処分されることは確定済みだった。
だから、ロックオンはティエリアにマイスター候補になることを進めた。
マイスター候補と認められれば、処分なんてできないはずだ。
ティエリアはヴェーダの推薦もあり、ロックオンと同じガンダムマイスター候補になった。
もともと、欠員が出たときのために訓練を受けていたので、その潜在能力の高さは凄まじいものだった。

そして、ティエリアはガンダムヴァーチェのパイロットになることが決まった。
ロックオンはガンダムデュナメスのパイロットになることが決まった。
まだ、ガンダムエクシアとガンダムキュリオスのパイロットは決まっていなかった。

ティエリアとロックオンが出会って、もう何年になるだろうか。
5年は経過していた。
ロックオンの中で、中性の少年への想いは大きくかわり、それはいつしか恋愛感情に変わっていた。

「俺な。お前さんのこと好きだ」
「・・・・・・・セクサロイドだから?」
「違う。一人の人間として、ティエリア・アーデっていう人間が好きなんだ」
「僕は人間じゃない・・・・・バイオノイドでセクサロイドで・・・そして、ヴェーダとのアクセス機関」
「違う。お前は人間だ」
「フィフスの僕が人間なら、他のナンバーズも人間?」
「ああ、そうだ。みんな人間だ」
「ロックオン・・・・・・・・」
ティエリアは涙をこぼしてロックオンに抱きついた。
「この感情が、愛というものなのか」
「多分、そうだ」

「ティエリア、肩の包帯取り替えるぞ」
「はい」
ティエリアは衣服を脱ぐ。
白すぎる肌はとても滑らかだった。
包帯を巻く前に、塞がりかけた傷口にキスをすると、ピクンとティエリアが動いた。
「痛い?」
「違う・・・熱い」
「もうちょっと、触ってもいい?」
ティエリアはこくりと頷いた。

肩に包帯を巻きながら、髪を後ろに流し、うなじに現れたNO5という紋章にキスをする。

そのままパジャマを着させると、ベッドに横たえた。
暗闇の中で、金色の瞳が光る。
「夜行性なの、お前?」
「さぁ?」
「目が金色に光ってる」
「これは、僕の特徴」
「そっか。綺麗だな」
「綺麗?」
「うん、綺麗」
「みんな怖がるのに」
二人は顔をあわせて、クスリと小さく笑った。

「なぁ、キスしていい?」
「・・・・・・いいよ」
触れるだけのキスを唇に落とす。
そのまま、二人は同じベッドで眠りについた。
 



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